表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
305/340

(20)悪い知らせ

 各地への情報収集は、当然ながらアマテラス号を使って行われた。

 ただし、シゲルやフィロメナがいつもと違った動きをすると、アーダムたちに警戒されることもあるだろうと学園への登校もいつも通りに行われていた。

 学園へは午前中だけにして、午後は各地へ情報収集に飛び回ると言った感じである。

 シゲルとフィロメナは学園に行って、他のメンバーがアマテラス号を使って情報収集に向かうという場合もある。

 学園長からの連絡を貰ったのは、シゲルとフィロメナがいつものように研究室へ顔を出した時のことだった。

 シゲルの場合は、フィロメナと別れて研究室に顔を出した時に、ヴァレリーから言伝で聞いたのである。

 ちなみに、途中で合流したフィロメナも同じような感じだったと話していた。

 

 そして、学園長室へと向かう途中で、シゲルがいきなりラグに呼び止められた。

「――うん? どうしたの?」

 ラグがその場で待つように言ったのを、シゲルは少し珍し気な様子になって聞いた。

「地の大精霊から連絡が来ています」

「グラノームから? ……ああ。何か結果でも出たかな?」

 シゲルは、一応これまでもグラノームから途中経過で報告を聞いていた。

 ただし、こんな中途半端な時間に連絡を貰うのは初めてだったので、少し不思議だった。

 

 フィロメナと一緒に少しの間首を傾げたシゲルは、すぐにラグに許可を出した。

 ラグという中継を間に挟めば、すぐにグラノームから遠距離通信のような会話ができるので、わざわざ召喚のように呼び出しをしなくてもいいのである。

 もっともシゲルの場合は、召喚も名を呼べばすぐにできてしまうので、さほどの手間がかかるわけではないのだが。

 ただ、召喚される側(主に大精霊)からすれば、大きな違いがあるらしい。

 主に、精神や体そのものをシゲルのところまで移動しなくても済むという意味において。

 

 シゲルからの問いかけに、グラノームは意味において相変わらず声だけで応じてきた。

「そうなのだが、少し気になることがあってな。いや。儂にとっては大したことではないのだが、一応シゲルには早く知らせておいたほうがいいと思っての」

「なんか、その前置きが少し怖いんだけれど?」

「うむ。怖いと思うかどうかはシゲル次第だな。――どうやら魔族が関係しているらしいことがわかった」

「………………ハイ?」

 シゲルは、一瞬グラノームが何を言ったのか分からずに、その場で固まってしまった。

 グラノームの声が聞こえていないフィロメナは、そのシゲルの動きを見て表情を引き締めた。

 予想外のことが起こっているということが理解できたのだ。

 

 そんなフィロメナに対して、シゲルはそれどころではなく慌てていた。

「えっ……!? ちょっと待って。何で、そんな繋がりが!?」

「少し、落ち着け……といっても無理かもしれないが、残念ながらほぼ確定だと思われる」

 落ち着けと言われたシゲルは、一度深呼吸をしてから今一度グラノームから言われたことを整理した。

 そして思い浮かべたのは、いつぞやに訪問したポルポト山での光景だった。

「もしかしなくても、あっちで捕まえた精霊をこっちで買ったりしている、とか?」

「さて。そこまでは儂には分からんが……そうあってもおかしくはないじゃろうな」

 その答えを聞いたシゲルは、思わず右手で額を押えると同時にそれはそうだろうなとも考えていた。

 人族との繋がりがあるのであれば、売れる物は売ってしまおうと考えるのはむしろ自然である。

 そうでなければ、敵対関係にある勢力と繋がりを持つ意味がない。

 

 完全に動きを止めてしまったシゲルを見て、フィロメナはどういうことかと視線だけで問いかけた。

 それに気付いたシゲルは、一度ラグを見て音が漏れないように結界を張るように指示を出した。

 その動きだけでシゲルの言いたいことを理解したラグは、すぐさまその場に結界を張った。

 幸いなことに、学園長室付近は人通りが少ないので、いきなり結界を張ったこと自体を不自然に思うものは少ないはずである。

 勿論、全くいないわけではないだろうが、少なくとも現在目視できる範囲には人はいない。

 それでもあえて結界を張ったのは、事の重大さを鑑みてのことである。

 

