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土地神ライフ  作者: KUMA
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第39話 身体を蝕む妖刀

~温泉宿 つくよみ~


温泉宿 つくよみには、神界の医師一寸が看護師を複数人連れて来訪していた。

しかし皆慌ただしく動き回っている。布やお湯、または氷等々……村中から治療に必要なモノを集めているようだ。

一寸がいるのは宿の大広間、その中央にはマコトがいた。


「ふぅ……ふぅ……」


布団の上に横たわる彼女は呼吸が荒くなっていた、どうやら一寸が到着する前に様態が急変したらしい。

一寸は看護師たちと共に霊体に次々と空く穴を塞いでいるようだが―――


「クッ……速すぎる! 縫合霊糸ッ! あと熱した霊布を追加だ! 」

「ハイッ! 」

「汗! 治療に集中できんッ、何やってんの!!」

「す、すみませんッ」


その中にはシロとクロだけでなく枯狸、シズク、玄内……外には、八頭オロチ、スサノ、璃狐、もいる。

神使の二人は霊力の供給、オロチとスサノ、璃狐、枯狸の四人は物の怪への対応、シズクは氷の量産、玄内は薬草の選別と加工……それぞれマコトの治療へ協力しているようだ。


「―――見つけた! 霊体を食い荒らしてる奴が居たぞ! 」


霊体へ巣食う者を見つけた一寸は目にも止まらない速度で縫合霊糸を奔らせる。

動きが止まった事により、その姿がハッキリと分かる……獣の牙に似た刀身、その正体は彼女が戦った妖刀であった。傷を負わせた際に自身の力の一部をマコトの霊体へ侵入させていたらしい。


