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土地神ライフ  作者: KUMA
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最終話 土地神ライフ 


~ヒノモト神社~


 時は流れ、文明は私の生きていた時代よりも少し進んだ感じになりました。多くの出会いと別れを繰り返し、ヒノモト村もついにはヒノモト町と……管理する場所が増えて中々大変ですが、日々充実してますよ。

 時刻は7時30分頃、朝の神社の仕事も一段落したのでこれから日課のジョギングを行います。……別に太ったわけではないですよ? 自分の足で町を周り、住民の方とコミュニケーションを取るのが目的なんです。神様だから偉いんだぞって威張ってたら信仰もいずれ無くなってしまいますからね、実際にそうなった例を見た事があります。


「よしッ」

『……いっしょに行く』

「おや蕾さん、おはようございます。眠いなら無理しなくても――」

『行く』


 彼女は座敷童の(つぼみ)さん、妖刀の一件で体調を崩した辺りから懐かれて以降ずっと一緒にいます。本来は取り付いた人以外に見えない性質を持っていたのですが、陽光さんに頼んで他の人にも見えるようにしてもらったんです。そして最近になって……えっと何十年前だったかな、会話ができないのが不便に思った彼女は念話、つまり現代風に言うならテレパシーを習得したんです。そのおかげで以前よりもずっとコミュニケーションが取りやすくなりましたよ。


 さてさて、蕾さんの着替えも終わったみたいですしジョギングを始めましょうか。



~ヒノモト商店街~


「ほッほッほッ……気持ちいいですねぇ」

『うん、丁度良い風』


 神社を出て約10分、ヒノモト商店街へ到着しました。雑貨屋にお土産屋、肉屋、魚屋、八百屋等々……様々なお店が並んでいる通りです、軽食を楽しめるカフェもありますよ。

 二人で走っていると店の準備をしている方々に声を掛けられました。


「おうマコトッ、今日も元気そうだな! 」

「おはようございます、町の見回りが終わったら買い物に来ま~す」

「あらあら蕾ちゃんも一緒なの? またウチの子と遊んであげてね」

『うんッ、後で行くよ』


 その後も次々と声を掛けてもらえました、どうやら蕾さんも現在の町に馴染めているようで安心です。おっと、お土産屋さんの前にいる方が手を振ってくれてます。少し立ち寄りましょうか。


「マコト様、おはようございます」

「わわ、だから”様”は付けないでくださいって言ってるじゃないですか」

「そうはいきません、貴女様は私の恩人です。それは長い刻が流れても変わる事はないのです! 」


 彼女の名前は氷山シズク、昔からこの地に住む濡れ女と雪女の混血の方ですよ。見た目は40代の女性ですが実年齢は秘密、神様や妖怪だと人間よりも遥かに長い時間を過ごしますからね、聞こうとすると冷たい視線と霊力を向けられるので注意です。現在彼女はお土産屋【山の恵み】を経営してます、オープンの準備をしている時に考えていた名前は私の名前だったのですが、全力で却下しました、土下座をしてでも止めさせましたとも。

 恩人と言われてますがあまり自覚はありません、昔にちょっと問題を起こしただけでそれ以降は何もしてませんからね。あとはそうですね、彼女が体調を崩した時に介抱した位かな……まぁ少し過剰に慕われてると認識すれば良いか。


「むぅ……でも人前ではあまりやらないでくださいね? 」

「そこは承知しております、ご安心を。それではお気をつけて」

『行こッ』

「わっとと、蕾さん待って!? では行ってきますね~」


 さて次の目的地は甘味処です、蕾さんはもう待ちきれないみたいで凄い速さで進んでいきました。到着した時には璃狐さんと枯狸さんも困った顔をしてましたよ、そりゃ開店前ですし団子を強請られても出せませんしね。


