第35話 完成、おや? 刀霊の様子が……?
ふぅ……休暇も終わって、無事此方の世界に戻ってきました。
ど~もお久しぶりです、マコトです。
とは言っても本当に今帰って来たばかりなので本殿にいるのですが……外が何やら賑やかですね。
今月はお祭り事の予定なんてなかったはず、何を叩いているんでしょうか?
カンッ……カンッ……ジュゥッ…………
「金属音……最後のは水が蒸発する音? 」
とりあえず外に出てみましょう。
今のところ物ノ怪の気配もないみたいですし、危険はないでしょう。
クロ達が頑張ってくれたのかな……お土産買っておいて良かった、神界で買った饅頭だけどね。
……だって陽光さんから”現世の土産は持ち込みできん、世界のバランスがおかしくなる。此処の饅頭にしとけ”って言われたんだもん。
せっかく買ったお土産達は陽光さんや他お世話になった方々に配ってきました。
※※※
「イカァァァァァンッ!! 」
バギンッ……ドスッ
「ひぃッ?! 」
戸を開けた瞬間にお爺さんの大声と金属が折れる音、そして何か鋭いモノが床に突き刺さりました。
私は尻もちをついた後、そのまま後退……刺さってるのは折れた刀みたいですね。
語りでは冷静に状況を説明してますが、相当心拍数が上がっていますよ? 腰も抜けてます、立てません。
「おっとぉ……先に主殿が帰られてしまったか、仕方がない。おいカジバラ! 天目! 」
え、今度は何? そして誰なの、お爺さんも一つ目の……お嬢さんなのかな?
そしていきなり無言で土下座……待ってください、さすがに状況を理解できませんよ。
「申し訳ないッ! ワシはこの神社の霊刀を折ってしまった!! 」
「お師匠様と一緒に打ち直しています! 土地神様お願いです、もう暫くお時間を頂けないでしょうか!! 」
「え、えぇ……シロ? いったいコレは? 」
「フム、多少脅しが過ぎたようだな。実は―――」
ふむふむ、成程。私がいない間にそのような事件が起きていたのですね、そして二人の間辺りに浮いている幽霊みたいな方は刀の霊と……まぁちゃんと打ち直してくれるなら何も言いませんよ。
「それよりもシロ、二人に何を吹き込んだのですか? 」
「……さ、二人とも早く仕事に戻れ。主殿、アチキも宿に戻るので後は頼みます」
彼女はあっという間にその場から立ち去ってしまいました。
謎は残ったままですが、とりあえずは村の方たちに挨拶してこないと。
カジバラさんと天目さんは……作業に戻ってもらいますか、たぶんあの様子では急にいなくならないでしょう。
~帰宅報告後 神社にて~
境内には金属を叩く音が聞こえている……私は結構好きな音なんですよねェ、こう”何かを作り出してる”という感じがしてワクワクしてくるんですよ。
バギンッ
あ、カジバラさんがまた折った。
……天目さんが何度打っても鈍らになってしまうと言うのも不思議ですよね、いない間に相当腕も上がったと聞いてますが霊刀作りを始めた途端にガクッと調子が下がるらしいです。
幽霊さん、そう言えば名前を聞きました。
刀の銘は火華と言うそうです、振るうと炎が発生し散る際に花が散っているように見える事からそのように名付けられたとの事。”花”ではなく”華”なのはその美しさからだそうです、見た目は無精ひげを蓄えた浪人何だけどなぁ……ちなみに彼は天目さんの作った刀に緊急避難していますよ。
「人は見かけによらないのかなぁ」
『ん? 何か言ったか嬢ちゃん』
「いえいえ、それよりも―――」
『カジバラか? あの爺さんは―――』
「いや、天目さんです。カジバラさんは何も問題はないですよ、たしかに厳しい方ですがね。まぁ一通りの作業を見て……こう彼女が何か隠し事をしている気がして」
これ本当ですよ? 現世のおじいちゃんも言ってました、”心の曇りはあらゆるもの事に影響してくる”と。
鈍らの刀……全く斬れないなら模造刀ですよね。悪く言えば偽物の刀、それを故意的に作り出しているって言うのは私が考え過ぎなのかな?