『ミギィィィィィィッ! 』

「簡単には……斬らせん! シロ、クロ! 出番だ!」

「応ッ! 」「了解です! 」


神使の二人に光が宿るとマコトの身体の中へと消えていってしまう。

どうやら自身を霊体と化して内部から治療を行うようだ。


「アタシも行くのーーーッ! 」


何処からともなく現れたスサノも同様にマコトの身体へと入って行った。

八頭は一人での対応になるが問題は無いだろう、彼女も八岐大蛇となり迫りくる物の怪の集団からヒノモト村を守ってくれるらしい



おぼろげな意識の中、マコトの瞳に微かに映った光景。

慌ただしく人の中にただ一人。自身の手を握る者がいた。

小さいが温かな手……黒髪の少女が心配そうにマコトの顔を見つめていた。


「だ……れ…………?」


村の中で見た事もない少女、しかし皆はその存在に気づいていない様子だった。



             ※※※



~閉じられた霊体~


「サッサと終わらせるぞ、クロ」

「うん。マコト様を苦しめる物の怪……神喰(かみぐい)、覚悟! 」


既に霊体の一部は切除され、切り口も縫合されている。

さらに一寸の技によって動きを制限され、神喰はマコトの霊体への移動は不可能となっている。


しかし縛られているとはいえ動きは十分に速い、普通の人間や妖怪であれば太刀打ちは出来ないだろう。

シロとクロが武器を構えると、神喰は形態を変化させる……黒い靄が晴れると身体に複数の刃の生えた獣が出現した。


『ギ……ギギ』


「刀のクセに変化を覚えたか、そしてそれが狼の姿とは趣味が悪い」

「シロ、それって真神師匠の悪口かい? 」

「……パッと思い浮かんでな、アチキがへばってる時に出すあの表情とそっくりだ」


『ギァッ! グワゼロォォォォォォッ!! 』


身体に生えた刀と金属質の毛を軋ませながら雄たけびをあげる。

距離は離れていたがシロは手の甲、クロは頬に傷を受けた。


「ッ?! 」

「この距離で……かまいたちか」


神喰は刃を両脇に展開し、二人目がけて駆け寄って来る。

シロは迎撃として霊力の刃を数発放つが相手は身体を捻じり、回転しながら前進。

彼女の霊力を巻き込み、威力を数段上げた斬撃を放ってきた。


「コイツ……! 」

「危ない! 」


クロは咄嗟に前に出て防御壁を形成するも、一時的な足止めにしかならなかった。

ひびが入ると同時に突破され、すれ違いざまに真空刃が発生……二人へ無数の刃が襲い掛かって来る。


「グゥゥゥゥッ!? 」

「シロッ、こ、このままじゃ……」


神喰は二人を囲うように移動を繰り返しており、その度真空刃を発生させていた。

この風の檻でじっくりと弱らせるつもりらしい……相手を閉じ込めたと思っていたが、実際閉じ込められたのはシロとクロなのかもしれない。


徐々に壁は狭まってきている、二人も背を合わせながら策を練るが何も思い浮かばないでいた。


『喰ッテヤルゾォォォォォォッ!! 』


大口を開けながらシロの真横から獣が迫りくる。

武器を構えようとするが風に阻まれ、薙刀は吹き飛ばされてしまう。



ズドンッ



「たぁぁぁぁぁぁぁッ!! 」

『グゲェッ?! 』


突如目の前にいた神喰いの姿が消えた。上から何かが降ってきて押し潰されたようだが……砂煙が晴れると、神喰いの上に七支刀を突き立てる少女がいた。

宿の仕事着をたすき掛けし、頭部には手ぬぐいを巻いている。ボリュームのあるクセ毛は入りきらない為、後ろで髷のようにまとめ、手ぬぐいの隙間から出していた。


「やっとみつけた~。シロ、クロ……お待たせ! 」


「す……」

「「スサノ(様)?!」」


シロとクロは驚きを隠せていなかった、まさかスサノが戦闘に参加するなど微塵にも想定していなかった事……スサノは七支刀を引き抜くと二人の元へと合流する。


「もぉ~! どんどん先に行っちゃうんだもん、迷っちゃったよ~」

「も、申し訳ありません……まさかスサノ様が来られているとは―――」

「何を考えてるんだ、この馬鹿者! お前は今、力を制限されてるんだぞ!? 万が一があったら……」

「だって! いつもアタシだけ力になれてないんだもん! もう見ているだけはイヤなの!! 」


怒鳴られても泣かずに反論するスサノ、彼女の思いを感じ取ったシロは数秒考える。

その間、神喰が微かに動いたことを見逃してはいなかった。そしてスサノに対して問いかける。


「絶対に無理をするんじゃないぞ、陽光様に怒られるのはアチキ達なんだからな」

「僕とシロが相手の注意を引きます、スサノ様はあまり前には―――」

「よぉ~し! シロッ、クロッ! いっくよぉ~! 」


身の丈を軽く超える七支刀を片手で上げながら神喰へと向かっていくスサノ、クロは慌てて後を追いかけた。シロも軽くため息をついた後に武器を持ち直してその場から駆け出す。


神喰は既に立ち上がっている、背中から血は出ているが傷自体はもう塞がっているようだ。

天を仰ぎ雄たけびを上げようとした時―――


「その口を……閉じろぉッ! 」

『ギァ……ガァフっ?! ゴモォッ!! 』


クロは複数枚のお札を投げつけると、次々と貼り付いていき神喰の口を塞ぐ。

使用したお札は焔の札……刀の切っ先を相手に向け、霊力の弾を放つ。


『ガァッ?! ギィィィィィッ?! 』

「どうだ熱いだろう、ありったけの焔の札だ! 」


全身を炎に包まれ、身体を焼かれる神喰。

相手は獣と金属の性質を得たからか効果は抜群の様だ、炎の隙間から真っ赤に赤熱した神喰の姿が見える。


「さて、では次はアチキだ。熱した金属を急に冷したらどうなると思う? 」

『グググ……グァァァッ! ウ、五月蠅イ! コノママ喰ッテヤル! 』

「あ~あ、もっと周りをよく見るんだな。……と言ってももう遅いか」


炎を振り払って突撃してくる相手に忠告するシロ。

彼女の足元には”落水(らくすい)”と書かれたお札が張り付けられている。目の前に大きな円を描くように複数枚設置され、神喰はその中央で立ち止まってしまう。

薙刀で突き刺すと次々と光を放ち、お札が起動する。


光は神喰の真上に集中すると、そこから勢いよく水が噴き出してきた。



ボシュゥゥゥゥゥゥゥッ!



