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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第9章 XXXX

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(3)渡り人と精霊

 大精霊から結晶石を貰えたことによって、あとは現在作成中の木と土、そして今のところ契約できていない土が残り一個となった。
 ディーネからは呼び出して契約するか、あるいは結晶石だけでも貰えるのではと提案されていたが、ミカエラの様子を見て、それは控えることにした。
 もし、土の大精霊を自ら呼び出して、さらに契約までするとなったらどんな扱いになるか分かったものではない。
 フィロメナ辺りに知られれば、今更だと笑われるかもしれないが、それはそれ、である。
 既に手遅れかも知れないが、シゲルとしてはあまり注目された人生を送りたいとは思っていないのである。

 手に入った結晶石を『精霊の宿屋』へとシゲルが仕舞う様子を見ていたリグが、不思議そうな顔で聞いてきた。
「進化はしないの?」
「ああ。折角だから皆一緒にしようと思ってね。今まで一緒だったからその方がいいかなと」
「そう? 私たちは気にしないよ?」
 リグたちにとっては、進化はシゲルを守るための手段であって、目的ではない。
 そのため、誰が精霊としての力が優れているのかは、あまりこだわっていないのだ。
 ただ、力が強くなれば、その分シゲルと『精霊の宿屋』を守ることもできるので、その分のこだわりはあるかも知れない。

 あっさりとしたラグの言葉に、シゲルは苦笑しながら首を振った。
「今のところ来る外敵もさほど強いというわけじゃないからね。焦って上げる必要もないよ」
「ふーん。まあ、シゲルがそう言うんだったらそれでいいのだけれど」
 シゲルにはシゲルなりのこだわりがあるのだろうと、リグもそれ以上深く追及してくることはなかった。
 わざわざ聞いてきたのは、自分たちが三体同時の進化にこだわっていると、シゲルが考えているのではないかと思ったためだ。
 いたずら好きなところがあるリグだが、こうした細かいところでの気遣いもできるのである。

 結晶石を取り込んだ後で、初期精霊三体の状態を確認してみると、きちんと進化ができるようになっていた。
 リグに説明した通り、すぐに進化をさせるつもりはないので、今は出来ることを確認するだけで終えた。
 結晶石が揃った段階で強制的に進化させられていればそれはそれで構わないとも考えていたのだが、そんなことは起こらなかったのでシゲルとしてはちょっとだけ安心していた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シゲルたちが水の町に来たのは、何も遊びに来たわけではない。
 これまで進めてきた超古代文明に関する調査に、さらに深みを出すために来ているのだ。
 今回の訪問では、魔道具などの持ち帰りはなしということに決めていた。
 いくら大精霊からの許しがあるといっても、何度も繰り返し持ち帰ってしまえば、それは窃盗とほとんど変わらなくなってしまう。
 そのため、今回の遺跡訪問では、例えばフィロメナであれば遺跡にある魔道具を作るための手順を知るなど、それぞれに目標がたてられていた。

 フィロメナたちが古代文明の遺跡を調査するにあたって、それぞれの分野というものがある。
 フィロメナであれば魔道具関連、ミカエラは精霊術及び精霊に関して、そしてマリーナであれば宗教関連といった具合だ。
 ここで中途半端な状態のがシゲルとラウラである。
 ラウラの場合は、遺跡に来ること自体が初めてに近かったので、明確な目標というのが持てていなかった。
 それはシゲルも同じで、この世界にきてその遺跡で何を知りたいかと言われても、具体的に何というものがなかったのである。

 一応シゲルの場合は、渡り人に関してという目的はあったが、アビーとタケルの日記を調べていくうちに、とある結論が導き出されていた。
 それがなにかといえば――――。
「ということは、やはり渡り人が元の世界に戻るのは不可能ということですか」
 何の調査をするかということで話し合っていたシゲルとラウラだったが、渡り人に関する話になったところで、ラウラがそう聞いてきた。
「うん。残念ながらね。精霊神に会って話を聞いたと書いてあったから、まず間違いないだろうね」
 シゲルがその文言を見つけたのは、タケルの日記を調査しているときのことだった。
 それが書かれていたのは、日記の最後の方だったのだが、タケルはそれを機に旅をすること自体も控えるようになっていた。

