機械仕掛けの竜の名は
「この場所に入ってくるか。
となれば貴様、アキトと同郷か。
異世界からやって来た人間だな?」
何処からともなく、ではなかった。
声は確かにアルマの目の前に佇む紅黒い機械仕掛けの竜から響いていた。
男の様な女の様な、子供のような老人のような、それら全てが入り混じったような声が紅黒い機械仕掛けの竜から聞こえてきたのだ。
「俺が異世界の人間だと思い出したのは、さっき死にかけた時だけど。
確かにアキトってのがアンタを造った奴なら、俺はソイツと同郷になるな」
「ふむ、一つ訂正しておこう。
私の名はドラグニルだ、アキトは長ったらしいナンバーを付けていたが、ドラグニルと呼んでくれ」
「あ、ああ分かった。
それにしてもアンタ、ドラグニルはなんでそんな声なんだ? 聞き取り辛いんだけど」
「ああ、すまない。声を出すのは千年ぶりなんだ、少し待て、調整する。
時に少年、私の声は男が良いか? 女が良いか?」
「女!」
「即答か。まったく……アキトと言い貴様と言い、異世界の人間は皆そうなのか?」
言いながら次第に機械仕掛けの紅黒い竜、ドラグニルは声質を調整したのか、次第に自分の声を二十代半ばくらいの落ち着いた女性の声へと変化させていった。
「さて、初めての客人。
貴様、怪我をしているのか?
どれ、少しこちらに寄れ」
「お? 治療出来るアテがあるのか? ありがたい」
言われて近付くアルマに、ドラグニルはその長い尻尾を近付けていく。
そして、尻尾の先端が開いたかと思うと、そこから何やら注射針のような物が出ているのが見えた。
「注射は大丈夫か?」
「ああ、まあ大丈夫。
え?注射で治る傷じゃないぞ?」
「ぬかせ、私のナノマシンに不可能等あるか」
「ええ、怖い」
「問答無用、アキトから同郷の人間の助けになれと最後に言われているのだ。
大人しく助けられていろ!」
後ずさり、逃げようとしたアルマにお構いなく尻尾の針を突き刺すドラグニル。
するとどうだろうか、アルマの折れていた腕は治癒されていった。
変な動きをしながら。
「怖い! 怖い! 怖い! 何これ大丈夫? ビクビク動いて違う生き物みたいなんだけど!?」
「問題は無い、痛くないだろう?
骨だけじゃなく血管や神経も修復したからな、その影響だ」
「あ、確かにもう痛くない。
高級ポーション並、いやそれ以上の治癒力だ。
ありがとう、ドラグニル、さん。
おかげで助かったよ」
「私に敬称は不要だ、転生者の少年。
名はなんと言うのかな?」
「アルマ。アルマ・アルフィオ。こっちの世界での名前だ」
言いながらアルマは地球での姓、有馬とこっちでの名前アルマが似てるなと思って可笑しくなり自嘲するように笑った。
「アルマ・アルフィオ。
ふむふむ、冒険者ランクF。
スキル無し、魔法の才能無し、剣技普通か。
良く生きてるな。
まあこれならFランクが妥当か。
死にたくなければさっさと冒険者なんか辞めて静かに暮らしていろ」
「俺泣いて良い? ボロクソ言い過ぎじゃないか?」
「気を遣って煽てれば、豚も木に登るというが。
そんなだと直ぐに死ぬぞ?」
「実際死にかけたから何も言えん」




