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精霊育成師の異世界旅行 ~レア素材ゲットで、おとも精霊が急成長!?~ 作者:早秋

第10章 精霊育成師

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(13)交信の魔道具

 アマテラス号から戻ったシゲルたちは、含み笑いをしているミカエラ&マリーナと、妙に平坦な表情になっているユリアナ女王に出迎えられた。
 そして、シゲルたちが入ってくるのを見たユリアナ女王が、一言。
「君たちは、ここに来るたびに特大級の騒ぎを起こさないと、気が済まないのかな?」
 その言葉に嫌味が含まれていないことが、なおユリアナの気持ちを表しているとも言えるかも知れない。
 シゲルはその言葉を聞いて心の中で「ひええ」という声を上げていたが、一緒に着いて来ていたラウラが少し前に出て言った。
「あら。では、これから先の情報は必要ないということでしょうか?」
「それこそまさか、よ。きっちりと話してもらうわ。今のはただの愚痴よ」
 シゲルとしては、そんなことを国のトップに立つものがあっさりと暴露していいのかとも思ったが、敢えて感情を表に出すこともあるので、油断はできない。

 ユリアナの話はともかくとして、シゲルたちは最初から遺物に関する情報はすべて出すつもりでいた。
 その先、この遺物をどう扱うかは、それこそノーランド王国次第だ。
 シゲルたちは、要請がない限りは関わっていくつもりはない。
 それは、ノーランド王国での調査を始める前に、皆で話し合ったことでもある。

 そのことを頭の中で思い出しながら、椅子に勧められて座ったシゲルは、話を始めた。
「もう報告は聞いているでしょうが、あちらの遺物は通信を行うための魔道具になります」
 シゲルは「あちら」と言いながら、相変わらず部屋の片隅に鎮座している遺物を指した。
「そちらのミカエラから大きさについての質問がありましたが、恐らくですが、必要だったからとしか答えようがないでしょう」
「あれよりも小さく作れる技術があるのにか?」
 そう聞いてきたのは、フィロメナだった。
 勿論、ユリアナの会話の邪魔にならないように、事前に確認をとってから話をしている。

 その微妙なやり取りに気付きつつ、シゲルは頷いてから続けた。
「自分は通信の魔道具のことを詳しく知らないけれど、それは複数の相手に話ができる物?」
「いや、それは無理だが…………まさか?」
 シゲルの問いをすぐに否定したフィロメナは、なにを言いたのか理解して少しだけ驚きを示した。
 シゲルが周りを見れば、ユリアナも含めて驚いていることが分かった。

 シゲルは、それらの反応に頷いた。
「そう。多分だけれど、ここにある通信具は、複数を相手にして同時に会話することができる魔道具だと思うよ」
「……そういうことか。だから、これほどの大きさが必要と」
 通信の魔法は、一対一の会話を行うだけでもかなりの技術と魔力を必要とする。
 それが、複数の相手から受け取るとなれば、それだけ魔術の構成も複雑になり、より多くの要素を詰め込まないといけないはずだ。
 それを魔道具という形にするには、大きさを犠牲にしなければならないということは、魔道具の知識が多少でもある者であればすぐに理解できることだ。

 納得して頷いているフィロメナに、シゲルは付け加えるように言った。
「技術的な理由だけじゃないと思うけれどね」
「というと?」
「複数を相手に会話するって、別に二人とかじゃないから。何人も相手に一人だけで対応できると思う?」
「……ああ。なるほど」
 シゲルが複数の人が使えるようになっていると気付いたのは、そもそも遺物についているつまみやらボタンが、同じような配置で複数個所にあるためだ。
 その配置から見て二人同時に操作できるのではないか、というのがシゲルの予想である。
 ちなみに、通信具であることに気付いたのは、そのあとのことだ。

 
 シゲルの話を聞いて考え込んでしまったフィロメナに代わって、今度はマリーナが問いかけてきた。
「大きさについては分かったわ。でも、不思議なのは、なぜあれが未だに使える状態にあるのかが不思議なのよね?」
 いくら魔道具といえども、きっちりとメンテナンスをしていないと長い間使えるはずがない。
 その修理は、一体誰がやっていたのかという問題がある。
「それは自分が答えるよりもミカエラ……じゃなくてユリアナ女王のほうが詳しくご存じではありませんか?」
 シゲルはマリーナにそう答えながら、ユリアナへと視線を向けた。

