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少年探偵とサイボーグ少女の血みどろ探偵日記  作者: 小夏雅彦
第四章:追放者の果実
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12-Sideトラ:戦艦突破

 御桜さんが調べ上げた場所にあったもの、それは巨大な船だった。荒野で見たものなど比較にならない。長さだけで400mくらいあり、100m程度の高さもある。ブリッジなどは見当たらないが、すべてが内側に入っているのだろう。シティにだってフルスモークでディスプレイ操縦を行うタイプの自動車は存在するのだから。


 あれから更に1日をかけて、僕はここまで来た。住民からは、ここは『死出の谷』と呼ばれているらしい。それを物語るようにして、いくつもの人型が地面に埋まっている。無論、人間のものではない。あの時見た、人型巨大兵器の残骸だ。


「さてと、どうしたものか。これ以上近付くには……」


 僕は双眼鏡を取り出し、辺りを見た。船の後方には薄汚れた湖が見え、一帯は背の高い岩山に囲まれている。十分な火力があれば包囲し、砲撃を仕掛けることで殲滅できそうだが、生憎僕は一人だ。しかも相手の反撃の方があからさまに強そうだし。


 空中を何台もの武装ドローンが飛び回り、地上では軽タンク軍団が威圧的に旋回する。更に船からは何本もの砲塔が飛び出してきており、近付く者をすべて押し潰さんとしていた。事実、周囲を通りかかった不幸なモヒカンたちが砲撃を受けて消滅した。


「さてと、どうやって中に入ったものか。

 外からじゃとてもじゃないけど……」

(虎之助くん、見るんだ。あそこから誰かが出入りしているぞ)


 モニターに小さな反応。見ると船の上部で大きな黒い翼をはためかせていた。それは小さな何かを抱え、船内に入っていった。そこにいるのは……アリーシャだ!


「あいつがオーバーシアのクロウか……!

 こうしちゃいられない、行こう!」

(待つんだ、虎之助くん!

 何か様子がおかしい、砲塔が……湖の方を向いている!)


 僕はそれを聞き、双眼鏡を構えた。なるほど、確かにそうだ。ドローンもそちら側に向かっている。僕は湖の方に視線を移した。市長軍のロゴを着けた鋼鉄船がいくつも接岸していた。彼らはジープを下ろし、砂ぼこりを巻き上げながら船へと進んで行く!


「あれはエリヤさんたちか?

 来てくれたんなら好都合……二正面作戦だ」


 僕は携帯端末を操作し、エリヤさんに連絡を取ろうとした。


「エリヤさん! こちらに来ていたんですね?

 気を付けてください、敵がいます!」

『一応見えちゃいるが……なんだい、あれは。

 バカバカしいくらいデカいぞ』

「それ以外にもドローンや戦車がそちらに向かっています。

 フラッグが立っていますから、それを狙ってください!

 フラッグを壊せばそいつらも動きを止める……」


 最後まで言い切ることが出来なかった。船の火砲、そしてタンクの砲が一斉に放たれた。市長軍は砲撃を散開してかわそうとするが、避け切れないものはいくらか出て来た。真っ黒なジープから飛び出す影がいくつか見える、エリヤさんとクーデリアか。


(迷っている暇はないぞ、虎之助くん。いまが最大の好機だ!)

「分かっている、朝凪さん! 行きましょう……変身!」


 僕はキースフィアをバックルに挿入、エイジアへと変わった。スレイプニルに跨り、スロットルを全開にする。嘶きを上げながら、スレイプニルは岩肌を駆け降りて行く!


 僕の接近を感知し、砲塔のいくつかがこちらを向いた。

 だが少ない。


(スレイプニルがあるのか!

 それならば話は早い、武器が使えるぞ!)


 スレイプニルの後部ハッチが開き、そこから黒光りする鉄塊が現れた。それは電子状に分解され、エイジアの装甲と一体化する。若干の重量増加、ルナメタルなのか?


(追加装甲……というより武装形成用の追加素材だ!

 いくつかの新装備構成プログラムもインストールしてある。

 使い方はHMDに表示されるはずだ!)


 スラローム走行で銃砲をかわしながら、僕は手甲を変形させた。いくつもの排熱口を備えた銃身が出現する。ベルト給弾機構に当たる場所から大気中の重金属汚染物質が吸収され、弾丸が形成される。弾丸は電磁的な反発によって音速を越えて撃ち出され、空中に青白い火花を描きながら飛んだ。コイルガンと呼ばれる物だそうだ。


 超音速の弾丸は容易くフラッグを打ち壊した。これはいい、エイジアには遠距離戦闘能力が足りていなかった。炎熱砲は威力こそあるがエネルギー効率が悪すぎた。だがこれならエイジアのエネルギー容量を圧迫せず攻撃を行うことが出来るだろう。


「不信心者め! 聖地には決して近付けんぞォーッ!」


 怒号が戦場に響いた。見ると、なだらかな船の壁を駆け降りて来るものがあった。四本足の巨獣、キャメルロスペイル。こちらの銃撃を巧みに避け、飛翔した。


「イヤーッ!」「イヤーッ!」


 車体を寝かせ急停車し、上空から繰り出された危険なキャメルストンピングを回避。彼はその反動を使って後方に回転跳躍、距離を取り構えを取った。


「ここで会ったが百年目だ、エイジア!

 今度こそ貴様を殺してくれる!」

「悪いがこんなところで足止めを喰らっているわけにはいかない。

 押し通る!」


 車輪が砂を巻き上げながら回転、キャメルの長い腕が僕を捉える寸前でスレイプニルは発進した。走り彼はそれを追い掛けようとするが、その眼前に巨大な樹木が現れた。


「なっ……! これは、報告にあった生命の樹とやらか!?」

「ユキ……!? ここに来ているのか!」


 崖の上からクルクルと回転しながら何かが飛び出して来た。腕から生えたブレードに位置エネルギーと回転のエネルギーを込めキャメルに振り下ろす。キャメルは上体を大きく逸らし斬撃を避け、地面に手を突いた。そこを支点にしてブレイクダンスめいて足を振り回す! 襲撃者は素早い前転で蹴りをかわし、僕とキャメルの間に立った。


「兄さん、ここは任せて。アリーシャを助けてあげて欲しいんだ」

「……分かった! ここは任せる、戦車に注意するんだ!

 フラッグを壊せばいい!」

「貴様ら、勝手盛り上がりおって! 行かせるとでも思っているのか!」


 キャメルが追い、ユキが止める。

 僕は船体に向けてアクセルを吹かした。


(行き方は分かっているだろうな、虎之助くん?)

「重々承知の上だ……!

 出来るかどうかは分からないけど、これしか方法はない!」


 僕はシートの上に立ち、そこを蹴って跳躍。船の外壁に取り付いた。そして一歩、足を踏み出す。重力を操作し足を船体に張り付け、そのまま駆けあがって行く! 如何なる戦艦と言えど、船体を走り昇って来るような相手は想定していないだろう。迎撃用の銃砲は射角の関係で発砲出来ず、タンクの砲は威力が高すぎるため使えない。


 100mを一瞬にして駆け抜け、恐らく甲板だった場所に。クロウが入り込んで行った入り口をすぐさま探し出し、力づくでこじ開け戦艦内部に侵入した。


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