第31話 土地神の帰省
~神界役場 ヤマト~
水無月(6月)から文月(7月)に変わる前日のこと、ヒノモト村の土地神であるマコトは天照大神こと陽光に呼び出され神界役場に来ていた。受付に用件を伝えると応接室に通され、ソファに座り相手が来るのを待っている。
……彼女は何処か不安げな表情をしていた。
「……(一体何なんだろ? 呼び出しとかまだ学生だった頃にちょっとヤンチャした時ぶりですよ、お役目はちゃんとして―――ない時もあったかも……この前見廻り中にお茶飲んでのんびりしてたのが悪かったのかな、それとも―――)」
ガラッ……バンッ!
引戸が勢いよく開けられる。入ってきたのは両手に書類を目一杯に持った少年……足を使って開けたようだ。
「ひゃっ?! こごゴメンなさい! 」
「あ~……? 寝ぼけてんのか? 俺だよ俺、陽光だ」
少年のような外見をしているが、年齢は千をも軽く越える天照大神である。
陽光は書類を机の上へ乱雑に置くと煙草を取り出し口に咥えた。
その後袖や懐を探すが火種が見つからないようだ……ため息をつくと煙草の先端に手を持っていき―――
パチンッ……
彼の指先で乾いた音が鳴ったと思うと煙草には火が点けられていた。
そのまま書類数枚取り、それぞれ確認を済ませると机に置きマコトに話しかける。
「よし、今までお疲れさん」
「……え? 」
「帰っていいぞ」
「は、はいぃ? 」
彼女は状況を飲み込めないようだ……それもそうだろう。
呼び出されたはずなのに突然帰れと言われたら誰でも同じ反応をするだろう。
数秒後に再び陽光が口を開く。
「いやだから帰れって、役員たちの決定だからな。もう変えられん」
「え、あ……は、はぃ…………」
その一言でマコトの表情は徐々に泣き顔へと変化していく、頭の中では土地神を辞めさせられると思い込んでしまっているようだ。シロやクロ、スサノ、八頭、村人達……もう二度と会えないと思うと大粒の涙がボロボロと溢れ、自身の袴を濡らしていた。
「そんな嬉しいからって泣くこたぁねぇだろ? 」
「エグッ……ヒグッ…………だ、だっでぇ」
陽光は勘違いしているようだった、彼女は決して喜んでいるわけではない。
そんな状況の中、一人の女性が部屋に入ってきた。
「ちょっと兄貴、大事なモノ忘れて―――」
「……待て、落ち着け妹よ。コイツが勝手にだな」
「うぅぅ、ぁぁぁ……」
「な、何女の子を泣かせてるのよ馬鹿兄貴ッ!! 」
応接室にて兄妹喧嘩が始まった……入ってきたのは陽光の妹、月読ミコト。
マコトを落ち着かせながら彼に口撃している。それに負けじと反論する天照大神だが口論が進むほど追い込まれていき、最終的にやはり勘違いをさせるような発言をした陽光に非があると結果になった。
※※※
「ちょ、長期休暇ですか? 」
「ふぉうだ、おひゃえはんにはひろひろふぉ……(そうだ、お前さんには色々と……)」
「……あ、アタシが代弁するね。ゴメン兄貴」
二人の喧嘩は口論に止まらず、ちょっとした殴り合いまで発展していました。
殴り合いと言っても拳で語り合う的なモノではないですよ? 霊力を使ってドッカンバッタンしてました。
陽光さんも私に防御壁を展開してくれていたからか顔が漫画みたいな腫れ方になってますよ。
でもあの言い方は勘違いしちゃいますよ、いきなりお疲れや帰れって言われたらマイナス方向に考えちゃいますもん。いろんな考えが巡り巡って泣いちゃいました、お恥ずかしい……。
「えっと今回来てもらったのは貴方に特別休暇を与えるためなの。妹の一件と神無月での襲撃、その他諸々……肉体、精神的にも限界だろうから休ませてやろうって兄貴が発案したのよ」
そう言うとミコトさんは陽光さんが持ってきた書類を渡してきます。
内容は私の活動記録……今まであった出来事が事細かの白黒の写真付きで書かれていました。
特に報告した覚えはないのですが、神様はちゃんと見てるんですねぇ。
「ふぉこふぇふぁ、ふぉふぁふぇふぃふぁ……(そこでだ、お前には……)」
「だからアタシが話すって。でね、マコトさんにはこっちで休むんじゃなくて元居た世界で休んでもらおうと考えていたの。ちょっと勾玉を借りてもいいかしら? 」
「は、はい。ちょっと待ってくださいね」
ミコトさんのいう勾玉と言うのは私が首に下げている翡翠色の勾玉の事です。
神界に来るための通行証みたいなものであり、一応地上に降りている神様の証でもあるようですよ?
