第10話 無からは何も生じない
1人の男が天井を向き呟いた。
八 「…おはよう」
相手は女性。彼の彼女であり古き良き友人でもある。
「はーち」
八 「…ぅん…?」
「八。大学に遅刻するよ」
彼女は3歳年上である。今は社会人1年目だ。
彼の名前は中野 八。現在大学2年生。彼女との付き合いはまだ1年と短い。
「ほら。起きて」
毛布を取り上げほっぺたにキスをする。寝ぼける八への最大の目覚まし。なぜなら彼は梅干しのように赤くなるからだ。
「黙っててもバレバレだよ?仕返ししたかったらこっちまでおいで」
彼女は八の扱いが非常にうまい。周りからはお似合いとよく言われている。
ダラダラと机につき朝食を済ませば、大学に向かう支度は整え再び布団に潜るのだ。
「もー。毎朝これじゃん。そんなに起きたくない?」
八 「…じゃあ一緒に寝る?」
「私まで眠くなっちゃうからヤダ」
八 「じゃあ寝る」
「もー…わかった。寝させなければいいんでしょ?」
彼女は八の潜る布団に飛び込んだ。ボフンと布団が声を出す。
八の顔に顔を近づけキスをしたのである。
「こら逃げない」
顔を掴まれ彼女が上に乗る。
八 「な、何する気?」
「君を拘束する。出る時間までね」
そのまま押し潰され延々とキスをされる八は、困惑どころではなかった。
「顔そらさないで。ちゃんとこっち見て顔合わせて」
八の抵抗は虚しく力に負け、数十分もの攻撃を喰らい続けるのであった。
「ふぅ。さ、時間だよー」
八は完全にダウンしていた。
この1年、八はこんなにも愛でグチャグチャにされることはなく、もはや脳は機能を停止していた。同時に幸福感が押し寄せ停止状態を増させていた。
何も考えられなかった。
聞こえるのは彼女の声と自分の酸素を必要とする息遣いだ。
「ふふっ。美味しかったよ八」