 その視線を受けて、ユリアナはじっとシゲルを見てから肩を竦めた。
「貴方は、どこまでのことを知っているのかしら? いえ、それとも、それが『精霊育成師』としての力なのかしらね?」
「それは誤解ですよ。ただ単に、遺跡との関係を考えて、それしか理由が思い当たらなかっただけです」
「そう。まあ、とりあえず、そういうことにしておきましょう。――あなたの予想通りに、メンテナンスは精霊が行っているのよ。私はあれが魔道具だとは知らなかったけれどね」
 ユリアナは、以前の王からの申し送りの際に、あの遺物には精霊がついているようだという話は聞いていた。
 それがまさか、魔道具のメンテナンスのためだということまでは聞いていなかった。
 水の大精霊を大事にしている国柄だけに、女王が精霊を大切に扱うのは当然のことなのだ。

 シゲルが言ったことは本当のことだ。
 魔道具は魔法を基礎にしているとはいえ、道具であることには違いない。
 人の手で作られたものが、そのまま長年放置されたままでいて、いざという時に使えるわけがない。
 誰かの手でメンテナンスがされていると考えるのは当然のことだった。
 ましてや、この国には水の大精霊(ディーネ)が存在している。
 直接ではないにしろ、彼女がこの遺物に手を貸していると考えるのは、自然な流れだった。

 
 シゲルの言うことを、ユリアナがどこまで信用したのかは分からない。
 ただ、シゲルとしても本当のことだけにそれ以上の説明はできない。
 そんなことをシゲルが考えているとは知らずに、ユリアナはシゲルに向けていた視線をラウラへと移した。
「それで? 貴方たちはこの宝――いえ、魔道具をどうするつもりですか?」
 本来の持ち主がそんなことを言ってくること自体がおかしいのだが、ユリアナはごく自然にそう聞いてきた。

 超古代文明のことに関しては、フィロメナたちが周辺各国から注目を浴びていることはよく理解している。
 その上で、フィロメナたちがこの魔道具のことを公表すると言えば、ユリアナに止められるものではないのだ。
 勿論、女王としての権力を使って無理やり抑えることはできるだろうが、それは一時的なものであって、動きを察知したほかの国から責められて終わるだろう。
 そのことは、ユリアナ自身が良くわかっている。

 ユリアナの問いに、ラウラは軽く首を左右に振った。
「そうですね。できればこの遺物が超古代文明の遺物だということは公表してほしいところですが、それ以外は特になにも」
「えっ、それだけでいいの?」
 思っていた以上に少ない要求に、ユリアナは思わず素の表情でそう返してしまった。
 そもそもユリアナは、目の前にある遺物が、ただの宝石や祈りの対象ではなく魔道具だと分かった以上は、各国に公表するつもりでいた。
 それが、ノーランド王国にとって利益になるということもきちんと考えたうえでのことである。
 それくらいの計算はラウラにも当然出来ていると考えていたからこそ、彼女が言ったことが予想外だったのだ。

 そのユリアナの反応に、ラウラは小さく頷いた。
「はい。もともとわたくしたちは、あの祠が超古代文明の遺跡であることが証明できれば良かったですから」
「そう」
 ラウラの言葉に、ユリアナは短くそれだけを答えた。
 勿論、頭の中では「なるほど」と納得していた。
 あの祠が超古代文明の遺跡だとすれば、それを公表するだけで彼女たちがやっていることの助けになることは理解できることなのだ。

 これで政治的な話は終わりと言わんばかりに、ユリアナは視線をシゲルへと向けた。
「ところで、今の話をしていて思い出したのだけれど、これが通信の魔道具だとすると、あの祠はなんのための場所だったのかしら?」
 この問いに、シゲルは首を左右に振った。
「さすがにそこまでは、わかりません。もしかしたら、という考えはありますが、今はまだ決めつけない方がいいと思います」
「そういうことね。わかったわ。私もこれ以上聞くのは止めておきましょう」
 シゲルの答えに、ユリアナはそう言いながら頷いた。
 それには、確証のないただの推論を聞いても仕方ないという考えもあり、これ以上を無理して聞いてシゲルに引かれても困るという思いがあったのだが、それを顔に出すことはしないユリアナであった。
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