シロの話では一つ目の妖怪さんなのは間違いはないそうで、ただ私は彼女に対して妙な違和感を感じます。
合ってるんだけどなんか違う気が……そんな感覚。
『在り方……考え過ぎじゃないか? 』
「そうですかねぇ……ん? 」
カジバラさんが私を呼んでいるみたいです、上手くいったのかな?
とりあえずは行ってみましょう。
「さて、コレを」
「へ……わ、私が見るんですか? 」
「……今度ばかりはワシだけではな。素人からみてどうかを判断してもらいたい」
う、真直ぐ見ながら言われるとやらざるを得ないじゃないですか。
一応現世ではモノ作り業界にいたんだし、やるだけやってみましょう。
「刃の所以外は淡い朱色……綺麗な刀身ですね、少し試し切りしてみても? 」
「ああ構わん。今準備する」
竹に畳表を巻きつけたモノを立ててくれました。
両手で持ち中段に構える……数回深呼吸、準備が整うと私は踏み込みながら対象に振り下ろす。
斬り方は袈裟斬り。遅れて畳表には線が入り、斜めにずり落ちると切り口から炎が噴き出してきました。
「わッ……」
「完成か? 」
お二人もその様子に驚いていたようです、しかし……現実とは非情なモノ。
突如刀が鳴り始めました。キィーンと甲高い音が響き、全体が細かく振動しています。
刀身にヒビが入り、砕ける音と共に刀身が地面に落ちてしまいました。
「ッ?! な、なんで……」
「やはりか、さて土地神殿。振るってみてどうだった? 」
会心の出来だったからか天目さんはショックが大きいようです、でもカジバラさんは”やはり”と言ってますね。何か見抜いているのかな?
「う~ん、斬れてたんですけどねぇ。でも、そうですね……何かこう、騙された? 」
「ほぅ? 騙されたとな」
「一応霊刀なんですよね? でも私には普通の刀に無理やり力を送ったような感じがするんです」
「天目よ、お前には折れた理由が分かるか? 」
カジバラさんは天目さんに問い掛けました、しかし彼女は俯いたまま何も答えません。
無言で首を横に振ると、彼は静かに口を開きました。
「お主はいつまで自分を偽っておるのだ? そのような事をしていてはいつまでも霊刀は完成せんぞ」
「わ、私は偽ってなど―――」
「刀とは己を映す鏡でもある。持ち主はもちろんだが、それは刀を打った者を映す鏡でもある。それを自ら曇らせてしまってどうするのだ」
「折れたのは私が未熟だからであって―――」
「イカンッイカぁァァァァンッ! 未熟者であれば刀の形すら作れんッ!! 鈩 天目、お主は―――」
カジバラさんはある神様の名を言いながら天目さんを指さした。
その名は天目一箇神。たしか製鉄・鍛冶の神様だったかな?
