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(13)大聖堂で気付いたこと

 アマテラス号に戻ったシゲルは、操縦席に音を立てて座った。

「あ~、疲れた。やっぱり余計な視線があると、変に気を使うよね」

 シゲルがそう感想を漏らすと、フィロメナたちは顔を見合わせつつ苦笑をしていた。

「そう言ってやるな。あ奴らも仕事だからな。どうせ上に言われてやっているのだろう」

「まあ、それは分かるけれどね」

 フィロメナの言葉に、シゲルも頷き返した。

 シゲルたちの行動を監視している六人の中には、なんでこんなことをという顔をして業務(?)についている者もいた。

 その顔を見れば、上から言われて仕方なくついているのだということは、考えなくてもわかる。

 

 ぐったりとしているシゲルを見ながら改めて苦笑をしたフィロメナは、ほかの面々を見た。

「それで、どうする? 明日も続くようなら抗議をすることも可能だとは思うが?」

 フィロメナがそう問いかけると、ミカエラが少し考える様子になってからシゲルを見て言った。

「その前に、シゲルが大聖堂で言いかけたことを聞かない? なにか、気付いたことがあるんでしょう?」

「あ、そういえば、そうだね」

 ミカエラに言われて、シゲルもその方がいいかと頷いた。

 

 シゲルは、一瞬ラグを見てから、改めて女性陣を見回しながら言った。

「あの大聖堂。多分だけれど、精霊が管理していると思うよ。ほかの遺跡と同じように、大精霊が関わっているかまでは分からないけれど」

 シゲルのその言葉に、フィロメナは一度ミカエラと顔を見合わせてからため息をついた。

「やはりそうか。シゲルのあの言い方で、そんな気がしたんだが……」

「あの場では話せなかったでしょうからね。でも、私は気付かなかったわよ?」

「あれ? そうなの?」

 ミカエラが付け加えると、シゲルは首を傾げながらそう聞いた。

 シゲルは、ラグの様子を見て気付いたというのもあったのだが、ミカエラであれば気付いていたのではないかと思っていたのだ。

 

 そんなシゲルに、ミカエラは頷き返しながら続けた。

「そうよ。言っておくけれど、そもそも精霊の気配なんて、そう簡単に気付けるものではないんだからね? シゲルは、常にラグたちが傍にいるから気付きやすくなっているんじゃない?」

「あー、そんなこともある……のかな?」

 シゲルがそう聞きながらラグを見ると、ラグはコクリと頷いた。

「確かにその可能性はあると思います。シゲル様は、傍に精霊がいるのが当たり前という状況になっていますから、慣れた気配以外に敏感になっているのでしょう」

「ほう。そんなこともあるのか」

 ラグの説明に、フィロメナが感心した様子で頷いた。

 

 そして、それを見ていたラウラが首を傾げながらミカエラを見た。

「ほかの精霊使いも同じなのでしょうか?」

「それはないわよ。勿論、普通の人とは違って、気配に敏感になっているというのはあるでしょうけれどね。シゲルみたいにはならないわ」

 通常、精霊使いは、シゲルのように四六時中一緒にいるわけではなく、必要な時だけ呼び出すという形式が多い。

 力の強い精霊使いであれば、契約した精霊とずっと一緒ということもあるのだが、逆にそれほどの力があれば、精霊自体も強いということになり、シゲルのように複数の精霊と契約することが少ない。

 結果として、シゲルのように、契約している精霊と違う精霊の気配に強くなるということは、あり得ないということになる。

 ただし、エルフのように元から精霊の気配を感じ取り易いという種族もいるので、契約精霊の有無が精霊の気配を感じ取る能力に直結しているわけではない。

 

 ミカエラの説明に納得の顔で頷いていたラウラは、少し頭を下げてから言った。

「ごめんなさい。少し話がずれてしまいましたね。それで、大聖堂を整えているという精霊は、詳しくはわからないのですか?」

 ラウラがそう聞きながら視線を向けたが、シゲルは首を左右に振った。

「残念ながら、そこまでは分からなかったよ。それに、精霊本人があの場にいたというわけじゃないし」

「そうなのか?」

 フィロメナがそう聞き返すと、シゲルは頷いた。

「うん。以前にいたんじゃないかという、薄い気配を感じただけだよ」

「……そんなものを感じ取れる自体が、普通じゃないと分かっているんでしょうね」

「さすがに、それはわかるよ」

 ミカエラがそう突っ込みを入れると、シゲルは苦笑を返した。

 

