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土地神ライフ  作者: KUMA
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第59話 主に力を

作者の体調不良につき、今回は後書きがありません


曇天の空、そして雨が降ってきた……ポツリ、ポツリと。次第に強くなっていき、水滴がぶつかる音も大きくなりました。


そして目の前には血で汚れた薙刀を構えるシロがいる。

嘘であってほしい、夢であってほしい……そんな願いは儚く散り、彼女は私に斬りかかってきます。


「うわっ!? とと……」

「大人しくしていれば楽に殺してやるぞ? 」

「それはできません、私が倒れれば大勢の人が苦しむ事になります」

「ふん、人は黙って神に隷属していれば良い。意思を無くし、声を聴き、それに従う事が幸福に繋がるのだ」

「それは貴女の考えですか? それとも暗鬼と言う方の……」


ブゥンッ!


質問の途中で再び斬りかかってきました、答える気は無いみたいですね。

できれば私は戦いたくはないです、しかし彼女は八頭さんに重傷を負わせました……時間を掛ければ今度こそ止めをさされてしまうでしょう。私から仕掛けるにしても短刀に対して薙刀の間合いが広すぎます、下手に踏み込めばスパっと斬られるのが目に浮かびます。


「どうしたどうした! 村を護る神の実力はその程度なのか!? 」

「くぅっ……! 」

『マコトちゃん、一旦お札使って距離を取るんや! 』


水ちゃんの声に従って火の札で牽制し、土壁の札を使って後退しました。シロは火を消して追って来ると思いきや、倒れている八頭さんの頭部へ薙刀を当てがいました。


「八頭さん!! 」

「逃げるのか? まぁそれは構わないがコイツは死ぬことになるなぁ……クククッ! 」

『アカン、マコトちゃん。助けたいのは分るけど今は落ち着きや。そんでもって霊力ありがとうね、おかげでまたお話しできるようなったで』

「水ちゃん……私、どうしたら…………」

『そんなん決まっとるやろ、あのシロっちゅう子を倒さんと八頭ちゃんは助けられんよ。……倒すなんて生易しい言い方はアカンね、殺さんと助けられへん』


水ちゃんはハッキリと言ってくれました、この戦いでは死者が確実に出ると。私が逃げれば八頭さん、シロに負ければ私達二人、私が勝ったとしてもシロは死ぬことになる……私が手を下さずとも瘴気に侵された状態を見れば明らかであり、生きても一年程度だろうと水ちゃんは教えてくれます。


「私は――」

『ええか、マコトちゃん。前に話したやろ? 瘴気に侵された者の末路を』

「で、でもまだ何か手が――」

『ええ加減にしぃや! 』

「っ!? 」

『……怒鳴ってゴメンな。苦楽を共にしてきた仲間を救ってやりたい気持ちはよぉ分る、でももう手遅れなんや』


水ちゃんは最後に覚悟を決めるように言うと静かになります、再びシロを見ると薙刀を八頭さんに向けながら私を悪い笑みを浮かべながらその場に立っていますね。

やるべき事は理解しています。しかし、決意を言葉にしように詰まってしまい、息苦しくなり、水ちゃんを持つ手が震える、脚が鉛のように重い……シロを討つ事を身体が拒否しているんです。


私にはできない……その言葉が喉まで出かかったその時――


『やれやれ、手の掛かる"主殿"だな』

「……え? 」

『どないしたん? 』


今、彼女の声が聞こえた気が……


『あんなのがアチキな訳がないだろう? 敵の息の根を止めずに楽しむような趣味はない』

「っ!! 」



瞬きをすると急に周囲の景色が灰色となり、色が付いているのは私と対峙している人物のみ……衣服は血で汚れてなく、綺麗な白髪が風で揺れていました。私の知っている彼女が目の前に立っているのです、思わず走り出そうとしましたがその場から動けません。


『あ~……スマンが主殿。時間が無くてな、精神世界に意識だけを引っ張ってきたんだ。簡潔に言うぞ、此処にいるアチキは偽者だ、安心して討つが良い』


そ、そんなアッサリと言っていいの!?

