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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第9章 XXXX

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(4)新しい魔道具

 シゲルがディーネから結晶石をもらったり、ラウラと話をしている間、勇者組の三人は着々と遺跡の調査を進めていた。
 ただ、遺跡の調査といっても、すでに全体の確認は終わっているので、それぞれが今後の参考になりそうなものがないかを調べているのが現状だ。
 水の町からは、一度魔道具や資料を持ち帰っているので、さすがに再度の持ち帰りをするつもりはない。
 この遺跡が、ただの放置された本当の意味での遺跡であるならば、なんの遠慮もなく持ち帰るところだが、水の大精霊自らが管理・維持している町なのだ。
 管理人(精霊?)がいる以上、この町は遺跡ではない。
 そのため、この場から物を持ち去ることは、ただの窃盗になってしまうのだ。
 いくら管理人の許可があるとはいえ、いくつも持ち帰るのは避けたいということに決めていた。
 また、だからこそ、ディーネもシゲルたちが水の町に入ることを許可しているのである。

 一日の調査を終えて夕食の席に着いていたシゲルたちは、いつものようにちょっとした報告会を開いていた。
「――それじゃあ、結構参考になりそうな魔道具があったんだ」
「うむ。しかも、今の技術でもできる素材で作れる物だな」
 シゲルの問いかけに、フィロメナが頷きながらそう答えた。

 フィロメナが遺跡を調査するのは、今ある魔道具をより発展させるためである。
 超古代文明は、現在よりもはるかに発達した魔道具作成技術があるため、研究する価値は十分すぎるほどにある。
 遺跡でなにかを見つけるたびに、新たな発見があるというのが、現状なのだ。
 そんな中で、この日はより今の状況を改善するための魔道具の発見があったのだ。

 満足げな表情になっているフィロメナを見ながら、シゲルが興味を覚えたような顔になって聞いた。
「へー、それってどんな道具?」
「これだな」
 フィロメナはそう言いながら、アイテム袋の中からとある道具を取り出して見せた。
 そして、その魔道具に皆の視線が集まった。

 フィロメナが持っている魔道具は、四角い箱の上にお椀のようなものが乗っている形状をしていた。
 見ようによっては、小さめのトロフィーのようにも見える。
「それはなにに使う道具?」
 魔道具と言っている以上、ただの飾りであるはずがなく、使い道があるはずである。
 ただ、その形からは、なんのための道具なのかは全く想像がつかない。

 それはシゲルだけではなく、ほかの面々の同じだったようで、同じような顔をしながらフィロメナを見ていた。
「これはな。なんと、魔力が抜けた魔石に、魔力を再充填するための魔道具だ!」
 ババーンと効果音さえつきそうな勢いで言ってきたフィロメナを見て、シゲルは首を傾げながら聞いた。
「えーと、それってやっぱりすごいのかな?」
 効果的には充電池のようなものかと考えていたシゲルに、ほかの者たちの視線が集まった。
 大発見だと言いたげに発表したフィロメナは、ガクリと肩を落としている。

 それらの反応を見て、またやってしまったと理解したシゲルは、恐る恐る聞いた。
「ええと? やっぱりすごい魔道具なのかな?」
「そうに決まっているわよ! 今まで使い捨てだった魔石が、何度も使えるようになるってことなのよ!?」
 どうだと言わんばかりの勢いでミカエラがそう言ってきたが、充電池を知っているシゲルとしては、あまりピンとはこない。
 勿論、充電池が世に出てきたときのような衝撃だということは理解しているのだが、ごく普通に使っていた身としては、そこまで驚くようなことでもないのだ。

 シゲルのその様子を見て、発表者(?)であるフィロメナが、首を振りながらミカエラの肩をポンと叩いた。
「もう、シゲルに関しては、諦めよう」
「…………そうね」
 はっきりと一言ずつフィロメナから言われたミカエラは、達観したような顔になって頷くのであった。

 なにやらシゲルにとってはよろしくないやり取りがされたが、こと道具に関してははるかに進んだ文明から着ているので、こればかりは仕方ない。
 要は、魔力を使うのか、電気を使うのかの差くらいしかないので、似たような発想になってしまうのかというのが、シゲルの感想だった。
 そんな状態なので、無理に驚いて見せるのも変な感じになってしまうため、シゲルとしては素の自分を見せるしかない。

