第38話 人間になっちゃった?!
~ヒノモト村 神社~
「ん……そろそろ…………起きないと」
おはようございます。
此方の季節は冬ですが、雪の量はそこまで多くはありません。お布団から出るのはとても辛いのですが、早くしないと華ちゃんから怒られるので頑張らないと。
「寒い寒い……」
季節が変わるにつれて気温が下がってくると、火のお札を枕元に置くようになるんですよ。
布団をかぶりながら移動して囲炉裏へ薪を補充し、そのお札を投下すれば徐々に暖かくなってきます。
……そう言えば華ちゃんが出てきませんね、刀も出した覚えはないのですが布団の近くに置かれています。
「ふぁ……はふ、暖かいなぁ。華ちゃん? もしかしてお寝坊さんですか? 」
『…………』
「ん~? 」
刀を抜いて話しかけても返答はありません、ましてや姿も現さない……怒らせちゃったかな?
とりあえずは身体も温まってきたし、準備運動をしたら華ちゃんから言われている訓練でもやってしまいましょう。
~神様自主練中~
「98……99……っと、これで100! 素振り100回、3セット終わりぃッ!! 」
外には足首付近まで雪が積もっていたので家と鳥居前の通路を雪掻きしました、いやぁ雪国で育ってて良かったです。カジバラさんから雪掻き用のスコップとスノーダンプっぽいモノを作ってもらって正解でしたよ。その後は見回りも兼ねて村をグルッと走り、鳥居前の石段をダダダっと駆け、柔軟の後に素振りを少々……華ちゃん曰く”まだまだ序の口”らしいです。
「華ちゃん、いい加減出てきてくれませんか? 」
『…………』
「むぅ……これでは私が刀に話しかけるただの痛い人じゃないですか、何か悪い事したかな? 」
走っている最中も話しかけていたのですが全くの無反応。
しかし何なのでしょうか? 起きてお札を使った辺りから身体がいつもより重く感じます……ま、まさか―――
「もしかして最近食べ過ぎて……? 昨日調子に乗って夜中にお餅を2個食べたのが……そもそも神様って太るのかな?」
それでも華ちゃんは反応してくれません、なんだか空しくなってきましたし2回目の見回りにでも行きましょう。……べ、別に体重の事を気にしているわけではありませんよ? 軽く走りながら皆さんに挨拶しに行くんです。日課ですよ、日課。
※※※
~ヒノモト村にて~
【ヒソヒソ……ヒソヒソ……】
「ん~? 」
どうしたのでしょう……今日は村の皆さんの視線が刺さってきます、気になって振り替えると視線を外してきます。さすがの私でも不快に感じます……でも挨拶は欠かしません。一日のはじまりですからね、いつも通りに行きましょう。
「おはようございます」
「……」「……」「……」
「お、おはよう……ございます」
……なんでしょうかこの疎外感。私何かしたのでしょうか? 全く身に覚えがないのですが……まさか物の怪が? でも瘴気なんて感じなかったしなぁ、とりあえずシロとクロに相談してみよう。
そうと決まれば宿にむけて出発しましょう、もちろん駆け足ですよ~。
「なぁ……あの娘っ子、誰だ」
「オラも分んねぇだぁよ、お前ぇさんは?」
ある村人の問いかけに対して、その場に居た村人は全員首を横に振っていた……
※※※
~温泉宿 つくよみ~
「おはようございま~すッ、シロ~? クロ~? 」
さすがに朝なので声量は程々に……二人の名前を呼ぶと、大広間の方からクロの返事が聞こえてきました。
どうやらお客さんが朝食を終えた後に部屋の掃除していたようです。元気な声ですねぇ、さすがクロ。
シロにも見習ってもらいたいのですが―――
「んぁ~……んむむ。……朝からどうした、主ど……の? 」
「お待たせしました! マコト様、どうかしました……ん? 」
「……? 私に何かついてますか、二人とも? 」
シロは寝起きでしたか……でも、まさか二人からも同じような反応をされるとは思いませんでした。
やはり物の怪の仕業なのでしょうか?
