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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第3章 水の大精霊

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(15)不意打ち

 シゲルたちの目の前に現れた像は、メリヤージュによく似た風貌をした女性の像だった。
 それが誰なのかは、像がある場所とその風貌を見れば、考えなくてもわかる。
 像を目の前にして、マリーナが感嘆するようにため息をつきながらシゲルを見た。
「前回といい、今回といい、遺跡を見つけるには、精霊使いとしての素養が必要ということかしらね?」
「それはちょっと違うんじゃない? 普通の精霊使いは、見つけられないわよ、こんなもの」
 あるいは、シゲルと同じように契約精霊を持つ者であれば、見つけられるかもしれない。
 だが、そもそも精霊がこんなものを見つけられるなんてことは考えてもいないはずなので、そもそも探すように指示をすることはないはずだ。
 結果として、今のところは、シゲル(の契約精霊)だけが見つけられるということになる。

 感嘆しているミカエラとマリーナだが、それに対照的なのがフィロメナだった。
「何を言っているんだ。シゲルは最初からいろいろとやらかしていたぞ?」
 あからさまな惚気に、ミカエラがうんざりと言った顔になった。
「あのねえ、フィー。惚気は場所を選んでくれないかな?」
「えっ!? い、いや、別にこれは惚気ではなくてな……」
 そう言いながら恥ずかしそうにシゲルをチラチラと見ている姿を見れば、どう見ても惚気にしか思えないだろう。
 ただし、当の本人(シゲル)は、いろいろとやらかしたという言葉のほうが気になっていた。
 ミカエラのお陰(?)で、それを聞けるような雰囲気ではなくなってしまったので、この場で聞くことは止めておいたのだが。

 
 そんないつも通りのやり取りをしつつ、シゲルたちは早速その像を詳しく調べることにした。
 結界の中には、その像くらいしか目ぼしいものがなかったので、それを調べることになるのは当然だった。
「前回のことを考えれば、何もないということはないと思うんだけれどなあ……」
 一通り調べて何も見つけられなかったシゲルが、首を傾げながらそう言った。
 そのシゲルの言葉に、他の三人も頷いている。

 分かり易くスイッチとかでもあればよかったのだが、そこまで甘くはなかった。
 調べる対象が像しかなかったというのも災いしている。
 ひたすらその像を調べたシゲルたちだったが、どこにも仕掛けらしいものは見つけることが出来なかったのである。

 小一時間ほどその像を調べたシゲルは、そこで一度根を上げた。
「駄目だね、これは。もっと根本的に考え直さないと駄目な気がする」
「でも、考え直すって、何をどうするの?」
 シゲルよりも先に諦めていたミカエラが、懲りずに調べているフィロメナとマリーナを眺めながらそう聞いて来た。

 ミカエラに問われたシゲルは、考えるように腕を組みながら首を傾げた。
「まず、大前提として、この像に何かがあるのは確か……だと思う」
「そうね。というか、それが崩れたら何にもならないわね」
 こんな場所に、しっかりとメンテナンスされているらしき像があること自体、何かがあるとは想像できる。
 勿論、それが古代遺跡に繋がるかどうかは別にしてだが。

 その像を見ながらシゲルは、さらに続けた。
「自分たちは、前回のことがあるから、つい地下に行くための何かがあるというイメージがあるけれど、もしかしたら違う仕掛けがあるかも知れない」
「それもそうね。というか、途中からそんな話をしていたわよ?」
 シゲルたちは、最初の頃は地下に行くための階段とかが隠されていると思って調べていたのだが、どうにもそんなものがあるようには思えなかった。
 そのため、途中からはその思考を切り替えて、いろいろな方面から調べるようにしていたのだ。
 だが、何かの石材で作られたその像は、何度見てもただの石像にしか見えなかった。
 魔法的な仕掛けか何かがあればまだ分かり易かったのだが、そういったものも見つけられない。
 正直、お手上げというのが、現状だった。

 
 この辺りに階段があるようには思えない、像にも仕掛けがあるようには見えない――等々。
 シゲルとミカエラは、いろいろな角度から意見を出していくが、決定打になるような答えは見つからなかった。
 途中からは、像を調べるのを諦めたのか、フィロメナとマリーナも混じって意見を言っていた。
 それでも出てこない答えに、思わずシゲルは空を仰ぐようにその場に仰向けに寝転んだ。
「駄目だなあ、これは。根本的な思い違いをしていことのはわかっているのに、それが何か分からないなんて」
「そうは言うが、これ以上この像の役目なんて、何がある?」
「そうだよなあ…………この像の役目か。………………うん? 像の役目?」
 フィロメナの言葉に同意するように頷いていたシゲルだったが、ふとあることを思い出してわずかに顔をひきつらせた。