 精霊神というのは、大精霊よりもさらに上の存在である精霊で、名前の通り神の一柱としてその名を連ねている。
 精霊神は全部で土・水・火・風・木・光・闇の七体がいると言われている。
 それらの属性は、そのまま精霊の属性と当てはまっている。
 ちなみに、一神教であるソルスター教などは、精霊神はソルスター神が姿を変えたものとされているが、当然ながら(?)真偽のほどは分かっていない。
 精霊神に会ったという話自体、すでに伝説どころか神話の域になりかかっているので、確かめる術がないのである。

 そんな精霊神に会ったと記されているとあっさりシゲルが言ったことで、ラウラはため息をついた。
「常識的に考えれば、精霊神に会うことなどありえないのですが……やはり渡り人は特殊ということでしょうか?」
 今のラウラは、タケルが精霊神と会ったということを疑ってはいない。
 それは、シゲルが信じているからということもあるが、タケルをずっと思い続けているエアリアルの存在がいるためだ。
「うーん、どうだろう? 渡り人が特殊だというのであれば、アビーが会っていてもおかしくはないと思うけれどね」
「アビーの日記には書かれていなかったのですか?」
「うん。大精霊には会えたということは書かれていたけれどね」
 アビーは、タケルと違って、人生のほとんどを水の町で過ごしていた。
 そのため、アビーの場合は、出会うこと自体が稀な精霊神と話をする機会がなかったのだと、シゲルは考えている。

 とはいえ、それだけだと渡り人は必ず精霊神に会えるという可能性も残されている。
 ここで引っかかってくるのが、以前シゲルが聞いた「シゲルがいた世界から来た渡り人は、精霊に好かれる」ということだ。
 もしかしたら、ほかの世界から来た渡り人は、精霊神どころか大精霊にさえ会えていないかもしれない。
 そう考えれば、渡り人が特殊というよりも、地球出身の渡り人が特殊ともいえるだろう。
 もっとも、大精霊が答えてくれない以上、それを確かめる手段は今のシゲルにはない。

 シゲルの説明を聞いていたラウラは、そこで小さく首を傾げながら聞いてきた。
「大精霊に確認してみようとは思わないのですか?」
「微妙なところだね。多分、聞いても教えてくれないと思うよ」
 いくら契約をしているからといっても、大精霊はシゲルに対してすべての情報を与えてくれているというわけではない。
 それは、今まで会った大精霊の言動を見ていればわかることだ。
 それに気づいていながら敢えてシゲルが聞いていないのは、大精霊に限らず、精霊には精霊のルールがあると考えているためである。

 大精霊という存在を考えれば、そんなこと気にせずにどんどん聞けばいいなんてことは言えるはずもない。
 シゲルの言葉に納得の表情になったラウラは、頷きながら言った。
「シゲルさんがそう思うのであれば、そうなのでしょうね」
 ラウラが大精霊と会ったのは数えるほどしかない。
 その時も受ける圧力を受け流すのに必死で、そこまで深く見ている余裕はなかった。

「……だと、思うんだけれどね」
 途端に自信なさげにそう言ってきたシゲルに、ラウラはクスリと笑った。
「シゲルさんほど大精霊と対面している方は、私が知る限りでは、今のところどこにもいないです。なので、もう少しだけでも自信を持ってもいいと思いますよ?」
「あー、まあ、そうなのかな?」
 未だに棚ぼた的な認識しかないシゲルとしては、自覚をしろと言われてもなかなかに難しいところがある。
 また、だからこそ大精霊たちもシゲルに対して、あそこまで親しげなのではないかとラウラは考えるのであった。
ようやく精霊の属性が全部出てきましたw
ちなみに、精霊神は全部で七体ですが、大精霊は七体ではありません。
もっと(?)います。
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