手渡した勾玉は陽光さんが手を当てるとほのかに輝き始め、収まると色も翡翠から橙に変化しました。
「色が……」
「はい、コレを駅で見せれば貴方の居た世界……日本の神界まで行けるわ」
ミコトさんさらっと言いましたがこの神界って駅あるんですか?
なるほど役場からバス一本で……十分ほどで着くそうです。
電車は一回乗り継いでいくんですね、あ……この駅名は―――
※※※
~あの世:閻魔城 天と地の境界線~
到着した場所は閻魔城、別名【天と地の境界線】。外観は黒を基調としたお城なんですが、中に入ると駅なんですよね……入り口は今来た改札と船着き場の二カ所。土地神になる前は三途の川から入りましたね、皆さん覚えてます?
「さてと……次は乗り換えなんだけど―――」
「お~い、マコッちゃんよ~いッ」
おや、この聞き覚えのある野太いけど何処か温かみのある声は……振り返って見ると遠くからでもハッキリわかる大柄の男性がいますね、ブンブンと手を振りながら近づいてきます。
服装は駅員さんのような制服の上下、髪型は角刈りだったはずだけど今は帽子を被ってて分かりませんね。
「うわぁヤマさん、お久しぶりです。相変わらず大きいですね」
「まぁな! お前さんも元気そうで何よりだ」
「まぁ挨拶はこれくらいにして……」
「お? どうし―――」
「なんであの時遥か上空から落としたんですか! 」
余程大きな声を出していたのかヤマさんは両手で耳を塞いでいました。
いきなりですよ、足元にパカッと穴が開いてピュ~っと落ちたんですよ?
文句の一つくらい言いたいじゃないですか。
「あ、いやっそれは本当に申し訳なかった! あの後チョイと急ぎの案件があったんでな……」
「むぅ~……」
「その詫びと言ってはアレなんだが、美味い茶と菓子があ―――」
「いただきましょう」
サッと出してきたお饅頭の箱が見えた瞬間に言葉が出てしまいました。
うん、仕方がないね。ここの【白黒堺饅頭】って名物なんですよ、売店でも売り上げがトップとの事。
見た目は濃い茶色のお饅頭、中の餡子は黒と白の二種……両方漉し餡です。
「おぅ、即決だなマコッちゃん」
「今回だけですよ? 出来立ての美味しさを所望します」
「そういう所好きだぜ。じゃぁ行こうか、時間まで色々と話を聞かせてくれや」
この後は駅内を歩いて客間へ……途中クニダさんやウメダさんとも再会できました。
ウメダさんというのは私をバスで迎えに来てくれた方で、クニダさんはヤマさんの同僚で右腕的な存在。
二人とも今日はお休みと言う事で一緒にお茶をしましたよ、ヤマさんの仕事……? そこはまぁ、何とかなるそうです。
※※※
楽しい時間はあっという間に過ぎ、現在は電車に乗って元の居た世界に向かっている所です。
そう言えば乗ってる電車SLみたいな形をしてたなぁ、撮り鉄と言うのは何処の世界にでもいるみたい。
住人なのかまでは分かりませんが、カメラを持っていた方が数人撮ってました。
『ご乗車ありがとうございました。次に停車する駅は―――』
「……降りる準備しなきゃ」
実は乗車してから数分で寝ちゃいました、気付いたら目的地間近だったみたい。
準備を済ませ出口で止まるのを待機していると次の駅が見えてきました。
此方の神界は現代風なんですね、コンクリで造られた駅……ん? 何やら文字の描かれた白い幕がありますね、横一列に5人ほど並んで持ってます。
えっと……【おかえりなさい! マコトさん!! 】?
何事ですか?
今年も半分終わり、7月となりました。
ど~もKUMAです、最近は暑さが続き、体調・やる気ともにグダグダしております。
今回はマコトに帰省してもらうというお話。久しぶりに閻魔ヤマダことヤマさんを登場させましたね、あまりにも久しぶり過ぎて「ど、どんなキャラだっけ……(;´・ω・)」と若干戸惑いながら書きました。
【大和の神界】→【閻魔城】→【日本の神界】、電車でのルートはこんな感じ。日本の神界にて盛大なお迎えが来ていましたがあれは一体何なのでしょうね……?
あ、ちなみにマコトの表情差分を前描いていたのですが、後書きの方にも置いておきますね。こんな感じに変わってるのかなぁ~と思いながら描いてみました。
仕事でバタバタしてますが、この更新頻度は続けられるように少しずつ頑張っていきます。
とりあえず今回は此処まで。また次の機会にお会いしましょう、ではでは~




