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(18)個人屋台初日を終えて

 おかみさんズがいなくなってから少しの間はお客が来なかったシゲルの屋台だが、すぐにその問題は解決することになった。

 新しい物好きの冒険者がポツリポツリと来だしたかと思っていたら徐々にその数が増えていき、昼頃には列を作るほどになったのだ。

 その後も列が途切れることはなく、結局用意した材料がなくなるまでその人気は続いた。

 最終的に列の後ろの方に並んでいたお客には渡すことができずに多少の騒ぎが起こったが、すぐにそれは鎮火することになった。

 それは、フィロメナが動いたというわけではなく、シゲルが材料がなくなったと正直に話したところで、周囲にいたお客が騒ぎを起こしていた者たちを白い目で見だしたのだ。

 その空気を感じ取ってか、騒ぎを起こした者たちがそそくさとその場からいなくなったというわけだ。

 学園祭で大きな騒ぎが起これば今のような自由な出入りができなくなってしまうと分かっているために、滅多に喧嘩沙汰になるようなことにはならないのだ。

 結果として、シゲルたちが直接対処することはなく無事に事が収まったというわけだ。

 

「お疲れ様。結局まともな休憩は取れずに終わってしまったけれど、大丈夫かな?」

 シゲルは、そう言いながらシンディーを見た。

 フィロメナがこの程度のことで疲れるようなことはないと分かっているので、そちらを見ることはしない。

「私は慣れているから大丈夫よ。それよりも、フィロメナさんのほうが慣れていないからすぐに疲れると思ったんだけれど……さすがね」

 シンディーはそう言いながら、けろりとしているフィロメナを見て感心したような表情を向けた。

 

 学生だった頃のシンディーは、ちょっとした飲食店で働いていたことがあり、こうした忙しさには慣れていたのだ。

 逆にフィロメナはそんな経験が一度もなかったが、体を動かすことに関しては超一流であり、どうすれば疲れずに済むかのコツをすぐに掴んでいた。

 というわけで、一番疲れている様子を見せてのはシゲルということになっていた。

 

 フィロメナとシンディーはケロリとしているというわけではないが、シゲルほどにつかれている様子を見せていない。

 それを見たシゲルは、ため息をつきながら言った。

「なんだろう。なんか、負けた気分? いや、実際負けているのか」

「そんなことで勝負をしてどうする」

 微妙に落ち込んでいるシゲルに、フィロメナは苦笑しながらそう言ってきた。

 

 そのフィロメナに、シゲルは一度だけ頷き返した。

「それもそうか。とりあえず、片づけよう。ああ、シンディーはもう終わってもいいよ?」

「私も片付け手伝うわよ。どうせだったら、最後まできちんと閉めたいしね」

「そう? それならお願い」

 シンディーの申し出に、シゲルは特にこだわることなくすぐにそう返した。

 シゲルとしては少しでも早く休んでもらいたかったのだが、当人がそう言うのであれば無理に返すつもりはなかったのだ。

 

 そんなこんなで片付けを始めたシゲルたちだったが、その間に何人かが話しかけてきた。

 そのほとんどが、無事にパスタを食べることができた者たちで、言ってきた内容がまた食べたいというものだった。

 売っているときに聞かれた場合は次の販売日を教えていたのだが、敢えてこちらから知らせるようなことはしていなかった。

 そのため、店を閉めるシゲルたちを見て聞きに来たというわけだ。

 そして、次の販売日は四日目の同じ場所になっていることを教えつつ、シゲルたちは片付けを終えてその場で解散をするのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アマテラス号に戻ったシゲルは、速攻でラウラに捕まって質問された。

「どうでしたか?」

「どうもこうもないな。予想通りに終わったよ」

 そのラウラの問いに答えたのは、聞かれたシゲルではなくフィロメナだ。

「そうですか。もしかしたらと思っていたのですが、よかったです」

 フィロメナの答えを聞いて、ラウラは安堵の溜息をついた。

 

 実はシゲルたちは前日の準備を進めていく中で、パスタが売れるかどうかを話していた。

 その時の話では、まず間違いなく売れるだろうということにはなっていたのだが、それでも多くの屋台の中に埋もれる可能性も指摘されていた。

 ラウラは、その可能性を心配して今の問いをしたのだ。

 最初の勢いが付けば売れ残ることはないだろうと分かっていても、人を相手にする以上は絶対ではないと考えていたのだ。

 

 ホッとした表情を浮かべているラウラを見ながら、マリーナが笑いながら言った。

「とりあえずよかったじゃない。これで、明日はゆっくりと皆で楽しめるわ」

 最初からの予定で、シゲルたちは真ん中の三日目に揃って学園祭を楽しむことにしている。

「そうだな。明後日のことも考えなければならないが、それは今のうちにしておこうか」

 直前の準備はしておかなければならないが、丸一日使わなければならないわけではない。

 それまでは、ゆっくりと祭りを楽しむことができる。

 

 フィロメナの言葉に、シゲルは少しだけ考えるような表情になった。

「考えるといってもねえ。結局トマトの問題が片付かないとどうしようもないんだよね。そこは、おかみさんと話し合いかな。……二、三日でどうにかできるとは思えないけれど」

「そうですね」

 シゲルの言葉に、ラウラが頷いた。

 ラウラは、既にある程度料理の作り方を覚えたので、材料がどれくらい必要になるかわかっている。

 その上で、仕入れられるトマトの量が問題になるというシゲルの言葉の意味を理解しているのだ。

 

 とはいえ、フィロメナもトマトという食材が問題だということは分かっている。

「そうかもしれないが、今日のあの様子からすれば、すこしは期待できるのではないか?」

 シゲルの屋台に来た第一号がおかみさんで、その料理を気に入っていたことは事実である。

 そのことを考えれば、多少の融通はしてくれるのではないかというのがフィロメナの期待だ。

「言いたいことは分かるけれど、限度はあるよ。――トマトが数日で育てられる化け物植物ならできなくはないだろうけれど」

「やっぱり無理か」

 多少自分が無理なことを言っていることを理解していたフィロメナが、シゲルの言葉に残念そうな表情になった。

 

 その顔を見たラウラが、慰めるように言った。

「少しくらいは仕入れを増やしてくれるかもしれません。完全に諦めるのはまだ早いですよ。ただ、やっぱり限度はあるでしょうね」

 いくらおかみさんが頑張ったからといって、いきなり倍以上の仕入れをすることは無理だろう。

 ついでに、そんな量のトマトを仕入れたとして、今度はシゲルとラウラがそれだけの量を処理できるのかという問題が出て来る。

 どんなに頑張っても倍以上にすることは難しいというのが、シゲルとラウラの結論だった。

 

「残念だが、仕方ないか」

 そう言ってため息をつくフィロメナに、シゲルは少しだけ笑いながら言った。

「本格的に料理屋を開くとかなら駄目だろうけれど、あくまでも学園の祭りの屋台だからね。自分たちにできることだけをすればいいと思うよ。まあ、あとはそれこそおかみさんたちに任せればいいんじゃないかな?」

 シゲルは基本的に、自分だけが頑張って流行を作り出そうとは考えていない。

 家庭の料理として広まってくれれば一番いいと思っている。

 そのためにある程度の認知される必要はあるが、それより先は一般家庭で受け入れられるかどうかでしかないというのがシゲルの考え方である。

 

 とにかく、シゲル屋台の一日目は無事に終わったので、あとは次に向けてしっかり準備をしようと結論を出すシゲルであった。

というわけで、あまり量は増やせません。(繰り返しw)

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