 フィロメナとミカエラのやり取りを聞かなかったことにしたシゲルは、改めてフィロメナが持っている魔道具を見ながら聞いた。
「それで、その道具を使えば、どれくらい繰り返しの利用ができるの? まさか、永遠に使えるわけじゃないよね?」
 充電池のことを考えてそう聞いたシゲルだったが、フィロメナは深くため息をついてから答えた。
「シゲルは、本当に渡り人なのか? 実は、過去から飛んできた時間移動者じゃないだろうな?」
 あまりにも的確な聞き方をしてきたシゲルに、フィロメナとしてもそう驚くことしかできなかった。

 さらにもう一度ため息をついたフィロメナは、シゲル以外のメンバーを見ながら続けて言った。
「シゲルが言った通り、これは無限に使えるというわけではない。魔石の大きさや質によっても変わってくるが、再利用できるとしても最大で十回くらいだろうな。あと、ここに入る大きさの魔石が限度だ」
 フィロメナは、ここと言いながらお椀の部分を指した。
 当たり前のことだが、そのお椀の部分に魔石が入らなければ、魔力の充填はできないのである。
「そう。その辺りは、普通の充填と変わらないのね」
 フィロメナの説明に納得したのか、マリーナが頷きながらそう答えた。

 現在、魔道具のために使われている魔石は、魔力が扱える者によって充填して使われている。
 ただ、その充填も回数に制限があるとされているのだ。
 その制限を超えて使おうとすると、魔石に貯められる魔力が少なくなって、魔道具のために使おうとしても出力が足りなくなってしまう。
 制限がどれくらいの回数なのかは、その魔石の大きさや質によってことなっていて、一概に何回までとは言えない。
 ちなみに、各国が国宝として扱うような魔石の場合は、その制限が無制限だともいわれている。

 フィロメナが説明した回数は、あくまでもお椀のところに入る大きさの魔石ということを考慮した結果の数でしかない。
「――まあ、実際にはやってみないと分からないが、それでも倍を超えるようなことはないはずだ。それに、この魔道具の凄いところはそこではないからな」
「ええと? どういうこと?」
 意味が分からずに首を傾げたシゲルに、フィロメナがさらに説明を加えた。
「魔力を上手く扱えない者でも、魔石に魔力を補充できるということだ」
「あ、なるほど」
 フィロメナの説明に、シゲルは納得して頷いた。

 これまで魔道具が広く一般的にならなかった理由のひとつに、維持管理をするのが難しいということがあった。
 魔石に魔力を補充できるのが、きちんとした魔力の扱いを習った者しかだめで、どうしてもその部分でコストがかかってしまう。
 もしこの魔道具が大量生産できれば、その分のコストがかからなくなる。
 魔道具を一般的に広めるという意味においては、これ以上ないと言えるほどの魔道具なのである。

 フィロメナが見つけた魔道具は、今の世界にとってはいいことばかりの物と言えなくはないが、問題が全くないわけではない。
「そうなると、今度は魔石の量が問題になってきますね」
 すぐにその問題点に気付いたラウラが、フィロメナが見ながらそう言った。
「その通りだな。もし普通の家庭に魔道具が溢れるようになれば、間違いなく魔石が足りなくなって、値段も高騰するはずだ」
 フィロメナもそのことには気付いていたので、難しい顔になって頷いた。

 魔道具に使う魔石の需要が伸びて値段が上がれば、その分魔石を狙う冒険者が増えることになる。
 魔物のことを考えれば、最初のうちはそれでも構わないかもしれないが、あまりに冒険者の数が増えすぎても問題が多くなるのだ。
 それはもちろん、町の治安といった意味でだ。
 さらに、その需要が落ち着いて、魔石の値段が下がり始めた時には、失業者が大量に出てしまう可能性もある。
 魔石に魔力を補充する魔道具は、便利すぎるがゆえに、そんな問題点もはらんでいるのであった。
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