26話 妖怪の正体
まだまだ暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 高錫裕貴です。
今回新たな仲間が登場します! やはりケモナーとしては獣耳は欠かせませんよね。
「シグル! ねえシグルってば!」
「う、うーん・・・?」
目を覚ますとそこはシェーラの膝の上だった。いわゆる膝枕と言うやつである。
その感触は思ったよりも柔らかく、しかし適度な筋肉のしなやかさも感じられる。控えめに言って極楽だった。
「はぁ、やっと起きた。もう、いきなり叫び声をあげて倒れちゃうんだもの。びっくりしたわ」
「んぅ・・・もう少しこの感触を楽しんでいたい・・・」
「なっ、バカなこと言ってないでさっさと起きなさい!」
バチーーン!
案の定叩かれた。仕方がないのでゆっくりと起き上がる。
「俺はどれくらい寝てたんだ?」
「ほんの2、3分くらいよ」
「そうか・・・」
恐ろしいものを見た。心霊系ホラーなんて創作でも夜寝られなくなるくらいなのに、生で見た日にはトラウマものだぞ・・・一体何だったんだ今のは?
「あれも妖怪のせいだったとしたら、絶っっっ対に捕まえてから徹底的に締め上げてやる・・・!」
「少し落ち着きなさいシグル。目に狂気が混じってるわよ」
あんなに怖い思いをさせられたのだ。完全に正気を保ってる方がおかしい。むしろ俺はまだ理性的な方だ。
とにかく、俺の意地とプライドにかけて何がなんでも成果を挙げる。行動開始だ。
まずは周囲の状況を確認。周りは依然暗いままで、うっそうと生い茂った木々がどこまでも続いている。
魔術による探知も使ってみるが、特にそれらしき反応も見つからなかった。
「う~ん。行動開始だと意気込んではみたものの、手掛かりがないとさすがにどうしようもないな」
「ちょっと待ってて。どうにかなるかもしれないわ」
「本当か?」
「ええ。“周りを探って”」
「精霊魔法の探知か? 風属性の探知なら既にやったぞ?」
「精霊の探知はそんな生半可なものじゃないわ。魔術よりも『深く』探すことができるのよ」
「『深く』?」
「見てればわかるわ」
シェーラはそう言うと、目を閉じて集中し始めた。すると淡い緑色の光が彼女を中心に広がっていく。
神秘的な光に包まれている美少女というのは暗い森のなかでよく映える。眼福過ぎて、神々しくすらあった。
「・・・いた!」
しばらくして何かを見つけたシェーラは数メートル離れた木の上に向かって素早く矢を放つ。
『おっと!』
矢は避けられたようだが、確かに何かが動く気配がした!
『やれやれ、近づき過ぎたか。少しエルフの能力を甘く見とったのう。よくぞ妾を見つけ、』
「フ、フフフ。クックックッ・・・そうかそうかぁ・・・そこにいたんだなぁ? こんのド畜生がぁ・・・!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!
遂に怨敵を見つけた俺は狂喜に打ち震え、地揺れするほどに魔力を高めていく。
『お、おい、小僧? なんじゃその魔力は? この森一帯をまるごと吹き飛ばす気か?』
「フフ、フフフ。フハハハハハッ・・・・・!」
『ちょ、ちょっと待て! 悪かった! 妾が悪かった! 少しおふざけが過ぎたのじゃ! じゃから森を吹き飛ばすのは許してたもれ~っ!』
「・・・なら、まずは姿を見せろ」
『わ、わかったのじゃ』
おそらく住みかを荒らされるのが嫌だったのか、“それ”は素直に従った。
そして現れたのは一匹の大きな狐。その毛並みは美しい黄金色に輝き、さらにその身に纏う金色のオーラと合わさって幻想的な魅力があり、不覚にも一瞬見とれてしまった。
「・・・九尾、か?」
何より目を引くのは、扇のように広げられた九本の尻尾。その姿はあの有名な妖怪、九尾の狐だった。
『さて、改めてすまんかったのう。まさかそこまで怒るとは思わなかったのじゃ』
「弁解はいい。とりあえずこっちの質問に答えてもらおうか。まず、お前は何者だ?」
『さてのう。なんじゃったかな?』
「・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・!