赤熱するほど熱せられた身体を急激に冷やされた事により、その金属質の身体に亀裂が入った。

遂にはその場から動く事もままならず、身体を軋ませている。


『ギァ……ギギギッ』

「エイッ! 」


真上からスサノが七支刀を振り下ろし神喰を一閃……ボロボロと身体が崩れていき、その場に塵となった鉄の山が出来上がる。


終わったかのように思えたが今度は塵が宙に舞い、刀の形状となった。


「なんだまだ生きているのか、しつこいぞ」

「でも塵になったら僕達も斬れない、これじゃまた一方的に―――」

「じゃぁこれで最後! いっくよ~、封印の勾玉!! 」


スサノの手から銀色の球が投げられる、すると2つの勾玉に分かれ神喰の周囲を飛び始めた。

動きは徐々に早くなり、塵が中央付近に収束していく……


『ギィィィィッ?! マダッ! 我ハマダッ、喰イ足リヌゥゥゥゥッ!! 』

「五月蠅い、黙ってそのまま封印されてしまえ」

「あ、アハハ……心配なかった、みたいだね」

「えっへん! アタシもちゃんと戦えたでしょ? 」

「調子に乗るな、此処の霊力の影響もあるんだ。外でも同じとは限らん」


そう、切除されたが此処は仮にもマコトの霊体の一部。

気が付かないうちに身体能力や霊力も若干だが強化されていたらしい、スサノの場合は自身の縛りが緩んだため戦えていたという事だろう。


会話の区切りがついた辺りで、神喰は完全に勾玉へ吸収され、銀色の球となりスサノの手に戻って来る。

既にここには言葉通り、塵一つ残っていない。


「よし、終わったな。外に戻るとしよう」

「……待って、僕達神喰から傷を受けたけど大丈夫なのかな? 」

「主殿と違って直接斬られたわけではない、気になるなら自分で探ってみればいいだろう」


クロは目をつむり意識を集中させると自身の身体を調べ始めた、違和感や異物が入り込んだ形跡はない。もちろんシロも同じだ、妖刀 神喰は完全に封印されたという事だろう。


ちなみに八頭に関してだが、マコトと同じように傷を受けている。

しかし彼女も神、侵入した瘴気は一瞬にして浄化してしまったようだ。


「ねぇ! 早く出ようよ! 」

「ハイハイ、分かったから落ち着け。……クロ」

「うん、大丈夫。行こうか」



無事マコトの身体を蝕む神喰を浄化した三人は霊体から脱出した。

外に出た際、彼女の様子を伺うと状態は安定し始めたらしい。呼吸、脈拍、霊体の状態等々……一寸たちによって安全圏内である事は確認が取れた。


そして八頭からも連絡があった、迫りくる物の怪の集団も撤退を始めたらしい。

同伴していた璃狐と枯狸からも村の被害は無いと連絡を受け、ようやく三人も安堵の息を吐いた。



ど~も、更新を忘れかけたKUMAです。

二月は短いって事をスッカリ頭から抜けていました……危ない危ない。


今回はマコトがいきなり重症のところから始まりました。

まぁ妖刀と戦ってなんでもなかった、と言う方が無理があるというモノ。


そしてなんとスサノが戦闘に参戦! 普段は力のほとんどを制限されている状態の彼女ですが、今回はその制限が一部外れたことでマコトの霊体へ入れるようになりました。……え? 制限を解除したのは誰かって? そりゃ八頭オロチさんですよ、一応彼女はスサノの教育担当だからね。ここぞという時限定で解除できるようにはなっているのです……色々とチート性能なのよ、スサノは。


……あ、そうそう、お別れの前にもう一つ。おかげさまで本作品も四年目に突入です! 本当は2月14日なんですけどね、お仕事忙しくてできなかったの。それでも頑張って絵を描いてみました、メインの3人が集合したところです。個人的にはマコトの笑顔が最高です(*´ω`)


挿絵(By みてみん)




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