「貴女は―――」
「お前、誰だ。なぜその刀を持っている? 」
「え……? 」
眠たげな顔をしていたシロは急にキリッとしました。
衣服が乱れているのがちょっと残念だけど……なにやら真面目モードのようです。
クロは慌てた様子で間に入ってきました。
「し、シロ、落ち着いて。……お客様申し訳ありません、腰に差されている刀を見せてはいただけませんか? 」
「く、クロまで……? ホントに分からないの? 私ですッ、マコトですよ! 」
「そうは言ってもだな、その髪色、何よりも主殿特有の霊力を全く感じられんのだ」
髪色……? たしかに土地神になってから黒ではなく紺色に近くなりましたが―――
「まさか鏡を見てないのか? ちょっと待ってろ……」
「ちょっとシロ?! 全く何を―――」
「待たせた、ホレ。自分の髪を見てみろ」
「え、えええっ?! ま、真っ黒だ……何で? 何があったの? 」
「……クロ、犬の状態になってにおいを嗅いでみろ。言っとくが、霊力ではないぞ?」
「わ、分かったよぉ。お客様、失礼しますね? 」
クロはその場で一回転すると黒の柴犬の姿へと変化しました。
近づいてくるとスンスンと鼻で匂いを嗅いできます……なんだろう、この感じ。
『……! マコト、様? うん、マコト様の匂いだよ、シロ! 』
「フム……クロの鼻に免じて、とりあえずは主殿(仮)と言う事にしておこう」
『(仮)って……本物だよ、間違いない。そして申し訳ありませんマコト様』
ボフンという音と共に黒柴が白い煙に包まれ、一瞬ではれると中から土下座をしたクロが現れました。
この姿勢久しぶりに見たよ、たしか一番最初に会った時以来かな?
「フフ、冗談だ。で、それよりも一体どうしたのだその姿は? 」
「わ、私も今知ったばかりなので何とも……そっかぁ、だから村の人達はあんな反応だったのか」
「僕も初めて見た症状ですね、華さんは見えますか? 」
『火華と呼べと言ったろう、犬ッころ』※マコトには聞こえません
「ううん、朝から聞こえない。クロ達には見えるんだよね?」
「見えてる、主殿の後ろで怒りの表情を浮かべながら腕組みしている」
振り向きますが後ろには宿の暖簾があるだけ……気配すら感じません。
二人の予測では霊的な力が失われているようです、ようするに今の私はただの人間の状態、The一般人です。神界にも行けないとなると一寸さんからも診てもらえませんし……困りましたねぇ。
「ほかに何か心当たりはあるか、主殿? 」
「ん~……これといって特には―――あ」
「何かあったんですか? 」
「朝はお札が使えたんですッ、囲炉裏に火を点けました! 」
『この阿呆、俺が火種として点火させただけだ』
「「……」」
なにやら二人から残念そうな子を見るような視線が刺さってきます。
ほんとだもん、火が点いたんだもん! ボゥッて囲炉裏に!