「お主はその神が霊落した事で生まれた妖怪、一本たたらの一族じゃ。でなければ女子で鍛冶などできるはずがなかろうて」
「でもお師匠様は私を―――」
「弟子をとらなかったのはその必要がないと判断したからじゃ、そんな一族に教えるなど恐れ多くて二度とやりたくもないわい。コレが最後の材料、今度こそ成功させるぞ。天目」
「……ハイッ! 」
すると天目さんの姿に変化が……一つ目である事には変わりないのですが、2本の脚が徐々に交わり1本になってしまいました。カジバラさんと共に移動を始め、作業が再開されました。
カンッカンッカンッ……
鉄を叩く音にも若干の変化が……カジバラさんの掛け声にも勢いがついている気がします。
今度は上手くいくといいなぁ。
※※※
「で、出来ました! 」「完成じゃッ! 」
『嬢ちゃん、終わったみたいだぞ? 』
「ん、はいは~い。今行きますね」
お邪魔しない様に倉庫と神社の掃除をしていたんですがもう完成ですか。
火華さんの宿る刀を持って二人の元に向かいましょう。
あまり汚れてなくて良かったです、シロとクロが頑張ってくれたんですね。
「わぁ……」
『おぉ……コレは、期待できるのではないか? 』
「ワシが言うのもおかしいかもしれんが、最高傑作じゃ」
「お師匠様のおかげでとても打ちやすかったです、今度は大丈夫! ……なはずです」
先ほど振るった刀とは比べ物にならないほど神々しい雰囲気を感じます。
刀身は淡い光で覆われていて、直に見てわかるほど霊力が強いのが分かります。
手に持ってみると想像していたよりも軽いです、でも振るう分には支障がないほど。
『うぉ?! か、身体が引っ張れ―――』
言葉の途中で火華さんは新しい刀に吸い込まれてしまいました。
刀の纏っている霊力はさらに輝きを増し、周囲一帯を白い光で染めてしまいました。
光が治まると、目の前に別の人が浮いていた。無精髯の浪人風な火華さんとは違って紅い髪の女の子。
見た目は浪人、いや風来人? 縞合羽と三度笠を身に纏っていますが……どちら様で?
「えっと……もしかして貴女は―――」
『力が湧いてくる……おい爺さんッ、嬢ちゃん達! 成功だぞ!! 』
「……誰じゃお主は? 」
「……(パクパクパクパク)」
天目さんは言葉を失っているみたいですね、ん~言動から大体予想はつくのですが……性別が変わるかぁ。
そりゃあんなおじさんのような姿から美人さんに変われば皆驚くよね。
『コレが新しい俺の刀か……ん? な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁッ!?』
おっと本人が一番驚いてますね。まぁ誰も予想しなかった事ですから、コレばかりは仕方がない。
刀の銘が火華なら彼女の事は”華ちゃん”とでも呼びましょうか。
うん、そうしよう。その方が話しやすいしね
『まさか俺は―――』
「とりあえず無事完成ですね。 お二人共これからどうされます? 」
「お、おぉ。行く当てもないからまた旅に出るか、刀を折ったので言いにくいのだが、この村に住まわせてもらうか迷ってはいる。その霊刀の調整もあるしのぉ」
「……わ、私はお師匠様についていきますよ」
この後の話。
カジバラさんと天目さんは村に住む事となりました。必要かは分かりませんがいわゆる武器・防具のお店を開くそうです。村の方も最初は刀を折った事に怒っていましたが、それ以上に隠していた事を怒っていました。もちろんシロとクロも一緒に怒られてましたね。こっちの方は自業自得です、私も庇いようがありません。
『待てッ! 何やら終わりの雰囲気をしているがまさか―――』
今回はここで終わりです。
華ちゃんには新しい身体で私達と一緒に頑張ってもらいましょう。
最近めっきりと寒くなりましたね。
吹く風も冷たく、そろそろ冬がやって来るのかと思うと気が滅入ります。
ど~も、KUMAです。
いやぁ、刀が完成しましたね。
お話を考える中でカジバラが何十本折ったのでしょう……バッキンバッキンと、ついでに製作中のお話まで
バッキンと。心まで折りそうな勢いで折ってくれました、キャラが勝手に脳内で動くって言うと怖がられるのですが……そうなの?
ちなみに、完成した霊刀は色々と便利な力を秘めています。扱えるかどうかはマコト次第なのですが、みっちりと練習してもらう予定です。
マコト『えぇ……やだぁ…………(´・ω・`)』
そこ、面倒くさがらない。お話が進まなくなっちゃうから……さて、本人もやる気の様なので頑張ってもらいましょうかね。
今回はここまで、また次のお話でお会いしましょう。
ではでは~




