第30話 視られる土地神
「む~っ……やっと終わったぁ~」
今日は夜に物の怪が出現したと連絡が来たので緊急出動……相手は付喪神でした。
単体ではなく複数体、それでもって村内に転々と現れたので走り回りましたよ……そして今回の相手は道具が物の怪化したので討伐・回収後にお祓いのお仕事が残っています。
神社に戻ってきたのは良いのですが……
「誰かいます……? 」
お祓いの準備が終わったころの事でした。
背中に強烈な視線を感じたので振り向いてみましたが、神社しかありません。
私を誘拐したシズクさんとはまた質の違う視線なんですよ。あの人はこうネットリしたというか……いえ、何でもありません。今はそのような事は少なくなってますし、普通(?)に話しかけてくれます。何故か頬を赤らめてましたけどね。
「……気のせいかな、とりあえず早く済ませちゃお」
※※※
~次の日 ヒノモト村にて~
「―――はい、これで身体を蝕んでた瘴気は消えました。でもまだ無理をしてはいけませんよ? 」
「いやぁまさかマコト様が来られるとは……大したもてなしもできなくてスマナイねぇ」
「いえいえ、こちらこそ遅れてしまって申し訳ないです。治りの遅い原因が分かったのも最近でしたからね」
今話しているのは……えっと、かなりお久しぶりの登場と言うのかな? 具体的に言うと第3話以降出てきてないですね。神社で物の怪から襲われてた妖怪親子の母親、名は鬼塚さんです。職は大工さん、お父さんの方ですが大分前に物の怪の被害に遭って亡くなられてます。その後は彼女が引き継いで切り盛りしていたそうです。最近は故郷の【鬼ヶ島】から大工見習の若者が数人来たらしく色々と仕事を受けているとのこと、多少ですが私達の負担も減りましたので色々と助かっています。
「他に何か困りごとがあったらいつでも訪ねてください。可能な限りお力になりますので」
「そうさね……そん時は頼らせてもらうよ、ありがとうございました」
瘴気の浄化のためとはいえそこそこ長い時間お邪魔してましたからね、早く仕事場から出ましょうか。
とは言っても長引いたのは理由があるんですよ。
集中できなかったんです……あっ、空腹や寝不足でと言うわけではないですよ?
昨日夜に感じた視線、それが2つに増えたんです。作業中ずっと視られてまして中々進められなかったんです、言い訳になりますがね。 外に出た今も背中に突き刺さる様な視線があります。
「むぅ……では行きますかね」
様々な店の並ぶこの通り、【商売通り(仮)】は人通りも多いですが、私には相手を撒くという技術はありません。なので少し神様の特権を使わせてもらいましょう、霊体化と呼ばれている技でして簡単に言うと実体が消えます。対象が突然消えればストーカーさん達も慌てるんじゃないかと安直な考えなのですがどうでしょうか? 3つ数えたら消えますよ。いち、にぃ~の……さんッ
スゥ……
「消えた……? あぁ土地神様か、なんか用事でも出来たんだべ」
「んだんだ、今更気にすることでもねぇべ」
予想以上に反応がありましたね、さてとストーカーさんは何処でしょうか?
そのまま浮いて上空から見ると結構人はいますが……一際目立つ存在があります、動揺しているからかガタガタ動いてますね。うん、ガタガタいってます。
『えッ!? 土地神様って姿を消せるの?! 』
何故今まで気が付かなかったのでしょうか、歩いていた通りの中央に小柄な岩がドンっと置かれているじゃないですか。小さい人であれば丸まって入れそうなくらいですね。中ではかなり騒いでいるようです、そこを避けて通る人がいるからなお目立つなぁ……。
ドスッ
騒いでいた岩に突然何か刺さりましたね、それと同時に静かになりましたがいったい何が刺さったのでしょうか? えっと飛んできた方向からだと丁度お魚屋さん辺りかな?
……あ~、いました。すぐには見つからないと思ってましたがまたコレは目立つ方法で隠れています。
ほら忍者でよく壁に化けるのあるじゃないですか、同じ模様の描かれた布を使って隠れる忍術……で良いのかな?
『見失うとは……未熟者め』
いや貴方からは絶対に言われたくないですよ、だって木造の建物しかないのに石垣模様の布を使う人がいますか? 通り過ぎる人も気を遣って見て見ぬふりをしてますよ、皆優しいなぁ……。あ、隠れるのやめたようです、布の裏からは背に荷物を背負い、行商人の姿を装った女性が現れました。口元は黒い布で隠されてますが多分美人さんですね。何事も無かったかのように歩き出してそのまま岩に腰を下ろしました。
「身を隠す時は景色に馴染むようにと何度も教えたろうに……」
あ~もう何処からツッコミを入れて良いか分かりませんよ。
ここは大人しく姿を現しましょうか……目の前から。
スッ
「やはりお前にはまだ―――」
「あの、突然消えて申し訳ありません。もしかして私に何か用が有ったのでしょうか? 」
「ギャッ?! 」
「うわっ、大丈夫ですか? 」
女性は驚いて身体は後ろに仰け反ってそのまま倒れてしまいました、その際に踵が岩に引っかかって一緒に転がると中には黒っぽい衣装の子供が……もう忍者と言われても言い逃れが出来ない格好ですね。
あ、目が合った。
「あ、あわ、わわわ……」
「ッ、目に砂埃が」
咄嗟の演技でしたが大丈夫かな? 手で目をこする様な姿を見せてますが……
「か、風丸無事か? 姿はまだ見―――ぇぇぇえええッ?! 」
「ははうえぇ~、み、みつかっちゃったぁ」
「よよよよく見てみろ、か彼女は今目をこすっ、こすっている。すなわちまだハッキリとは――――」
ハッキリ見ちゃってます、誤魔化すのも大変なのでそろそろ手を打ってもらいたいのですが……。
お? どうやら背負っていた荷物から何か取り出したようです、子供の衣服ですね。
それ以外にもゴチャゴチャと入っているみたいです、パッとのぞき見した感じではひし形の手裏剣や苦無、短刀ではなく忍刀と言うのかな? おそらく一般の人が見てはいけないようなモノが沢山ありました。子供を一瞬で着替えさせた後、岩の隠れ蓑はギュッと折りたたんで荷物へ入れ込んだようです。
「んん……取れたってアレ? サッキダレカイタヨウナキガスルナァ(棒読み)」
「だいじょぶ、だったの? 」
「安心しろ風丸、まだ我々は【忍びの者】と見破られていないぞ! 」
何処からそんな自信が出るんです……? あぁもう自分で口走ってますよこの人、私もフォローしきれません。どうなっても知りませんよ、か、関係ないですからね。騒ぎを聞きつけた人達が徐々に集まってきてますが一人でスルッと抜ければ問題ないですし。
……なんですか。人を見捨てるのは神様としてどうだろうか、ですって?