「さて、クロ。アチキは主殿の身体から霊力が漏れていると考えるが……」
「僕も同じかな、最近会った騒ぎで傷を受けてそこから? 」
『……そういえば八頭と一緒に妖刀と戦ったな、最後は霊力を過剰に吸わせて―――』
「「それだッ!! 」」
「ひゃッ?! 」
いきなり大きな声を出さないでください、たぶん華ちゃんが何か言ったのでしょうけど驚きます。
シロとクロから宿の浴衣と風呂道具一式を渡されると、そのまま宿内にある風呂場前まで連行されました。
「霊的な傷だとしたら早々に治さなければなりせん、手遅れでなければ良いのですが……」
「え、身体と同じで自然に治るんじゃ―――」
「いや、そう簡単には治らない」
「え……? 」
二人の表情はとても暗いです、場の雰囲気も重くなりました。
「霊気の吸収と言うのはかなり荒々しい行為だ、身体には気だるさしか伝わらないが霊体には大きな傷ができる。ましてや妖刀からの傷だぞ? 怨念、恨み、妬み……そう言ったモノが含まれている分厄介だ」
「今のマコト様は大きな穴の空いた財布のような状態、穴が大きすぎる故に自然治癒が間に合っていないのでしょう」
「じゃ、じゃあどうすれば……! 」
シロはクロへ神界へ行くように指示を出しました。
どうやら彼が一寸さんを此処まで連れてきてくれるようです。
「よし、では主殿には風呂に入ってもらう」
「……お風呂? 」
「”湯治”というやつだ。一応は霊脈を利用して霊石からお湯を沸かしているからな、応急処置位にはなるだろう」
「暫くここに通えば良いの? 」
「いや、寝泊りも此処でしてもらう。神社の仕事等はアチキ達が行う」
ドドドドドドッ!
何やら浴場の外が騒がしいですね……誰かが全速力で走っているようです。
一瞬、八頭さんの声も聞こえた気がしました。
「おねぇ~ちゃ~んッ! 」
「す、スサノ様……お待ち、くだ……さいッ」
「スサノさん、それに八頭さん? 」
入ってきたのはこのお風呂場を担当されている二人でした。
受付に掃除、替えの浴衣や手ぬぐい、飲み物等の準備、それぞれ分担して頑張っているようです。
スサノさんは服を脱いで、大きめの手ぬぐいを身体に巻いてます。一方八頭さんは仕事着のまま……何があったのかな?
「……仕事はどうした? 」
「すみませんシロさん、止めたんですけど”どうしても手伝う”と聞かなくて……」
「スサノもおねえちゃんの”とうじ”を手伝う! 」
う~ん……ちょっと泣きそうになっちゃった。どうやら神界に行く前のクロから大まかに話を聞いたらしい。
でも湯治で手伝うような事って無い気もするんだけど。
「フム、では新しい風呂でも作ってもらうか。湯治用の風呂をな、まずは服を着―――」
「わかった!!」
ドドドドドドッ!
「きてきた!! 」
「では八頭、スサノと一緒に此処辺りに頼む」
「分かりました、建築用の式神と材料を用意しますね」
スサノさんは大工さんの様な格好に早変わり、八頭さんもテキパキと準備を始めました。
八頭さんの出した光の中からは格の高い式神さんと建材が次々と出てきます。
「主殿はとりあえずこっちの湯にでも浸かっていてくれ、アチキは霊石を湯治用に調整をする。多少は効果はあるさね」
「あ、ありがとうシロ」
「主殿あってのヒノモト村だからな、アチキもクロも……もちろんこの二人も失いたくはないと思っている。サッサと治してしまおう」
シロって基本面倒くさがりだけどちゃんと色々考えてくれているんだね、少し印象変わったかも。
私は言われたとおりに治療に専念しないと……しっかり肩までつかりましょう。
「ふぅ……温かい、やはり温泉は良いですねぇ」
あっという間に2月!
……とはいうもののやはり1月は長く感じました、正月休み明けだからなのかな?
ど~も、KUMAです。
今回はなんとマコトが人間に、ん~……限りなく人間に近い状態になってしまったというお話でした。
村人たちも彼女が”土地神 マコト”であるのか疑心暗鬼となっており、まともに会話もできません。
もし彼女が甘味処へ行っていた場合は土地神を騙る者と認識され、おばちゃんからお仕置きされていました……内容は伏せておきます、ご自由に想像してみてください。
現実もバタバタと忙しくはなってきましたが、マイペースに進めていきたいと思っております。
自分の時間、大事。うん、ホント大事。
というわけで、今回の後書きはここまで!
また次の機会にお会いしましょう、ではでは~




