4、涙
.....。
陸上部の事は正直システムがよく分からない。
運動部がそもそも苦手なので体育とかよく分からない。
その中で今言える事は俺は、兎を応援したい、という気持ちだ。
俺は考えながら掃除機をかけ終えて額を拭う兎を見る。
「窓開けて埃出したらご飯食べようか」
「.....そうだな。確かに」
「.....?.....どうしたの?何か私に聞きたそうな顔をしているけど」
「そうだな.....なあ。兎」
「?.....何?」
「お前って陸上好きなんだよな?.....何で陸上部に決めたんだ?」
正式に決めたの.....。
え?それって前も話したけど.....、と言いながらも。
言い淀む兎。
それから俺をチラッと見て来て赤面する。
俺はその姿に、?、を浮かべる。
「私が陸上したいのはある人を応援する為。その為にやっている。元気溌剌な姿を見て.....もう一度って思う」
「.....ある人?たったそれだけで今年、陸上に入ったのか?」
「そう。大会のスコアが優秀とか言うけど。.....私にとってはどうでも良いって思える。今の私は.....その人を励ましたいから」
「そうなんだな。そいつは幸せ者だな」
「うん。多分幸せに思ってくれていると思う」
そんな会話をしながら掃除機を元の位置に直した兎。
それから俺をニコッとして見てくる。
まあそんな事はどうでも良いから。ささ。ご飯食べよ、と言ってくる兎。
俺はその姿に、.....ああ、と返事をする。
そうだったんだな、と思いながら。
「.....正直お前がそんな事で陸上をやっているなんてな。幸せ者だなソイツは」
「私は脳内が脳筋だから.....こうでしかアピール出来ないから」
「.....そうか」
「.....でも陸上も手を抜いている訳じゃ無いよ?いつか大きな大会に出て.....日本一になりたいなって」
「おう。応援してるぞ」
「.....でもその前に倒さないといけない相手が居るけどね」
真剣な顔をする兎。
確かにな.....。
それは思うわ、と考えながら俺はそのままランチョンマットを広げる。
それから兎が用意した弁当を広げる。
そして目を丸くする。
飾り付けが凄いお弁当がそこにあった。
「.....盛り付けとか上手になったな」
「えへへ。そうかな。.....美味しかったら良いけど。盛り付けとか不安だしね」
「.....そうか」
そして俺達は手を合わせてお弁当を食べ始める。
すると一口二口を食った途端に。
涙が止まらなくなった。
家庭的な味だ。
一般的な家庭の味。
「ど、どうしたの.....?!」
「.....平凡な味だな。.....すまん。それしか表現が言えない」
「それだけでも十分だよ。泣くなんて思わなかったよ.....」
「.....ゴメンな。俺は.....情けないよな」
「情けないって言ってないよ!!!!!.....私は.....俊樹が心配」
そう絶叫しながら俺の元に慌てて回って来た。
それから俺を抱きしめてくる。
ああそうか、俺は疲れていたんだな、と思う様な感じだった。
そう考えながら俺はずっと泣いている涙を拭ってみる。
桃に裏切られたのも悲しかったんだな、と。
「.....私.....俊樹の心が心配.....で」
「何でお前まで泣いているんだ。.....良く無いだろ」
「ずっとこんな悲惨な目に遭っている俊樹の事.....想ったら泣かずにいられない」
「.....お前は優しいな。本当に」
「私は優しいんじゃないよ。.....君が心配で心配で心配で仕方がないだけ」
だから、ねえ、と言ってくる兎。
それから俺を見てくる。
ねえ。一緒に住もうよ、とも言う。
コイツは何を言っている。
「そんな馬鹿な事が出来る訳無いだろ。親御さんにも迷惑が掛かるって言っているだろ。毎回言っているけど」
「でももう見てられないよ。.....桃にも裏切られて.....もう何をどう信じたら.....」
「確かにな」
「だから今は一緒に住みたい。私は女の子だからこの場で一緒に住むのは問題だけど.....君が来て一緒に住むのは問題じゃないと思う」
「.....そうだな。.....確かにそうだな」
俺は兎を離しながら兎を見る。
兎は涙を流しながら泣きじゃくっていた。
いやいや俺より泣いてどうする。
思いながらもティッシュで目元を拭ってやった。
それから俺はそのティッシュを置きながら返答をする。
「考えておくよ。.....今の状況が状況だしな」
「うん。お願い。考えてほしい。絶対に」
「ああ。.....良い答えが出るのを期待してくれ」
兎はまた泣く。
そう言われたのは嬉しかった。
正直.....どうなるかは全く定かではないが。
思いながら俺は眉を顰めながら.....兎を優しく抱きしめた。
もしかしたらだけど。
俺が絵を描けなくなった原因は.....こういうのだったのかもな。
実感は湧かないが。
.....。




