第55話 シズクさん救出!
さてさて、目的地であるクロ達の宿……【つくよみ】が見えてきました。ですが流石に守りが堅い、入り口には餓鬼が四体まとまってます。この通りを見渡すように上手く配置している辺りを考えると、敵の頭領は中々できる方の様ですね。表からの侵入は無理そうですし、裏に回ってみましょう。
「……これなら何とかなりそう」
裏口には餓鬼が一体のみ、しかも床に散らばった米粒を食べるのに夢中になっています。
どうやら積まれていた米俵を破いたみたいですね、そんな悪い事をする人にはお仕置きしちゃいますよ。でも騒がれると色々と面倒な事になりそうなので慎重に行きます。
「……」
『米、ウメェ……全部、喰う』
いや、一人でその量を食べるのは無理でしょう。
思わずツッコミを入れたくなりましたが、グッと我慢しました。
しかしその甲斐もあってか十分に近付く事は出来ました、後はタイミングですが……顔を上げる気配は微塵も感じられません。
いくらなんでも食べる事に集中しすぎです、もっと警戒とかしないのかな? ……フム、では壁でも軽く叩いて誘い出してみましょう。
トントンッ
『ンギャ? 誰カ居ルノカ? 』
よし、気付いてくれました。
物陰の様子を伺いながらもこちらに近づいてきてくれてます、もう少し……あと一歩――
『気ノセイ――』
「残念、気のせいじゃないんですよ」
口と目を覆うように火のお札を二枚貼り付けました。
相手は叫ぶこともできずに燃え上がり、そのまま力尽きました……お札自体が効果を失ってから消滅するタイプなので意外に暗殺とかできるんです。
よく考えてみると惨い方法だったかな? でも、私も村人を助けるために動いている立場……手段を考えてはいられません。
安全を確認したらさっそく宿への潜入を始めましょう、此処からが本番です。
※※※
……宿の中は不気味なほど静かです、そしてしてやられましたよ。
裏口から入った瞬間に退路を塞がれてしまいました、出口が禍々しい光で閉じられてると言えばわかりますかね? 触るとバチって静電気が走る様な感覚がします。
やはり仲間を助けに来ることは相手も分っているみたいです、おそらく此処を守っている頭領を倒さないと出られないのでしょう。
「外からは、入れないよね? たぶん……」
不安を感じながらも内部を進んでいきます、今のところ餓鬼は一体も見かけていません。
途中正面の入り口前を通りましたが、裏口と同じように禍々しい光で閉じられています。
あ、餓鬼達が外からバンバン叩いてます、どうやら中には入れないみたいだね。
増援の心配はないと……一応温泉も覗いてみましたが、普通にお湯が張ってありました。
ん~、霊力を感じますし、物の怪も入るのかと思いましたがそうではないのですね。おそらく浄化の作用があるからでしょう、今後は避難または休憩できる場所として覚えておこう。
「よし、二階に行きましょう」
通路の途中に階段があります、二階に進むにはここを通るしかありません。罠等に警戒しながら登りましたが、そのようなモノは仕掛けられてなかったです。
そして二階に上った瞬間に一気に空気が重くなりました、そろそろ身体に溜まった瘴気を中和しておきましょう。いざという時に動けなくなると困りますからね。
自分の身体に手を当てて意識を集中させると、手のひらから温かな光が溢れてきます、いつも治療を行う時と同じ感じですが、瘴気の濃い中で行うと身体が軽くなっていくのをより強く感じられます。
……とりあえず中和はこれで十分、敵地の中でジッとし続けるのは危険ですし、そろそろ動きましょう。
各部屋の襖を少しだけ開けて内部を調べていきます、きっと何処かにシズクさんが囚われている筈です。
「此処は……大広間ですね、もしかしたら――」
シロ達から聞いた話ではこの大広間は裕福な人が泊る為の部屋らしいです、仮に見張るとすればこのように大きな部屋が使われるのかもしれません。チラッと覗いてみましょう。
「……いた」
予想通り、部屋の中央には木材の檻に囚われたシズクさんがいました。瘴気の中という事もあってグッタリとしてます……早急に助けないと危険ですね。彼女も弱る前だったら自力で脱出も出来たのかもしれませんが、檻に張られている不気味なお札が気になります。もしかしたら私の使う”結界の札”の様な効果があるのかもしれません。
そして、弱った彼女を監視するように目の前には他の個体よりもはるかに身体の大きな餓鬼が居座っています。
ふむ、遠目から見ても分ります、私よりも大きい……アレだと空から落ちてきても耐えられそうですね。痩せ細った手足、ポッコリとでたお腹、落ち武者風の髪型は同じですが、より特徴的なのは頭部に生えた二本角。明らかに別格ですし、此処を任せられた物の怪なのでしょう。
「さすがに暗殺は出来そうにないですね、あまりやりたくないけど……」
スパァンッ
勢いよく襖を開けて餓鬼に向けて突貫です。
途中お札を投げつけ、相手の身体に複数枚貼りつけましょう。
『奇襲、カッ! ウゲェッ?! 』
手持ちの火の札をありったけ貼りつけてやりましたとも、一瞬で相手は火だるまに……なるはずでしたが、火に勢いが出ない。瘴気の影響なのかな? でも普通の餓鬼は一瞬で燃え上がってたし、やはり格が違うという事なんでしょう。
「火傷くらいは付けれたはず! 」
『イギッ、オ前許サナイ! 頭カラ喰ッテヤル! 』
両手を広げながら迫りくる大餓鬼。
いやぁ懐かしいなぁ、前回も言ったかもしれませんが、私が一番最初に戦った物の怪ですもん。あの時はどうやって倒したんだっけ……そうだ、式神さんを呼び出して対応したんだったね。
「おっと、危ないなぁもう」
身を屈めながら相手の脇を通り抜けました、あのまま立っていたら本当に頭からガブリと食べられてしまう所でした。さて戦況を分析しましょう、考えられる相手の攻撃方法は鋭利な爪による引っかき、拘束しての噛みつき、そしてあの体格を活かした突進や踏みつぶし……くらいかな。
あ、今私のキャラじゃないって思いましたね? 華ちゃんとの修業の内容にあったんですよ、相手は式神さんでしたが様々な武器を持っていて、それに対応した動きで回避したり反撃したりと……何回も失敗を繰り返しました。でもそのおかげもあって今があります、一人でもある程度は戦えるようになったんですよ。
『動クナッ! 』
「わ、わわわ……」
今度は両手を振り回しながら接近してきました、両腕での単調な攻撃に見えますが相手は手を開いて面積を広げています。実際に受けてみると回避が大変なんですよ……痛ッ、語りをやっている間にかすってしまいました。
一度大きく距離を取ってお札を――
『待テェッ! 』
むぅ、せっかちさんですね。
その進路上の畳に貼ったお札が目に入っていないのでしょうか?