『元祖三色団子、食べたいッ』

「あ~もうッ、まだ開店前よ! そんな顔しても団子は出せないの!」

「まぁまぁ、蕾ちゃんはウチのお得意様なんだし……はい、どうぞ」

『ありがとう、枯狸お姉ちゃん』


 お礼を言われた枯狸さんはニコリと微笑みました。


「えへへ、どういたしまして」

「枯狸ッ! ……まったくしょうがないんだから、今回だけよ」


 化狐の璃狐さんと化狸の枯狸さん、彼女達も妖怪で永い付き合いになりますね。今は甘味処あまてるを二人で経営してて、おばちゃん直伝のみたらし団子と三色団子がおすすめです。時代が進むにつれて様々な甘味を扱うようになり、ケーキなどの海外のお菓子も売ってますよ。


「……ふぅ、やっと追いついた。蕾さん、あまり我が儘言うのは駄目ですよ? 」

『う……エイッ』

「ムグッ!? 」

『マコトお姉ちゃんも共犯者だね』

「もう、アンタが甘いからじゃないの? しっかり教育しなさいよね、マコト」

「あ、おはようございますマコトさん。朝の見回りですか? 」

「ムグムグ……ふぅ。うん、蕾さんと一緒にね」

 

 最近は新作の和菓子の製作を頑張っているみたいです、どのようなモノが出るのか楽しみですね。あ、代表取締役は妹の枯狸さんです。数年前までは璃狐さんが行っていたのですが、廃業寸前まで業績が落ち込んだ事があったんです……お金の使い方が荒く、色々と詐欺にも引っかかってましたからねぇ、枯狸さんと交代してからは地道に業績も回復していき、今では従業員と店舗の数も少しずつですが増えてきてるみたいですよ。

 ヒノモト店に来れば二人に会う事も出来ますよ、とはいっても常にいるわけではないですがね。経営者とその補佐として各店舗の見回りや流行調査等を行わないといけませんから、割と忙しいみたいです。今日会えたのはラッキーでしたね。


「お二人とも、今日はお店でお仕事ですか? 」

「ええ、各店舗の確認と市場調査は終わりました。ようやく新商品の開発に取り掛かれます」

「楽しみにしてなさい、ほっぺが落ちそうなくらい美味しいのを作ってみせるから! 」


 ビシッと指差しをして見事なドヤ顔を決める璃狐さん、そして隣でため息を吐く枯狸さん……これも見慣れた光景ですね。おっとこれ以上邪魔してはイケませんね、次の地区を回らないと。



~ヒノモト町 温泉通り~


 ふぅ~大分走りましたね、此処からはゆっくり歩く事にしましょう。ここは温泉通りと言います、ヒノモト町の観光スポットですよ。元々は霊石で温泉を生み出してたんですけど、それが土地と一体化して天然 (?)の温泉が湧き出るようになったんですよ。噂は広まって商人が集まり、この通りには宿や娯楽施設が多く並ぶようになりました。クロ達の宿屋もこの通りにありますよ、旅行雑誌でも紹介されてて宿泊する人は絶えず、予約は一杯みたいです。


「ん~……この温泉独特の匂い、嫌いじゃないなぁ」

『汗掻いた』

「そうですね、何処かでちょっと涼みましょうか」


 ……と言うわけでこの町一番の老舗温泉宿、つくよみに行きましょう。現在は私の神使であるクロが切り盛りしてます、()()が神界へ帰還してからは色々と大変だったみたいです。


「ようこそお出で下さいました……ってマコト様、一体どうなされたのです?」

「あ、おはようチャチャ。少し涼みに来たんだけど大丈夫かな? 」

「ええ大丈夫ですよ、何か飲み物でもお持ちしましょうか? 」

「ありがとう、じゃあ冷たいお茶を2つお願いします」


 出迎えてくれた茶髪の女性はチャチャ、数年前に来てくれた新たな神使です、ちなみに変身時は赤柴となります。来たばかりの時は敵意むき出しで"クロ兄様は渡しません! "って言われたっけ……今ではすっかり丸くなって普通に接してくれてます。


「は、恥ずかしい事を思い出さないでください」

「へ……顔に出てましたか? 」

『マコトお姉ちゃん、分かり易い』


 むぅ……そんなに分かり易いかな?

