第63話 勝利と代償
作者の体調不良により、今回の後書きはありません。
申し訳ない……
「うわわわ、攻撃の勢いが……ひぃ!? 」
『チッ、腕を斬り落とされた仕返しのつもりか。マコトよ、今は避ける事に専念しろ』
『せやねぇ、当たりそうになったら水の壁で守ってあげるさかい、安心しぃや。でも頼りっぱなしはアカンよ? 』
水ちゃんが言ったように彼女の守りを過信してはいけません。今は打ち消しているようですが、徐々に瘴気の弾の威力も増しています……と言いますか、殺意が大分増しているみたいで苦無のように尖ったモノが飛んできて怖いです。
さらに相手は羽の生えた小さな蟲を呼び出し、私達へ仕掛けてきます。見た目はそうですね……蟷螂と蜂を足したような感じ。すれ違いざまに鎌で斬り裂くか、尾の毒針を刺しての攻撃のどちらかなのですが、接近を許す前に華ちゃんを振るって広範囲に炎を放出して焼いて対処しています。
「で、でもこの攻撃の嵐じゃいずれ……うひゃぁッ!? 」
どうやら華ちゃん達と相談する暇を与えないつもりの様です、直接話せなくても念話と言う便利な能力はあるのですがちょっと集中しないと駄目なヤツでして……集中力が散漫するとラジオのノイズみたいな音が聞こえるんです。今ノイズを聞いたら変な体勢になりそうなので止めておきましょう。
しかし反撃できないのは問題です、このままではジリ貧ですよ。蟲は焼き払えば良いけど、あの弾をなんとか跳ね返せれば……ん? 弾を、跳ね返す?
「水ちゃん、ちょっと、お話――」
『ええよ、無理に話さんでも。ウチがマコトちゃんの思考を読み取るさかい……へぇ、面白そうやないの』
……それが早くできるならやってほしかったです、さてさて、どうやら弾を跳ね返すと言うよりも水流に沿わせて返す事は可能の様です。威力は若干下がるようですが、軌道を湾曲させる事で回避と防御はほぼできないだろうとの事。相手の攻撃パターンは読めてきましたし、弾幕の攻撃に切り替わったら試してみましょう。
『神を穿つ瘴気の槍よ、此処にッ』
相手は片手を空に掲げるとその上に瘴気が集まっていき、漆黒の槍が姿を現しました。どうやら瘴気を集中させて威力を上げたみたい……水の防壁では防げないでしょう。そしてこういった攻撃は回避ができないほど速いというのが相場で決まっています。
「う……強力なヤツが来そうですね」
『問題あらへん、ウチが上手い事返したる』
『まずは蟲を一掃するぞ、マコト! 』
華ちゃんの指示通り、まずは周囲に羽ばたく蟲を焼き払う事にしました。紅蓮の刀身を持つ刀を手に取り、私はその場で回転切りを行います。すると刃から炎が放出され、そのまま回転を続けると炎の竜巻がができました。
……一応言っておきますが、華ちゃんを持っているおかげで自身が発生させた炎は全く熱くないんですよ。さらに回転による範囲攻撃に関してはシロを宿している事もあって目が回らないんです、彼女も初めの内は奥義を使う際はグルグル回ってたと言ってましたし、それの影響でしょう。
「やあああぁぁぁッ! 」
『……ほぅ? 』
次々と蟲を巻き込んでいき、あの槍が発射される前に一掃する事に成功しました。しかしすぐに回転は止まりませんからね、ちょっとピンチかも……念のため水ちゃんも持っておきましょう。
……予想通り、炎の渦が消えると同時に見えたのは瘴気の槍を発射する準備を終えた暗鬼の姿。私を見つけるとニヤリと不敵な笑みを浮かべ、掲げていた手を振りかざしてきました。
『これで終いだ』
漆黒の閃光となった槍が迫ってきます、水ちゃんと華ちゃんは霊力を使って私の身体能力を強化、そして強制的に右方向へ移動させてくれました。同時に水の羽衣の様なモノが背中に出現し、そこに槍が当たると羽衣は水流が発生したかのように動き、形状に添わせるように軌道を変更させます。
『な……グォォォッ!? 』
水の羽衣は瘴気の槍を相手へと返し、見事直撃させる事ができました。上半身の左側から大きな半円ができています、左腕を丸々吹き飛ばしたみたいですね……私に当たらなくて良かったです。
さて大きく怯み弱っている今がチャンスです、以前使った道具"封印の勾玉"を使えるかもしれません。
「シロ、華ちゃん、水ちゃん……やりますよ! 」
『おうッ!』『決めるぞ! 』『はいな! 』
懐から白と黒の勾玉が組み合わさった玉を取り出し、暗鬼に向けて投げつけました。
コツンッ……パカッ、ギュォォォォォォンッ
暗鬼の頭部に当たると勾玉は二つに割れ、グルグルと円を描くような軌道で封印の動作に入りました。暗鬼は身体の欠けた場所から徐々に塵のように分解され、二つの勾玉の中央に集められ行きます……これは成功する、そう思った瞬間相手は動き出しました。
『グゥゥゥッ、封印だと!? 一人では死なんぞ!! 』
「……えッ!? 」
ガシッ
暗鬼は私の右腕を掴みました、するとその瞬間に身体が勾玉に引き寄せられるような感覚を感じました。振りほどこうにも相手の執念は凄まじく、華ちゃんの炎で焼かれても離そうとしません。このままでは一緒に封印されてしまう……そう思った私は手に持っていた華ちゃんと水ちゃん、シロの霊体を後方へ放り投げました。運が良い事にギリギリ封印の範囲外の地面へと刺さってくれました。
『マコト!? 』
『いったい何をするん!? 』
『……』
「すいません! あとは頼みます!! 」
吸い込む力は徐々に強くなり、一人となってしまった私ではそろそろ限界が……踏ん張りを止めようと思った矢先、弾き出したはずのシロの声が聞こえてきました。
すぐ傍にはシロが私の肩へ手を掛けながら一緒に封印を行っているではありませんか。
『やはり馬鹿だな、主殿』
「し、シロ!? 華ちゃん達と一緒に出したはず――」
『アチキがそんな事を許すわけが無いだろう? それに奴は……』
シロは一瞬口ごもっていましたが、私の方を真直ぐ見つめて一言。
『奴はアチキが片付ける、すまんな主殿! 』
その言葉を放った瞬間に身体に衝撃が走りました。どうやら霊体の状態であるシロは自身の霊力を蹴り付けるような動作で私に放ち、後方へと吹き飛ばしたらしい……丁度華ちゃん達が刺さっている場所に着地し、視線を上げると彼女は切なそうな笑みを浮かべていました。そして再び暗鬼の方を睨み、急接近を始めました。
『さて往生際が悪すぎるぞ、ギシンよ』
『その名で呼ぶ――』
『せめてものの情けだ、アチキが一緒に行ってやる! 』
『ヌォォォォォッ、止めろォォォォぉォ!? 』
暗鬼の断末魔のような叫びと共に、シロは勾玉の中央へと吸い込まれてしまいました。封印対象を囲うように二つの勾玉は再び合わさり、私の手へと戻ってきました。
『くッ、まさかアイツは初めからコレを? 』
『そんな……シロちゃん』
「嘘……嘘、だよね? シロ……シローーーーーー!! 」
山頂に私の悲痛な叫びが空しく響き渡る……涙が溢れ、目が真っ赤になるまで泣き続けました。