 いつものようなシゲルとミカエラのやり取りを見ていたマリーナが、間に割ってはいるように言った。

「それで、本当に精霊がいるとして、目的はなんでしょうね」

 これまで会ってきた三体の大精霊は、遺跡を維持するという目的で都市のメンテナンスを行っていた。

 だが、今いるヨーデリア遺跡は、遺跡全体を維持している様子はない。

 フィロメナが確認するようにシゲルを見ると、シゲルは頷きながら言った。

「ほかのところでは、精霊がいるような気配は感じなかったよ。ただ、監視がいて気が散っていたせいで、感じ取れなかったということもあり得るけれど」

 シゲルはそう答えながらラグを見た。

 

 シゲルから視線を向けられたラグは、首を左右に振った。

「私にもわかりませんでした」

「ふむ。ということは、大聖堂だけということになるな。これまでのように、大精霊が管理しているわけではないということか」

「どうかしら? 単に、大聖堂だけ守れればいいと考えているかもしれないわよ?」

 フィロメナの推測に、ミカエラが別の意見を出して否定した。

 どちらの意見も正しいと思えるだけに、この場で判断することはできない。

 

「大聖堂を守っている精霊がもし本当にいるとしたら、私としては少し気になることがあるのだけれど?」

 マリーナがそう言うと、シゲルも同意するように頷いた。

「だね。恐らく自分と同じだと思うよ」

「あら。なにかしら?」

「このタイミングで、国と教会が同時に出てきたとういうことに、その精霊が関わっていないのか」

 シゲルがそう言うと、マリーナは正解と言いたげににこりと笑った。

 

 そのシゲルの言葉に、フィロメナが懐疑的な表情になった。

「それは、考えすぎではないか? これまでの成果が評価されて依頼してきたと考えたほうが自然だろう?」

「わたくしもそう思います」

 フィロメナに同意するように、ラウラもそう言ってきた。

「まあね。ちょっとどころじゃなく、強引な考え方だってことはわかっているよ。ただ、そういう可能性も少しはあるかな~と思っただけ」

 フィロメナとラウラの意見に、シゲルはそう答えた。

 

 実際、シゲルも今回の件の裏に精霊が関わっていると確信しているわけではない。

 それどころか、今のところはただの思い付きで、妄想か陰謀論の類に近い想像でしかないと考えている。

 それでも敢えて言葉にしたのは、そういう可能性がまったくないと切り捨てるだけの材料がなかったからだ。

 ついでに、マリーナがわざわざ話を振ってくれたからというのもある。

 

 シゲルとマリーナが本気でそう考えているわけではないと分かったのか、ミカエラが頷いていた。

「まあ、それは今考えなくてもいいんじゃない? とりあえず、依頼通りに遺跡の確認をすれば」

「そうだな。もし、気付いてほしいのなら、精霊からアクションがあってもおかしくないだろう」

 ミカエラに続いてフィロメナがそう言うと、シゲルも頷いて応じた。

「それもそうだね。とにかく、まずはここの遺跡の調査が大事――――なのはいいけれど、あの人たちの対処はどうするの?」

 ずっと張り付いていた監視のことを思い出したシゲルは、顔をしかめながらそう聞いた。

 

 それを見て、本当に嫌なんだなと理解したラウラが、一度だけ頷きながら言った。

「もし、明日も続くようでしたら、わたくしが話をしましょう。ただ、命令が王都から来ているようでしたら、すぐに取りやめることはできないでしょう」

「ああ。まあ、それは仕方ないんじゃない?」

 シゲルがそう言うと、残りの三人も同時に頷いた。

 神官はともかく騎士の場合は、軍人でもある以上、上からの命令は簡単に撤回することはできないことは、考えなくてもわかる。

 

 結局、余計な監視については、翌日に対処するということで、この日の話し合いは終わるのであった。

なんか、書き上げるのに、妙に時間がかかってしまいました。(つд⊂)エーン

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