タイトル未定2026/06/03 18:29
ふたりきりだったぼくたちに
すこしずつ、なかまたちがあつまった。
ころんでもいいよ。
ないてもいいよ。
うつむいてもいいよ。
すこしだけあげたかおに、あおぞらがみえた。
もう、きのうはふりかえらない。
はたをかかげよ!
こぶしをあげよ!
ふたりきりだったぼくたちに
すこしずつ、なかまたちがあつまった。
さぁ、ぼうけんにでかけよう!
夏休みの間、ファミレスの洗い場のバイトに明け暮れていた白田流花と速水渚と田中。
バイトが終わり、夕焼けの繁華街を流花と渚が肩を並べて歩き、その後ろを田中が歩いた。
数日前、流花がマスターと出かけたことを流花は渚に打ち明けた。
「マスターと出かけた時、私がコーデした服を着て出かけた?」
渚は小声で、流花に聞いてきた。
「うん。着たよ」
「着たんだぁ!ねぇ、マスター何か言った?」
後ろを歩く田中を気にしながら、流花は渚に寄り添い耳打ちをした。
渚は流花の言葉に声を上げて、流花と渚は笑いあって歩いた。
地下鉄の電車に乗っても、流花は田中の視線を気になりつつ、ずっと渚に寄り添っていた。
やがて渚が降りる駅に近づいてきた。
「今日も、佐野君のアパートに行くの?」
渚は当然のように笑顔で答え、渚は声を低くして言った。
「うん、行くよ。流花ちゃんは、マスターのところに行かないの?」
「行かない」
「どうして?」
「マスターに、べったりしている、自分が嫌なんだ」
「あぁ〜それ、私のこと非難しているな!」
流花は、慌てて言った。
「非難なんて、していないよ!私は、素直じゃないだけ。佐野君に素直に甘えることができるなぎちゃんが、羨ましいよ」
慌てて言う流花を、渚は笑った。
そして、又小声で流花に言った。
「ねぇ、マスターに会わせてよ」
流花は何も言わず、微笑んでいた。
田中の視線を気にする流花に渚は気遣い、マスターの話題になると渚は流花に寄り添い小声になった。
よく気がつく渚を友人に持ったことを、流花は誇らしく思っていた。
駅に着き渚が電車を降りて、流花と田中の二人だけになった。
田中は何も喋らず、窓の外の流れる風景をみつめていた。
流花が電車を降りると、田中も一緒に電車を降りた。
「田中君が降りる駅、二つ先だったんじゃあ……」
田中は、流花の横に並んで歩いた。
「何処で降りても、同じだよ。それより……賑やかだな。女子トークって奴?」
まるで、なんの話をしていたんだ?
と、言いたげな口調だった。
「それは、聞かれたくないことだってあるよ」
「流花ちゃんって、女子トークするキャラだっけ?らしくないな」
「田中君こそ、そんな攻撃的な態度をとるキャラだっけ?」
売り言葉に買い言葉のトークは、更にヒートアップした。
「電話をしたのに、なんで折り返しの電話をくれなかったんだよ」
「夜中にかけた電話でしょ。もう寝ていたし」
「流花ちゃんが電話をかけてくるのを、俺はずっと待っていたんだけどな」
「そんなこと、知らないよ」
突き放すような言い方をした流花は、マスターと二人きりで過ごした日のことを思い出していた。
翌日ソファーで目が覚めた流花は、起き上がり辺りを見渡すと、フローリングの上でタオルケットをかけたマスターが寝ていた。
……もしかして、私って贅沢な時間を過ごしている?
流花は思わず、マスターの寝顔に見入っていた。
「なぁに、考えているんだよ」
田中の声で流花は、我に返った。
「今日の夜、何を食べようかなって考えていただけ」
「じゃあ、今から流花ちゃんちに行こうか」
流花は不意に立ち止まり、不機嫌な顔になった。
……マスターの寝顔を思い出して、幸せな気分に浸っていたのに……。
しかし流花は、笑顔で田中を振り返った。
「田中君って、冗談ばっかり。じゃあね」
田中をやり過ごすように、流花は足早に歩き出した。




