第69話 6日間の仕事
次の町へ出発するまで、あと7日。
僕達は話し合った通り、最終日を旅の準備に使うため、それまでの6日間は出来る限り働く事にした。
とはいえ、7人全員が毎日同じ仕事をするわけではない。
その日に募集されている仕事を見て、それぞれ自分に合いそうな物を選ぶ。
初日。
僕とザン君は商店へ届いた荷物の運搬。
ミュラとマシューは食堂の手伝い。
リオさんは宿屋の清掃。
ラウちゃんは露店の商品整理。
そしてフィオちゃんは――。
「あたし、広場で演奏してくる!」
「それ、バイトなの?」
「ちゃんとお店の宣伝も頼まれてるから仕事だよ!」
楽器を抱え、楽しそうに広場へ向かっていった。
その日の夕方。
皆で宿へ戻り、それぞれの報酬を出してみる。
「僕は1万2000ロド。」
「私は1万1000ロドでした。」
「ボク、1万3000ロド!」
「私は1万ロドです。」
日によって多少の差はあるが、大体1万から1万2000ロド前後。
仕事内容によっては、それより少し多い日もあった。
2日目は僕とリオさんが料理屋。
ミュラとザン君が倉庫。
マシューは裁縫屋の細かい作業を手伝い、ラウちゃんは配達。
フィオちゃんは子供達が集まる店で芸を披露していた。
「フィオちゃん、また旅芸人の仕事?」
「だって得意なんだもん!」
その日は客足がかなり増えたらしく、フィオちゃんは1万5000ロドを貰って帰って来た。
「凄いね。」
「でしょ!」
嬉しそうに胸を張っている。
3日目。
僕は鍛冶屋の補助。
ミュラは薬屋。
リオさんは商店。
マシューは道具屋。
ラウちゃんは馬車を使った荷物運び。
ザン君は木材運搬。
フィオちゃんは食堂。
毎日違う仕事をしていると、自然と町の色々な人と話す機会も増えた。
「あ、ベルさん! 昨日は助かったよ!」
道を歩いているだけで声を掛けられる事もある。
「ベル様、知り合い増えたねぇ。」
「ラウちゃんもでしょ。」
「ボクは元々こういうの得意だから!」
確かに。
ラウちゃんは知らない人ともすぐ仲良くなっている。
一方でザン君は、どんな仕事を任されても非常に真面目だった。
「ザン君、もう休憩していいよ?」
「いえ。こちらを運び終えてからにします。」
結果――。
「働き過ぎだよ、カリ。」
宿へ戻ってからミュラに注意されていた。
「ですがミュラ殿、途中で残すのも……。」
「真面目なのは良いけど、倒れたら意味無いから。」
「……承知しました。」
4日目、5日目と仕事は続く。
店番。
料理。
清掃。
荷物運び。
薬草の仕分け。
書類整理。
馬の世話。
市場での販売補助。
僕達は冒険者として戦うより、むしろ普通に町で働いている時間の方が長かった。
そして6日目。
最後の仕事を終え、全員で宿へ戻った。
「つっかれたぁ~!」
ラウちゃんが机へ突っ伏す。
「ラウっち、今日ずっと走り回ってたもんね。」
「配達18件だよぉ……。」
「あたしは楽器弾いてただけだから元気!」
「フィオちゃん、それ3時間くらいやってたじゃん。」
「楽しいから疲れない!」
……凄いな。
僕は全員から今日の報酬を集め、これまでの記録と照らし合わせる。
「じゃあ、6日間の結果を出すよ。」
皆が机の周りへ集まった。
1日目。
8万4000ロド。
2日目。
8万1000ロド。
3日目。
8万8000ロド。
4日目。
8万3000ロド。
5日目。
8万6000ロド。
そして今日が――。
「9万3000ロド。」
「おお!」
フィオちゃんが身を乗り出す。
「という事は全部で?」
マシューが尋ねる。
僕はもう一度計算した。
「51万5000ロド。」
「結構稼いだね!」
ラウちゃんの疲れが一瞬で飛んだようだ。
7人いるというのは、こういう時にも大きい。
1人当たりなら、それほど高額ではない。
でも全員分を合わせれば、それなりの金額になる。
「ただし、全部そのまま増えたわけじゃないよ。」
ミュラが言う。
「宿代も食費も掛かってるからな。」
「そう。」
僕は別の紙を見る。
この町に滞在している間に使った宿代。
毎日の食事。
細かい日用品。
バラッドの飼料。
その他の雑費。
全部合わせると――。
「18万7400ロドくらい使ってる。」
「やっぱり7人いると生活費も増えますね。」
リオさんが苦笑する。
「でも、それは必要なお金ですから。」
「うん。」
滞在前に残っていた共有資金は301万5102ロド。
そこへ今回稼いだ51万5000ロドを加え、生活費などを引く。
「今残ってるのは――334万2702ロド。」
「おお~……。」
フィオちゃんが数字を見ながら感心する。
「働く前よりちゃんと増えてる!」
「32万7600ロド増えた計算ですね。」
マシューがすぐに答えた。
十分だ。
最初に考えていたより少し生活費は掛かったが、それでも300万ロド以上残っている。
「さて。」
僕は帳簿を閉じた。
「仕事は今日で終わり。」
「って事は!」
ラウちゃんが顔を上げる。
「明日は買い出し?」
「そう。」
食材。
保存食。
薬。
バラッドの飼料。
馬車の点検。
次の町へ向かうために必要な物を、明日1日で全部揃える。
「買い忘れが無いようにしよう。」
「はーい!」
ラウちゃんとフィオちゃんが同時に返事をする。
長かったマーラ・ドシタルでの滞在も――。
いよいよ終わりが近付いていた。