 おや、冷たいお茶と一緒にタオルまで持ってきてくれたんですね。汗を拭いて、お茶を頂いているとクロが外から戻ってきました。スーツ姿の彼は現代ならではの姿ですねぇ……どうやら外で打ち合わせがあったみたい。チャチャは私達と同じように冷たいお茶とタオルを持って彼を出迎えました。


「おかえりなさい、クロお兄様♪」

「コラ、仕事場でその呼び方を止めろって言ってるだろ? 」

「は~い……申し訳ありませんでした、クロ先輩」


クロはお茶とタオルを受け取ると此方に気付き、やや早歩きで近づいてきました。


「マコト様! 連絡して頂ければ出迎えましたのに」

「蕾さん、クロが先輩風を吹かしてるみたいですよ」

『ビュービュー吹かしてるぅ』

「ふ、二人でからかわないでください。仕事でメリハリは必要ですから、コレは教育の一環です」

「フフ、ごめんごめん。朝からお仕事お疲れ様、そう言えばあの準備は順調かな? 」 

「はい。予定は今日のお昼ですよね、問題なく終わってますよ。あとは彼女を待つだけです」


 うん、それを聞いて安心しました。実はある準備の確認を行う為に寄ったんです、彼も忙しいですからね……連絡できれば良かったんですが、繋がらない事の方が多いので会える確率の高い朝を狙って正解でした。チャチャとクロにお礼を言うと宿を出るとしましょう、去り際に八頭さんも顔を出してくれました。スサノさんは神界に戻ってしまいましたが、彼女は残ってクロ達と一緒に頑張ってるんですよ。


 さてさて、次は同じ通りの中にある鍛冶屋 鉄心(てつごころ)に顔を出しましょう。整備に出してた霊刀の華ちゃんと水ちゃんを受け取りに行くんです。店主はカジバラさん……ではなく(たたら)天目(あまめ)さん、一本だたらの妖怪で現代の鍛冶作業で彼女の右に出る者はいないとも言われています。

 店に近づくと一定のリズムで金属を叩く音が聞こえてきました。


「おはよーございますッ!! 」

「おはようございます、お弟子さんも朝から元気ですね。天目さんはいらっしゃいますか? 」

「はいッ、天目親方ぁッ! マコトさんがいらっしゃいましたぁぁッ!! 」


 お弟子さんの声が鍛冶場内に反響する……すると奥から頭にタオルを巻いた一つ目女性が出てきました。すごく恥ずかしそうです、タオルを取ると襟首までの黒髪が現れました、長さは一定に揃えられてて"おかっぱ"と呼ばれる髪型ですね。鍛冶作業で長髪は危ないですからね、それに手入れも大変でしょうし。


「おはようございますぅ……お、親方は止めてってば虎鉄君」

「親方が駄目ならば師匠と呼びますッ! 天目師匠ッ!! 」

「あぅあぅ……」


 さらに赤面する天目さん、お弟子さんの勢いにグイグイ押されてますね……恥ずかしさのあまり倒れてしまう前に要件を話した方が良いかもせれません。


「おはようございます、天目さん。華ちゃんと水ちゃんを受け取りに来たんですけど、終わってますか? 」

「え……あ、ま、マコトさん!? おおお、おはようございます! ……ふぅ、もちろん終わってますよ」


 すると天目さんは鍛冶場の奥から大小2つの風呂敷を持ってきました、風呂敷を開くとそれぞれ綺麗な桐箱が……中には霊刀の火華(ひばな)水那斬(みなぎり)が入っている事を教えてくれます。

 私の気配を察知したのか、華ちゃんと水ちゃんが姿を現しました。


『ふぁぁぁ……よぉ寝たわぁ。おはよー、マコトちゃん』

『ようマコト、見回りは終わったのか? 』

「丁度終わったところ。天目さん、ありがとうございました。代金はおいくらですか? 」

「今回は定期整備なので代金は15万6800円になります」

「う……やっぱ高い」

「霊刀は他と比べて色々と手間が掛かりますので、すみません」

「ひ、必要経費ですので。カードでお願いします……」

「お支払いは一括ですか? 」

「グスン……はい」


 想定外ではないのですが、大きな出費が発生しました。経費で済ませられるとはいえ手続きが中々面倒なんですよ、役場の窓口をあちこち移動したり、準備する書類とかね……さて、これで残りは住宅街のみ、少し遠回りになりますが神社へ戻りながら見回るとしましょう。