『わーっ! 待て待て! 誤魔化してるわけではないのじゃ! だから無言で魔力を高めるのはやめておくれ!』
「じゃあどういう意味だよ」
『妾は人間と交流しているわけではないので、人間の間で妾が何と呼ばれておるのか知らんのじゃ。まあ説明できるとすれば、神獣であることぐらいかのう?』
やはり。ならばイタズラがここまで巧妙なのも頷ける。
『それで、そなたらは妾になんぞ用でもあるのかえ?』
「特にこれといった用事がある訳じゃない。イタズラ好きな“妖怪”の正体を調べにきただけだ。お前は別に人間に対して害意があるわけではないようだから討伐の必要もなし。あとは『妖怪の正体はイタズラ狐だった』と報告して終わりだな」
『ふむ、なるほどの。面倒なことになることがなさそうでなによりじゃ。おふざけも程々にせんといかんのう』
「全くだ。もう少しでこの辺を全部更地にするところだったぞ」
『ハッハッハッ。先程の魔力を見たあとだと笑えんのう・・・』
気付けば暗闇も晴れて明るくなっていた。ホラーな雰囲気もなくなったし、“妖怪”の正体も分かった。めでたしめでたし。
『待っておくれ』
用は済んだので帰ろうと踵を返したところで、九尾に呼び止められた。
「何だ?」
『そのぅ・・・あんなことをした後で図々しいのは百も承知なんじゃが、妾も人里に連れて行ってはくれんかの?』
「ふーん? 興味あるのか?」
九尾はもじもじとやけに人間臭い動きをしながら頷く。
『実は常々人間の町を散策してみたいと思っていたんじゃが、何かと目立ってしまってのう・・・』
「人に化けたりはしないのかしら? 得意でしょ?」
『もちろんじゃ。ほれ、この通り』
シェーラの疑問にそう答えると九尾は体を眩い光で包んでいき、次第に人の形に収まっていった。
それは狐の獣人の姿をした妙齢の美女。明るいブロンドの長髪と金色の瞳を持ち、服装は和服のようなものを着崩していてグラマラスな肢体の魅力をさらに引き上げている。
特に頭の上にある狐耳と後ろに付いてる尻尾がセットになるとより凶悪だ。王道な異世界ものが愛読書である時点でお察しだが、俺も例に漏れずケモナーなのであるッ!
「このように人に化けるのは問題ないのじゃが、やっぱり一人だと色々ボロが出やすくての。うかうか人前に出られんのじゃ」
人間との交流はしていないと言っていたし、人間社会のシステムに疎いところがあるのは仕方ないだろう。
「これはわがままかもしれんが、適当な人間に声をかけるのも妾のプライド的にあれだし、その点お主はただの人間ではなかろ? ハーフか?」
「ああ。竜とのな」
俺の答えを聞いた九尾は目を見開いた。
「なんと、竜人じゃったか! 道理で強い力を感じるはずじゃ。しかし珍しいのう、見るのは百年ぶりくらいじゃったか」
九尾は興味がつきないといった感じでまじまじとこちらを見ている。
「それで、どうじゃ? 仲間にしてもらえるかの?」
「シェーラ、どう思う?」
「私は別に構わないわ。シグルに任せる」
「そうか。なら決まりだな」
そう言うと、九尾の顔がパァッと輝いた。
「連れて行ってくれるのか?」
「ああ。ただし俺からひとつ条件がある」
「ふむ、なるほど。良いじゃろう、お主のように強き雄ならば妾も文句はない。己の獣欲を妾で存分に発散するがよい」
「・・・待て待て待て、突然何を言い出す」
何やら誤解している九尾が少し頬を染めながらとんでもないことを口走り始めた。俺はジト目を向けつつも、なんとなくシェーラの方から負のオーラを感じて冷や汗を流す。
「うむ? 竜族は肉体の強さに比例して精力も強いと聞くし、男が女に付ける条件といったら愛玩奴隷か性奴隷と相場が決まっておるじゃろう?」
「決まってねぇよ! なんだその偏見は!?」
そういう男も確かにいるが、少なくとも俺はそんなことはしないし、そもそも時と場合を考えてほしい。
チラリと後ろを見やると、シェーラの機嫌が明らかに急降下していた。
そんな俺たちの様子に気付いているのかいないのか、わざとらしく耳元の髪をかきあげる仕草をしながら話を続ける。
「妾の姿は美しすぎてあらゆる雄を魅了してしまうようでのう。現に人の姿になってからお主の視線が釘付けになっておる。どこに、とは言わんがの?」
「うっ、気付いてたのか、イテテテテテテテテテッ!」
「・・・フン」
シェーラに思い切り脇腹をつねられた。いかん、これは完全に拗ねていらっしゃる。
「お前なぁ、いらない誤解を招くようなことを言うなよ。そりゃ魅力的なのは確かだけどさ」
「むふふ、強き雄に口説かれるというのはなかなか悪くないのう」
「・・・あんまり調子に乗ってると連れて行かないぞ」
「おっとっと、また悪い癖が出てしもうた。堪忍じゃ」
「ったく・・・、それで条件というのはだな」
瞬間、やれやれと呆れ顔だった俺の顔は自然と好戦的な笑みに変わる。
「俺と戦うことだ」
作品を読んでいただき、ありがとうございます。
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次回は九尾との戦闘です! 新たにシグルが竜人ならではの能力を使う予定なので、乞うご期待!




