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土地神ライフ  作者: KUMA
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第56話 もう一本の霊刀


 今後の戦力を相談していると、いきなり障子がガラリと開かれました。

 そこに立っていたのは玄内さん……この村唯一のお医者さんです。


「マコト、話がある」

「えっと、今じゃないと駄目ですか? 」

「駄目だ。武器が必要なんだろ? 俺のを貸してやる」


 そう言うと彼は私の返答を待たずに家に入り、適当な場所へドカリと座ってしまいます。

 武器を貸すと言っても私は一度も玄内さんが戦っている所を見た事はありません……とりあえず話だけでも聞いてみましょうか。


 玄内さんは懐から鍵を取り出すと、私にポイっと投げてきました。


「わ……っと、これは鍵、ですか? 」

「見りゃ分かんだろ、俺の家の棚を開けられる」

「家と言うと、皆さんの住まれてる長屋ですね」

「そうだ」

「……あの、まだその地区は占領されてるんですが」

「なりゃ取り戻せば良いだけの話だろう、武器が欲しけりゃ頑張りな」


 玄内さんらしい返しですね、とにかく一旦大目的は保留して武器を調達した方が後々楽になりそうです。クロから潜入してもらった情報だと長屋地区の方はあまり敵もいないみたいですし、現状の装備でもなんとかなるでしょう。


             ※※※


~ヒノモト村 長屋地区~


 さてさて、此処までは見つからずに来れましたが、クロの話とちょっとばかし状況が変わっています。


「わぁ……いっぱいいますねぇ」


 なんという事でしょう、既にこの地区は物の怪の住居へと変貌してしまったみたいです。

せっかく修繕した建物もあちこち壊され、その廃材を使って焚き火をしています……あぁ、頑張って皆で直したのに。

 それに数も多いです、いるのは餓鬼ばかりですが流石に一人で対応できる数ではありません。何か良い手があれば……。


『どうしたマコト? 』

「あ、華ちゃん……ちょっと数が多くてですね」

『チッ、相手も馬鹿じゃないようだな。よほど戦力の強化を阻止したいのだろう』

「潜入するのは無理がありますし……どうしましょう? 」

『やはり人質の解放を優先するべきだったか、神使のどちらかが居れば状況を打破できたかもしれんが――』


 そうですよねぇ……式神さんを召喚してもすぐに囲われてやられてしまいそうですし、あまり多く出すと私の霊力が足りなくなって動けなくなります。今後の事も考えてお札は温存しておきたいんです、こう都合よく攻撃が効かない人はいないかな?


「……あ」

『ん、何か策でも思いついたのか? 』

「華ちゃんって物の怪にも見えますか? 」

『お、お前まさか――』

「見えますか? 」


 華ちゃんの答えは”多少霊力を分けてもらえば認識させられる”との事。

 彼女には悪いですが、ちょっと囮になってもらおうと思ったのです。


「今の状態なら攻撃も効かないんですよね? それを利用して相手を煽ってもらえばと」

『あのなぁ……ああもう! 俺をこんな使い方をする奴は初めてだ。やるだけやってみるが、あまり長くは無理だぞ』

「だ、大丈夫ですよ。玄内さんの家も分ってますし、武器を見つけたらすぐに連絡します」


 そう言うと彼女は深いため息を吐くとそっぽを向いて手を差し出してきます。これは”さっさと霊力を分けろ”って事なんでしょう。

 彼女の手を取ると意識を集中させ、霊力を流し込みました……外観は特に変わりはしないのですが、何と言いますか存在感が増したのは分ります。


 すると彼女はフヨフヨとゆっくり移動していき、地区への入り口付近の物陰に隠れました。

 私の方を見て頷くと、物の怪達の前に姿を現します。


『愚かな物の怪共よ、お前等の求める霊刀は此処にあるぞ! 手柄が欲しくば追ってくるがいい! 』


 華ちゃんは偽者の刀を出現させて物の怪達を煽ります。

その場に溜まっていた物の怪はもちろんですが、大声だったからか室内に潜んでいた物の怪も飛び出し、一斉に華ちゃんを追いかけ始めました。


 チャンスは今しかないですね、早急に武器を手に入れないと。


「玄内さんの家は……此処だ」


 入り口の障子に”玄”と言う文字が丸く囲われています、静かに開けるとそこには様々な医療道具が置かれていました。薬草や木の実、キノコ類を種類別に入れた棚、何か液体の詰まった陶器、素材をすり潰したり調合する為の道具各種等々……実際に治療している所はほとんど見た事はないのですが、私が来る前は彼が様々な人を診ていたんですね。

 おっと目的を忘れる所でした、玄内さんから預かった鍵を使う場所を探さないといけませんね。しかし、彼は棚と言ってましたが見る限りだと鍵穴の付いた棚は見当たりません。


「……村を救う為ですし、少し探しても良いよね? 」


 と言うわけで室内の捜索です。テキトーに探しても時間の無駄になりますし、ありそうな場所を絞って探してみましょう。

 

 まずは多くの素材が入っている棚……これと言って変わった場所はありませんね、気になるのは一部を閉めると他の段が僅かに開くくらいかな。

 次は炊事場所、玄内さんは棚と言っていましたがワザと別の言い方をしているのかもしれません。しかしコチラもハズレ……何もありませんでした。

 残るは液体の入った陶器が数本置かれた台だけど、まさか重さが変わると作動する仕掛けとかだったり……。


「……しませんよねぇ、玄内さんから詳しく聞いとけばよかった。早くしないと華ちゃんが捕まって――」


 畳に座った瞬間に違和感を感じました。一部分だけ妙に沈み込みます……一瞬体重が増えたのかと思いましたが他の畳の上に立ってみても沈みはしません。下に空洞があるのかもしれませんね、外して確認してみましょう。