~ヒノモト神社~


 少し遅めの昼食を終え私は蕾さんと一緒に神社のお仕事をしていました。参拝客の対応は私、境内の掃除は蕾さんといった感じで役割分担です。

 そしてあっと言う間に時間は過ぎて15時……クロとチャチャが神社に来るとある準備が始まります。境内の中には様々な料理が並べられ、ヒノモト町の住人も少しずつですが集まってきました。


「マコト様、そろそろですよ」

「うん、やっと……だね」


 今日は特別な日、数百年掛かりましたが彼女が返ってくる日なんです。その為に私も前々から準備を進め、町人の方々へ協力してもらってました。いやぁ~……最初は果てしない日数と感じていましたが、当日を迎えると感慨深いです。神界に行っても治療中で面会もできませんでしたからね。


 ……お、遂に時間が来たみたいです。境内の中央に光が射しこんでくると和服を着た少年が降りてきました、見た目は若いですが私よりも遥かに年上なんですよ彼は。白を基調とした和服、下の袴には炎を思わせるような刺繍が施されていますね。普段は橙色の袴なんですが、大事な仕事の時の服装みたいです。


『我が名は陽光、この空に輝く太陽であり、大和を守る神……天照大神だ』


 わぁ……似合わない話し方。ですが町人の方々は彼に対して頭を下げたり、手を合わせて拝んでいます。知らない人はほとんどいないでしょうし、信仰されてて当然でしょう。彼の近くには白い球体が浮かんでいました、おそらく彼女でしょう。


『ヒノモト町の土地神の活躍を此処に認めるモノとし、新たな神使を遣わせよう』

「ありがとうございます。天照大神様からの贈り物、ありがたく頂戴します」

『うむ……(後で神界へ顔を出せよ、説教してやる)』


 呼び出しされてしまいました、ふざけていた訳ではないのですがねぇ……また顔に出ていたのでしょうか? 彼の傍で漂っていた白い球体は私の目の前に降りてくると形を変え、白い柴犬が姿を現すとお座りの状態となります。


『神使シロよ……己の使命を理解し、励むのだぞ』


 陽光さんから言葉を受けると振り向いて彼を見つめながら一鳴き。


「ワォンッ! 」


 その様子を見た陽光さんは微かに微笑むと徐々に身体を透かしていき、射していた光と共にゆっくりと消えてしまいます。シロは陽光さんの気配が完全に消えたと感じ、その場でクルッと宙返り……着地する時には人の姿となっていました。赤の着物に濃紺の袴、その上には白を基調としたダンダラ羽織、腰ほどまである白銀の長髪はリボンでポニテ状に結ってています。

 

 私の方へ振り替えると、ニカッと微笑みながら右手を上げて声を掛けてきました。


「よう、主殿。元気だったか? 」

「うん……おかえり、シロ」

「あぁ、ただいまだ」


 さてさて、町人の皆さんも彼女の事が気になっている筈です。簡単な経歴と紹介を終えるとその後は談笑しながら食事を楽しみました。楽しい時間はあっという間に過ぎ、翌日はヒノモト町の案内……物珍しそうな表情をした彼女の顔は今でも忘れられません。


 私は人間や妖怪に親しすぎるとよく言われますが、間違っていると思った事は一度もありません。人々に寄り添い、苦楽を共感しながら生きていく……それが私の土地神としての生き方なんです。

 

 これからも変わる事はないでしょう、きっとね。


ど~も、作者のKUMAです。

今回のお話で本作品は完結となります……いや~、よく続いたなぁと自分でも驚いてます。同時に進行していた何作品かは更新が止まっていますが、”この作品だけは何が何でも続ける”と強い意志があったから完結までこぎ着けたのかもしれませんね。


……どうしよう、最後の後書きなのに何を書けばいいか分からないや(;´・ω・)

あぁそうだ、今後の予定ですが四星剣の方の更新を再開するかもしれません。現在は別の投稿サイトで週1更新している作品もあるのですが、まぁ何とかなるでしょう。


この作品を投稿し始めたのが2016年の2月、そして完結が2021年6月……長いようであっという間でしたね。本当に、本当にありがとうございました!!


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