 そのシゲルの雰囲気を察したのか、フィロメナが訝し気な視線を向けて来た。
 だが、シゲルはそれには答えずに、像を見た。
「……まさかね。いや、本当に、まさかだと思うんだけれど、ね」
「なによ、何か思いついたんだったら、はっきり言いなさいよ」
 煮え切らないシゲルに、フィロメナと同じように不思議そうな顔をしながらミカエラがそう言った。

 そのミカエラの言葉にも反応せずに、シゲルはいきなり柏手を打った。
「水の大精霊さま。私たちを古代遺跡へと連れて行ってください」
「「「シゲル…………」」」
 三者三様の呆れたような視線が突き刺さって来るのを感じたシゲルは、やっぱり違ったかと冷や汗を流しつつ、どこかで安心していた。
 こんなことで解決してしまっては、これまでの苦労が報われない。

 ――――ところが、である。
「はいはい。条件をクリアしたから、きちんと連れて行ってあげるわよ。……って、あれ?」
「「「「…………」」」」
 威厳も何もなく現れたその存在に、シゲルたちは揃って呆けることになるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 水の回廊――昔の人たちは、この場所をそう呼んでいたと説明する水の大精霊に、シゲルはその背を追いかけながら感心したように周囲を見回していた。
「水の回廊ですか。確かに、そう言われてもおかしくはないですね」
 シゲルの目に移っているのは、どこかの水族館の映像で見たことがあるような光景だった。
 玉子型の円形通路になっているその天井は、透明な材質で出来ていて、外(?)の様子が見えている。
 そこには、普通は見ることが出来ない湖底の様子がしっかりと見ることが出来ていた。

 感動はしていても、あまり驚いた様子のないシゲルに、フィロメナからの突っ込みが入った。
「いや、シゲル。なぜそんなに平然としているんだ?」
「平然と……? ああ、そうか。前にいた世界では、似たようなところがあったからね」
 シゲルがごく普通にそう返すと、今度は水の大精霊が感心したような顔を向けて来た。
「へー。貴方が渡り人だということはわかっていたけれど、随分と進んだ文明から来たのね」
「何を持って進んだとするかは、世界によって意見が分かれるところでしょうがね」
 シゲルは苦笑しながらそう答えた。
 確かに物質文明的には、今のこの世界と比べると発達しているのは確かだが、魔法文明的に見るとそうでもない。
 そもそも魔法などないと言われていた世界なのだから当たり前なのだが。

 シゲルが水の大精霊とそんな会話をして歩いている間、ミカエラとマリーナは、口をポカンと開けながら周囲を見ていた。
 その様子を見る限りでは、相当な衝撃を受けていることがわかる。
 もっとも、フィロメナの態度のほうが、この世界の住人としては冷静すぎると言えるのかもしれない。
 そのフィロメナは、シゲルが落ち着いているので自分もさほど驚かなくて済んでいるという、乙女心のなせる業なのか、元々の性格なのか、良くわからない状態で周囲を見ていた。
 水の大精霊が居るのだから、それくらいは出来て当然と思っている節もある。
 その心の内を正確に知っているのは、当の本人(フィロメナ)だけである。

 水の大精霊は、シゲルが落ち着いているのを見て言った。
「その分だと、私が着いていないほうが良いみたいね。この道をずっと進んだら目的地に着くから頑張って歩いて来てね」
「あ、はい。ありがとうございます」
「いいのよ。これも昔の約束のひとつだから」
 シゲルが頭を下げると、水の大精霊は右手をひらひらさせてから、パッとその場から消えた。
 約束ってなんでしょうと、シゲルが聞く暇もなかった。

 突然現れて突然消えてしまう水の大精霊に唖然としつつ、シゲルたちは言われた通り水の回廊を進んで行った。
 そして、その水の大精霊が言った通り、しばらく歩いていると目的地らしきものが見えて来たのであった。
※水の大精霊と会うためには、柏手は特に必要ありません。
 必要なのは、お祈りの方ですw

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(業務連絡)
マリーナの登場時の名前がマレーナになっていました。
今後はマリーナに統一いたします。
混乱させて申し訳ありませんでした。

※この業務連絡は、明日の更新分にも載せます。
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