十分に引き付けてお札を起動、すると大餓鬼に向けて突き出すように石柱が飛び出します。
当然不意を突かれた相手は減速する事も間に合わず、伸び切る前の石柱へぶつかりました。
『ブゲェッ?! 』
石柱は斜め前方にどんどん伸びていき、遂には壁を貫通……せずに禍々しい光の壁で止まってしまいました。
でも大餓鬼の身体を押し潰さんと言わんばかりにメキメキと音を立てながら伸びようとしています、大餓鬼はそのとてつもない痛みに悶え、苦しんでいますね。手で押し返そうとしてますがそれは流石に無理でしょう。
『ウギ、ウギギ……』
「苦しませるのも酷ですね……ごめんなさいッ」
『ギェ――』
お札に霊力を流し込むと石柱は大餓鬼の身体を押し潰してしまいました。
やはり物理は強いですね、このぐらいの大きさだったら石柱も押し負ける事はないみたいです。
さて、脅威が去ると宿を覆っていた光の壁も消えました。
これからシズクさんを捕らえている結界を解除しようと思って近づいたのですが、原因であろう禍々しいお札に触るだけでバチンッと電流の様なモノが流れます。指先から黒い煙が……ちょっとした火傷ですね、治療しながら調べましょうか。
「イチチ、これは……呪いの一種なのかな? 」
霊力との対になる存在の瘴気に属するモノと言えば大体が呪いなんです。以前シロから聞いた覚えがあります。呪いによって発生する症状は傷や病気の悪化・治りの遅延、原因不明の様々な障害……視界や聴力、味覚、あとは歩行障害などがありますね。
そういった方々に瘴気の治療を行った際に病気の部位から黒い靄のようなものが出たんですよ。すると患者さんの顔色はたちまち良くなり、普通の生活を送れるようになったんです、後々あれは呪いの類だったと教えてもらいました。
「試してみましょうか」
お札に両手をかざし、霊力を流し込みます。
すると力同士が反発するかのように、バチバチと火花の様なモノが発生……当たりなのかな? お、お札が徐々に塵となって消えていきます。よし、では檻全体を覆うようにしてみましょう。
バチバチバチッ!
おおっと……貼りつけられているお札全てと反発してますね、中にいるシズクさんには大きな影響を与えてはいないようです。全てのお札が消滅すると、囲っていた木の檻に触れるようになりました。
此処で解放するのも考えましたが、敵地の真ん中でゆっくりしている場合では……と言う事で式神さんを召喚し、檻事担いでもらいながら神社まで引き上げる事にしました。
とりあえず、シズクさんの救出完了です。お札等を補給して次の地区を解放しに行こうとした時に華ちゃんたちから引き止められました。どうやら潜入の様子をハラハラしながらも見ていたようです、近接面でかなり不安を覚えたらしく、クロか華ちゃんを同行させる事を強く勧められました。
でもなぁ……此処の守りを疎かにしたくないんですよね、自宅で休みながら悩んでいると突然扉が開かれました。そこに立っていたのはヒノモト村の唯一の医師、玄内さんでした。
6月があっという間に過ぎました……ど~も、KUMAです。
月の後半からジメジメとし始め、頭痛との闘いの日々が続いておりました。
冷房をつけないと蒸し暑く、つけると寒い……ふぅむ、体調管理が大変ですね。
さて今回はシズクの救出編となっておりましたが、成長したマコトにとって多少大きな餓鬼では相手にならないという事が分かりました。いやぁ、自作で生み出したキャラの成長と言うのは嬉しいモノですね。
厄介なお札によって衰弱状態となってしまったシズクですが、マコトの治療によって回復し、神社の防衛に加わりますのでご安心ください。……何故か復活した彼女が興奮状態なのは作者も不明です。
最後に玄内も出しましたが、どうやらマコトに何かを伝えようとしていましたが、それは次回に分るのでお楽しみに。
今回の後書きはこのあたりで終了です、また次回にお会いしましょう……ではでは~