 そんな状態なのに、わざわざ結界を張ってまで伝えようとしてくるシゲルに、フィロメナは硬い表情になっていた。

「グラノームからの情報なんだけれど……どうやら魔族との繋がりがあるらしい」

 そのシゲルの言葉を聞いた瞬間、フィロメナは一瞬口と両目を大きく開けた。

 フィロメナがそこまでの驚きを示すのは、珍しいことだ。

 すぐにその表情はいつも通りに戻ったが、それほどまでに予想外の事態だったのだ。

 

 表情はいつも通りに戻ったフィロメナだったが、驚き自体は続いていたらしく、シゲルと同じように少しの間固まっていた。

 そして、そのフリーズが解かれた後は、一度大きく息を吐きだしてからシゲルに向かって言った。

「それは、とんでもない情報だな」

「やっぱりそう思う?」

 この時すでにシゲルは驚きから解放されて、多少軽い調子で答えることができた。

 フィロメナの驚きを目の前で見たからこそ、逆に冷静になることができたともいえる。

 それに、シゲルの思考そのものは、この世界の人間のそれではないため根底ではそういうこともあり得るかと考えることができていた。

 そのシゲルとは逆に、フィロメナがいつも通りに戻るのには、数分の時間を要することとなる。

 

 

 フィロメナがいつもの雰囲気に戻ったと感じ取ったシゲルは、そっと伺いながら聞いた。

 ちなみに、既にグラノームとの通信は閉じてある。

「――どうする? 学園長のところはもう少し時間を空けてから行く?」

「……いや。ここで行くのを止めれば、それこそ何かあったと知らせるようなものだろう。私はもう大丈夫だ」

 一度だけ首を振ってからそう答えてきたフィロメナに、シゲルは小さく頷き返した。

 グラノームからの情報は非常に重要なことだが、学園長の話も後回しにすることはできない。

 彼がどんな話をしてくるかによっても、シゲルたちの今後の対応は変わって来る。

 グラノームからの情報を、学園長からの話を聞く前に聞けたのは丁度いいタイミングだったと言える。

 

 一応の確認を終えたシゲルとフィロメナは、そのまま学園長室へと向かった。

 そこで学園長から聞いた話は、直前にグラノームから聞いたことを除いて、既にシゲルたちが掴んでいる情報とほとんど変わらなかった。

 アーダムと直接の繋がりがあるミラン。

 シゲルたちが予想した通りに、ミランはとある地下組織らしきものと繋がりがあり、その組織は複数の国にまたがって広範囲で活動を行っている。

 それらの活動が、国との直接の繋がりがないということは、安心できる情報の一つといえるだろう。

 もっとも、関わっている人の多さから考えると、話をしている学園長の顔色の悪さも理解できる。

 シゲルたちは、直前にさらに青くなるような情報を聞いてしまったわけだが。

 

 ただし、国と組織の直接の繋がりがないということは分かっているが、全く関係がないというわけではない。

 その理由は簡単で、例え強制契約であっても精霊を召喚できる精霊使いは、国にとっては重要な立ち位置に来る場合が多いためである。

 強制契約かどうかは、精霊に対してよほどひどい扱いをしていない限りは見抜くことが難しい。

 結果としてそれなりの地位に立つ者が関係しているという、学園長にとっては頭の痛い事態になっているのだ。

 だからといって、そうした者たちを見逃すわけにはいかない。

 

 これだけ広範囲に渡って組織が活動していると分かった以上、学園長としてもすぐに関係者を罰するわけにはいかないと分かっているらしく、さらに時間をかけて調査をすると言っていた。

 勿論、だらだらと調査だけを続けても意味がないことはお互いに十分理解しているので、どこかで決着を付けなければならない時がくる。

 複数の国が関わっている以上は、タイミングを合わせてしっかりと対応しなければならない。

 そうしなければ、トカゲの尻尾きりになってしまう可能性が高い。

 そうして再び地下に潜られてしまうと、再び発覚する時には手遅れになってしまう可能性もある。

 現状でも大精霊が関わってしまっている以上、手遅れともいえるのだが。

 

 とにかく、まだ時間が欲しいという学園長にシゲルとフィロメナが了承を示したところで、今回の話し合いは終了となるのであった。

話し合いだけをだらだら続けても仕方ないので、学園長との話は大幅カット(地の文で説明)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