「畳の下に隠し棚が……? 」


 どうやら当たりのようです、沈んだ畳を外すと中には鍵穴の付いた棚が隠されていました。

 鍵を差しこみ、回してみるとガチャンと開錠された音が鳴ります。

 しかし、上に引っ張れるのは一カ所だけ……取っ手を持って引き上げると綺麗に梱包された何かが納まっていました。長さは約三十センチ程、布を外すと包まれていたのは一本の脇差でした。


 そして手に持った時に華ちゃんと似たモノを感じました、まさかこれは――


「霊刀? なんで玄内さんが……ッ?! 」


 疑問に思ったその時、手に持った脇差から霊力を吸われ、一瞬意識を失いそうになりました。

 反射的に手を離した事でギリギリ踏みとどまれたみたいです。玄内さんには申し訳ないのですが、手を離した拍子に畳へ刺さってしまいました。

 そして脇差から鼓動が……コレは、何かが目覚めるような感じですね。次第に早くなり、全体から眩い光が溢れてきます。


『ぷっは~! あ~……久しぶりの霊力、生き返ったわぁ~』


 光が治まったと同時にゆるふわな長髪の女性が現れました。

 ゆったりとしている色のついた上着の下に淡いストライプ柄のスカートのようなもの着ています、そうですね……織姫のような服装と言えば分かり易いでしょうか。


『助けてくれたんはお嬢ちゃん? ほんまにありがとうねぇ』

「あの、貴女の名前は? 」

『ウチか? ウチの銘は"水那斬(みなぎり)"。ヒノモト村に伝わる霊刀の一振りや』

「水那斬、さんですか」

『ん~……なんか固いなぁ、気軽に"(すい)ちゃん"って呼んでええよ~』


 それでは今後そのように呼ばせていただくとしましょう。

 簡単にですが状況を説明し、協力してもらえるように頼むと彼女は快諾してくれます。同時に華ちゃんもこの場に出現しました。


『おい! 手に入れたんならサッサと……』

『ん~……? この感じ、アンタまさか火華はん? 』

『水那斬?! 今まで何処に――』


 何やら外が騒がしいですね……ん?

 華ちゃんが此処に来たって事は敵さん達もまさか外に……いましたねぇ、目を血走らせながら華ちゃんを探しているみたいです。霊力の残滓を追って来たのでしょう、扉の向こうには結構な量の敵さんが群がっています。


「は、華ちゃん、まさか裏切って――」

『馬鹿言うな! んな事するわけがないだろ! 』

「じゃあ外の物の怪はどういう事なんですか!? 」

『知るか! ちゃんと分けてもらった霊力を使い切ってから此処に来たんだ、俺は悪くねぇ! 』


 こんな口喧嘩をしている間でも、水ちゃんはのんびりしていました。

障子に小さな穴を開けて外の様子を確認し、その状況を見て何か考え事を……したかと思えば突如話しかけてきます。


『火華はんすっかり可愛くなられましたなぁ。ウチも"華ちゃん"って呼んでええ? 』

『そんな事言ってる場合か! 今は外の奴らを何とかしないと――』

『……もう終わっとるよ? 』

「はい? 」『は? 』


 気づけば妙に静かな気がします、恐る恐る扉を開くと目の前に餓鬼の水死体が倒れていました。

間違っていませんよ、倒れている物の怪の地面は濡れており、口から水が溢れています。まさに地上で溺死したと表現するのが正しいですね。


『もしかしてまだおる? 』

「い、いえ……周囲、というよりこの地区に物の怪の気配は感じられません」

『あ~良かった、久しぶりやさかい、上手く加減できんくてなぁ。おっかなびっくり試してみたんよ。おかげで分けてもらった霊力がすっからかんや』

『相変わらずだな、水那斬。……敵がいないならサッサと戻るぞ、いつ増援が来るか分らん』

『華ちゃんも固いなぁ、気軽に"水ちゃん"って呼んでええよぉ』

『誰が呼ぶか! それに俺は――』


 華ちゃんが弄ばれている……まるで水の様な方ですね、掴みどころが無くて、いつの間にか会話の流れを自分に合わせている感じがします。しかし思わぬところで心強い仲間が増えました、これで村の奪還も少しは楽になるかもしれません。


 二人を落ち着かせた後長屋地区の分社を活性化させて結界を張り、神社へと戻りました。まずは玄内さんからこの霊刀について聞かないといけませんね。


 皆さんお久しぶりです、作者のKUMAです。

 7月末に大雨が降り、近くの川の水位がとんでもない事になりました。正確なメーター数は分りませんが道路の一部が冠水してましたね……いやぁ自然はおっかないです。


 さてさて、今回のお話は武器の調達でしたが、ここにきて新たな霊刀が出てきました。過去に一度玄内が使っています、たしか顔盗りを相手にした時だったかな? 与作の姿になっていた物の怪をブスリと一刺しで倒したんですが、それでその霊刀が持っていた霊力は完全に尽きてしまいました。

 今回の話でマコトから半ば強引に霊力を分けてもらい、再度覚醒したんですけど……相当マイペースな人です。水の力を宿す霊刀ですが、今のマコトに上手く扱えるかは作者でも予想できません。華ちゃんの時も相当訓練してたからね、ぶっつけ本番になりますが……まぁ何とかなるでしょう。


今回の後書きはこれぐらいで失礼します。

それではまた次回に、ではでは~



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 誤字羅「ぎゃおーす!」 >「なりゃ取り戻せば良いだけの話だろう、武器が欲しけりゃ頑張りな」 ”なりゃ”ってなんすか?w [一言] 霊刀がもう一本w 玄内さんなにもんや(^^;
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