でも万が一貴女に何か影響があったら……


『心配するな。言っただろう、時間が無いと……大丈夫だ、主殿はアチキが護ってやる』


その言葉の後、シロの身体は光球となり私の身体へ入り込みます。全身が淡い光に包まれると、身体の奥底から力が湧き上がってきました。


『名を付けるなら【白犬の加護】だな、本物の力を奴に見せてやれ』


……同時に景色に色が戻り、水ちゃんの声が聞こえてきます。


『――ちゃん、マコトちゃん! どないしたん、やっぱ無理か? 』

「あ……いえ、私は一人じゃない、大丈夫です」

『そうやね、ウチも一緒や……ん? マコトちゃん急に雰囲気が変わったけど、何か強化系のお札でも使ったん? 』

「え、何も使ってませんよ」


水ちゃんには見えていなかったようですね、でもこの不思議な力がいつまで続くのかは分かりません。

説明は後にして目の前の脅威を倒すことに専念しましょう。いくつか確認してみましたが、何とかなるかもしれません。

一つは間合いについて、刀身自体は伸びませんが霊力の刃を形成する事で普通の刀程度までは伸ばせるとの事。二つ目は攻撃への対処について、十分な水があれば霊力の消費を抑えて、壁や分身を作れるようです。近接攻撃は分身に狙いを逸らさせ、遠距離攻撃は壁を使う……今は雨も降ってますし、状況としては悪くなさそうですね。三つ目は、秘密です。


『でもそれだとマコトちゃんにかなり負荷は掛かるけど、大丈夫なん? 』

「大丈夫です、私にはシロも付いてますから! 」


私はその場から駆け出しました。

シロ(偽)はニヤリと不敵な笑みを浮かべると周囲に瘴気で作った黒い球体を出現させ、此方に向けて放ってきます。複雑な軌道を描きながら迫りくる瘴気弾……水ちゃんに指示を出して分身を出現させ、先行させましょう。


「水の分身か、小賢しい真似を」


分身は瘴気弾によって半数が消滅……雨はまだ降ってる。水ちゃんに追加で分身を作ってもらい再び突撃してもらいましょう、今度は武器を持たせてね。

種類は刀、薙刀、槌の三つ、次々とシロ(偽)へ攻撃を仕掛けていきます。


しかしさすが彼女ですね……時間差の連続攻撃を軽くいなし、反撃をして数を減らしている。


「脆い、脆いぞ! 水程度でアチキを倒せると思うなぁ!! 」

「じゃあ津波ならどうですか!? 」


あの程度で彼女を倒せるとは初めから思っていません、水ちゃんの力とお札を利用して作った津波……ついでに瓦礫を一緒に流して飲み込みましょう。


あ、一応言っておきますが村に被害の出ない方向に流しますよ?


ズザザァァァァァっ!


『おぉ、やるやんマコトちゃん』

「個体で負けるなら群れで攻めれば良いんです! 数は力なりですよ! 」


津波を群れと例えましたがこの場合は量でしょうか? まぁ些細な事でしょう、とりあえずシロ(偽)は瓦礫の混じった津波に飲まれたようです。


空から様子を伺ってますが……一カ所だけ流れがおかしいですね、そこに大岩があるかのように水は避けている感じです。何やら斬撃音も聞こえてきますよ。


「クク、カカカカっ! やるではないか!! 」


「うわぁ、瓦礫ごと薙刀で斬り裂いてるぅ」

『凄い子なんねぇ、どないしよか? 』

「じゃあ次の手です! 」


水の流れを変えてシロ(偽)の周囲を渦巻くように水の結界を張ります、瓦礫や土を多く含んでいるので内側から外の様子は分りませんよ。今度は四方八方から瓦礫を放つ予定です、武器を持たせた私の分身も混ぜてしまいましょう。


スパンっ


……と思った矢先、結界が斬り裂かれてしまいました。水の流れは止まり、瓦礫と一緒に落ちていきました。その中央では薙刀を振るったシロ(偽)の姿があります。


「さぁ、次はどうするのだ? 」

「う……」 

『あらら、これは想像を遥かに超えた強さや。元からあんな感じなん? 』


そもそも本気を見たことが無いので比較できない、クロなら分かるかもしれませんね。

適当な事を言うと怒らせそうですし……ん、怒らせる?


