第68話 次の町へ向けて
ミュラの妹、チェラシーちゃんの写真の話で盛り上がった後。
僕達はそのまま宿の部屋で寛いでいた。
ここ最近は色々あり過ぎた。
グランさん達の捜索から始まり、フィオちゃんとの出会い。
さらに、存在しないクエストとガラバルのレイグ・アルドナ。
一応、今出来る事は終わった。
となれば、そろそろ本来の旅に戻る頃だろう。
「皆、ちょっと良い?」
「ん?」
ミュラ達が僕を見る。
「そろそろ、この町にあと何日滞在するか決めたいんだけど。」
「おっ、次の町?」
ラウちゃんがすぐに反応した。
「うん。」
僕は皆を見渡す。
「僕としては、あと1週間くらいでマーラ・ドシタルを出ようと思ってる。」
「1週間ですか。」
リオさんが頷く。
「私も良いと思います。ここで行うべき事も、ある程度終わりましたから。」
「ボクも賛成!」
「あたしも!」
ラウちゃんに続いてフィオちゃんも手を挙げる。
「七人になってから初めての本格的な旅だもんね!」
そうか。
フィオちゃんにとっては、僕達と一緒に次の町へ向かうのも初めてになる。
「なら、残り1週間の予定を決めよう。」
僕は財布と資金を書き記している紙を取り出した。
「まず、今残ってるセイラスの資金だけど――」
紙に書かれている数字を確認する。
「301万5102ロド。」
「おお~!」
フィオちゃんが思わず声を上げる。
「結構持ってるんだね!」
「まあ、今まで皆で働いたり、必要以上に使わないようにしてきたからね。」
以前は30万ロドを貯めるだけでも結構大変だった。
それを考えれば、随分余裕が出来たと思う。
「でも。」
ミュラが僕の考えている事を察したように口を開く。
「301万あるからって、全部使って良い訳じゃないんだろ?」
「流石ミュラ。」
「ベルの考えそうな事くらい分かるよ。」
僕は紙の上に線を引く。
「まず200万ロドは、よほどの事が無い限り手を付けない事にしたい。」
「予備資金ですね。」
ザン君が言った。
「そう。」
怪我。
馬車の故障。
予想以上に次の町が遠い。
何が起きるか分からない。
「そうなると、自由に動かせるのは101万5102ロドですね。」
マシューがすぐに計算する。
「うん。でも残り1週間は働くから、もう少し増えると思う。」
「最終日も?」
フィオちゃんが聞く。
「いや。」
僕は首を横に振った。
「働くのは6日間。」
「じゃあ残り1日は?」
「旅の準備。」
僕は紙に予定を書き込んでいく。
「6日間バイトして、7日目は食料とか薬とか、必要な物を全部買う。その翌日に町を出る。」
「良いと思う。」
ミュラが頷いた。
「最終日に余裕を持たせれば、買い忘れがあってもその日の内に何とか出来るし。」
「バラッドの確認もしておきたいですね。」
ザン君が付け加える。
「蹄や馬車の車輪も見ておきます。」
「お願い。」
ここでラウちゃんが首を傾げた。
「6日働くと、どのくらい増えるの?」
「仕事次第だけど……。」
以前、僕とミュラが働いていた頃の日給は1人8000ロド程度だった。
勿論、ポーション作りみたいに出来次第で何万ロドも貰える仕事もある。
「かなり低めに考えて、1人1日8000ロドとして計算しよう。」
7人で1日5万6000ロド。
それを6日。
「33万6000ロドですね。」
リオさんが答える。
「そう。だから最低でも30万ロドくらい増やすのを目標にしたい。」
「よーし! 稼ぐぞぉ!」
ラウちゃんが拳を上げる。
「ラウっち、気合い入ってるねぇ!」
「フィオちゃんも働くんだよ?」
「もちろん!」
二人とも元気だな。
「で、問題は最終日の買い物。」
僕は新しく項目を書く。
「7人分だから、食料は今までより多めに用意する。」
「どれくらい?」
「最低2週間分。」
前にもそのくらい買い込んだ事がある。
次の町までの正確な距離が分からない以上、余裕は必要だ。
「食材と保存食で18万ロド。」
「18万……。」
フィオちゃんが数字を見つめる。
「七人分って考えると凄いね。」
「でも食事は絶対必要だからね。」
肉や野菜だけではなく、乾燥食品、調味料、保存の利く物も含める。
「それと薬や薬草、包帯なんかで6万ロド。」
「回復関係はあたしもいるけど?」
「それでも買うよ。」
僕は即答した。
「魔力が無くなる可能性もあるし、フィオちゃんが怪我する可能性だってある。」
「あー……確かに。」
「後はバラッドの飼料で3万ロド。」
「消耗品と馬車の整備用品に3万程度でしょうか。」
ザン君の提案に僕は頷く。
「じゃあ、それで。」
食料18万。
薬などに6万。
バラッド関係3万。
その他の消耗品や整備用品3万。
「合計30万ロドですね。」
マシューがまとめる。
「うん。最終日の予算は30万。」
ミュラが少し考える。
「残り1週間の宿代や食事代は?」
「そこは10万ロド以内。」
「となると……。」
現在301万5102ロド。
今後の生活費と買い出しで最大40万ロド。
もし一切働かなかったとしても――。
「261万5102ロド残りますね。」
リオさんが答えた。
「さらに6日間で最低目標の33万6000ロド稼げたら……。」
マシューが指を折りながら計算する。
「295万1102ロドです!」
「ほぼ300万残せるね。」
僕としては十分だ。
それだけ残っていれば、次の町で仕事がすぐ見つからなくても慌てなくて済む。
「よし。」
僕は予定を書いた紙を皆に見せる。
「残り6日は仕事。」
「7日目に旅の買い出しと馬車の確認。」
「そして翌朝、次の町へ出発。」
「異議ある人?」
誰も手を挙げない。
その代わり――。
「楽しみだねぇ、ベル様!」
「あたしも! 七人で旅するの初めてだし!」
ラウちゃんとフィオちゃんが楽しそうに笑った。
リオさんもマシューも、どこか嬉しそうだ。
ミュラはいつものように小さく笑い、ザン君も静かに頷いている。
「じゃあ決まり。」
あと1週間。
このマーラ・ドシタルで出来るだけ資金を増やし、万全の状態で次の町へ向かう。
僕達七人になったセイラスの旅は――。
ようやく、ここから本格的に始まるのかもしれない。