あぁもう分かりましたよッ! お札を使ってお二人を神社まで移動させちゃいますから!
こう無意識に札を取り出してビュンっと移動しちゃいますから!!
シュバババッ……ビュン!
その後マコトは無駄のない動きで袖から2種類の札を取り出し、2人を近くへ寄せる。
念のため2人の身体には防護の札を張り付け衝撃への対策を行う。準備が整い次第土壁の札を地面へ投げつけ神社の方向へと自分達を射出させた。
~神社~
さて、無事着地したところでさっそく聞いてみましょうか。
「……で、貴方達は一体何者なんですか? 」
「なな、何をッ、私たちはただの旅の商人でございますよ? 」
この期に及んでまが誤魔化しますか、子供は彼女の後ろに隠れてしまってますし聞くに聞けません。
まぁいきなり飛ばされたら怖がりますよね。
「風丸君、でしたか? さっきは驚かしてしまってゴメンナサイね」
「……ッ」
更に後ろへ隠れてしまいましたか、ちょっとショックです。
では子供の緊張を解くための秘密道具を出してみましょうか。
「コレはどうでしょうか?」
「風丸! 隠れてなさい、毒が―――」
「毒なんて入れたらもったいないじゃないですか。大丈夫……ん~、やっぱり甘いなぁ」
袖から取り出したるは小さな巾着袋、中には琥珀色の塊が数個入ってます。
べっこう飴を作ったんです、村に子供も増えて来たので最近携帯してるんですよ。
見回り中に囲まれるともう大変大変……少しと思って遊んであげている内に時間があっという間に過ぎちゃうんですよね、そんな時に飴ちゃんを与えて回避するのです。
風丸君は興味があるご様子、あと一押しかな?
「……ほんと? 」
「うん、大丈夫ですよ。ちょっとだけお母さん? とお話させてね」
「うんッ、ありがとう! 」
そう言うと巾着袋ごと持っていかれました、神社の階段に座って飴を1つパクリと……瞬間に至福の表情になりましたね。うん、やっぱ忍者と言ってもまだまだ子供なんだなぁ。
「か、風丸ぅ……母を一人にしないでおくれぇ」
「さて、お話ししましょうか」
優しい尋問の末判明した事はマコトを追跡していたのはこの親子、その正体は忍者であった。
名前までは言えないが近隣の国から来たらしく、急激に成長しているヒノモト村の調査任務を請け負っていとの事。全てを知られた自分たちは死ぬしかない、何とかして欲しいと言われたマコトの眉間には凄まじくシワを寄せていたが最後には―――
「私は何も見ていないし、聞いていない。貴方達は国に帰る途中に立ち寄った行商人ですね? 」
「え、私達は―――」
「ですね? 」
「……はい、旅の安全を祈祷してもらう為にこの神社に立ち寄りました」
あ~もう疲れた、今度は村の人達にも上手い事誤魔化さないと……変わり者の行商人って事にしておこうかなぁ。
※※※
それから数日後、再びこの親子はヒノモト村を訪れて来た……1通の手紙と大荷物と共に。
簡潔に手紙の内容をまとめるとこのようになる。
・迷惑かけて申し訳ない、お詫びに国名産の手裏剣まんじゅうを送ります
・忍びの才能はないが商才はあるからこの二人を村の発展に役立ててほしい
神社にて手紙を読んだマコトの眉間には再び凄まじくシワが寄っていた。
ど~もKUMAです。
ついに6月です、梅雨の時期ですよ。今年はザァーザァー降るのかそれともシトシト降るのか……はたまたカラっとしたものになるのか、できればシトシトと降ってほしいなぁ。適度な湿度でシトシトと雨が降る景色が好きなのです。
今回のお話では前から登場させたかった忍者を出してみました。少しと言うよりかなり抜けてる忍者親子、気配を隠し切れない、バレバレな変装、うっかり正体を言ってしまうなどもうハチャメチャでしたね。書いてて面白かった、KUMAさんはそれで満足です。
ちょっと短いですが後書きはここまで、村の住人も増えてきて賑やかになってきました。どうか今後のマコト達の活躍を温かく見守ってやってください。それではまた次の機会に、ではでは~