いっその事怒らせてしまいましょうか。


「いえ、あの状態よりも遥かに強かったですよ」

「なんだと? 」

「その証拠にほら……八頭さんは水ちゃんの作った分身でしっかりと回収させてもらいましたし」

「なッ……いつの間に!? 」


実は分身を突撃させた際にシロ(偽)の真後ろでコッソリと別動隊を作っておいたんですよ、あとは相手が迎撃に集中してる間に回収、今頃は神社に到着してクロから治療を受けている筈です。


「本来の彼女であればすぐ気づいて対処していたはず、この程度の戦況すら把握できないのであれば私でも勝てます! 」

「ふ、ふざけるなぁっ! 」


おっとこれは予想外、シロ(偽)はその場から飛び上がると空を蹴りながらこちらに迫って来ます。どうやら瘴気で足場を作って移動をしているみたいですね。

あっという間に私の目の前へ到達、薙刀は既に振りかぶっています。


水ちゃんに霊力を送り刃を形成、そして結界の札を使いつつ防御の姿勢を取りました。


「その程度で! 」

「うっ!? 」


瘴気を纏った薙刀は結界を斬り裂くと霊力の刃とぶつかり、相反する力は互いに消滅させ火花のように散っていきます。


「アチキを止められると、思うなぁッ! 」


彼女の掛け声と共に瘴気の勢いが増し、形成した霊力の刃へ徐々に喰い込んできました。回避行動も間に合わず、身体を逸らそうとしましたが全て無駄……刃が消滅すると同時に身体を斬り裂かれ、下へ落ちていく事に。


そしてシロ(偽)は追い打ちと言わんばかりに薙刀を投げつけ、私を地面へと串刺しにしました。


「が……は……」

「クク……アチキが弱いだと? アチキに勝つだと? よくもそのような大口を叩けたものだなぁッ! ハハハハハハハっ! 」

「ゴフっ……フフ、フフフ」

「どうした、死に際に頭でもイカれたか? 」

「いえいえ、やはり貴女は本物のシロよりも格下と分かって思わず……フフフ」

「何? 」


私が水ちゃんに聞いた三つ目は身体を水と化す事。相手が貫いたのはほんの少し血を混ぜた分身体、シロ(偽)の問いかけに答えることなくドロリと溶けて消えてしまいます。

本物の私は彼女の後ろで力を溜めていたんです……シロから貰った力を使う為にね。


いつの間に移動したか、ですか? 突撃した際に分身を作りつつ身体を液化して紛れて……と、とりあえず中々高度な技術を使ったんですよ。水の結界を張った時にはシロ(偽)の後方で溜め始めてました。


「おかげで私は"彼女"の力を使えます! 」


溜めた力を解放し、容姿が変化します。

髪は伸び、白髪が混じり、シロの身に着けていた防具と白いダンダラ羽織を装備。最後に光球を掴み取ると形状が変化し、赤柄の薙刀が出現しました。

ちなみに水ちゃんは変身の際に一緒に取り込んでいる為、霊刀の力も自在に使う事が出来ますよ。


「なんだ、その姿は? 」

「……何なんでしょうね? 初めてなので私も分りません」

『気ぃ抜ける事言いなさんな、せやなぁ……【一心同体】でええちゃう? 』


神使を身に纏う力、【一心同体】……クロとやった場合はまた別の姿になるのかもしれませんね。


初めてですが不思議と負ける気がしません。

油断大敵ですが、ササっとあの偽者を倒してしまいましょう!


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