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精霊育成師の世界旅行 作者:早秋

第7章 大精霊との契約

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(2)お任せモード

 目的地であるポルポト山には、フィロメナの家を出発してから十日後に着いた。
 この日数は、アマテラス号を最速で飛ばした結果というわけではなく、精霊の採取も含めて、折角なので大陸にある各都市に寄り道した結果である。
 さすがに魔族の領域に入ってからは一直線で向かったため、オパール山脈を越えてからは二日程度しか時間をかけていない。
 魔族の領域で一番手こずったのは、どうやって山越えをするかとルート選択に時間がかかったオパール山脈で、それ以外は特に魔物に襲撃されることもなく、安全な空の旅を楽しんでいた。
 ちなみに、シゲルとしては魔族の領域の土地勘があるのかという心配はあったのだが、大きく迷うこともなく辿り着くことができた。
 これにはきちんとした理由があって、人族から見れば、魔族の領域は不可侵の場所ではあるが、山のような大きな地形は昔からきちんと把握されている。
 そうでなければ、完全な暗黒領域となり、軍での進行も行われなかったはずである。
 いまでもその当時の地図は残っていて、勇者であるフィロメナたちは、その大まかな地形を把握していたというわけだ。

 というわけで、ポルポト山に着いたシゲルたちは、早速火の大精霊に会うために付近の探索……を始めるでもなく、アマテラス号の中で落ち着いていた。
 その理由を、フィロメナがシゲルに向かって言った。
「自分たちで探索をしなくてもいいというのは、楽でいいな」
「まあ、精霊たちにとっては、大精霊の探索はついでだけれどね」
 そう言ったシゲルの言葉に、フィロメナは当然だと頷いた。

 シゲルたちがアマテラス号の中でのんびりできているのは、契約精霊たちが周辺の探索をしてくれているからだ。
 そもそもポルポト山に大精霊がいるというのは、フィロメナたちが風の大精霊(エアリアル)から聞いた情報を元に考えた推論でしかない。
 勿論、過去から伝わっている噂や言い伝えからの推測でもあるのだが、実際にいるかどうかは良くわかっていない。
 ついでにいうと、精霊たちに期待しているのが、遺跡ではなく大精霊の探索になっているのは、過去の文明が魔族の領域にまで及んでいたのかが分からないためである。
 そのためシゲルたちは、探索を完全に精霊たちに任せて、船の中でのんびりしているというわけだ。

「シゲルの精霊たちに任せていいのは楽だけれど、本当にいいのかという気にもなって来るわね」
 マリーナが苦笑しながらそう言うと、シゲルは首を左右に振った。
「契約精霊たちにとっては、新しい素材を集めるというのは、何よりも重要なことだからあまり負い目に感じる必要はないよ」
 シゲルは、マリーナに向かって、既に何度も言っていることを繰り返した。
 『精霊の宿屋』の仕様のことはある程度知っているマリーナだが、それでも完全に探索を任せるのは気が引けると考えているのだ。
 ちなみに、シゲルはラウラにも『精霊の宿屋』のさわりの部分だけは、すでに話をしている。

 マリーナに対して、今度はシゲルではなくミカエラが言った。
「素材云々はともかくとして、リグたちは喜んで飛び出して行ったから、そこまで気にする必要はないわよ」
「そうなの?」
「うん。シゲルが命令を出した途端に、ね?」
 最後の「ね」のところでミカエラから視線を向けられたシゲルは、コクリと頷いた。
 シゲルが精霊たちに指示を出したときにその場にいたのは、ミカエラだけだったのだ。

 ここで、シゲルたちの会話をこれまで黙って聞いていたラウラが混じってきた。
「シゲル様の契約精霊は、喜んで指示に従っているのですから、あまり引け目に感じるのも間違っているのでしょうね。まあ、マリーナの言いたいことも良くわかりますが」
 基本的に自分たち(の力)だけで物事を解決して来たフィロメナたちは、他者に任せて待つということにあまり慣れていない。
 そのため、ミカエラもあんなことを言っていたが、マリーナの言いたいことも理解は出来るのだ。
 ラウラの言葉は、それをきちんと把握したうえでのフォロー(?)だった。
 付け加えると、シゲルの足元で護衛についていたシロが、ラウラの台詞を聞いてブンブンと首を縦に振っていた。

 それに、探索を精霊に任せているからといって、シゲルたちはただのんびりと過ごしているわけではない。
 今のように話をしながら今後についての相談をしたり、それぞれの研究をしたりとそれなりに忙しい時間を過ごすことになっている。
「――それは私たち自身にしかできないことだからな。シゲルの契約精霊に引け目を感じるよりも、そちらを進めておくべきだろう」
 フィロメナがそう結論めいた意見を出したところで、精霊に関する話はここで終わった。
 シゲルの足元で護衛についていたシロが、首を上下に振っていて、皆の笑みを誘ったというのも理由のひとつだ。
 言葉を話せないシロだが、シゲルたちの会話はきちんと理解できていることは、皆が把握しているのである。

 
 シロの仕草の可愛さに目を細めていたフィロメナだったが、すぐに一同を見回した。
「それはともかく、今後のことだ。精霊たちがどの程度探索できているのかは、きちんと把握できるのか?」
 自分に向かってそう聞いていたフィロメナに、シゲルは難しい顔になった。
「うーん。どうだろう。少なくともどのあたりの探索はしたということは分かるけれど、それがどこまで探索できたかというのは、あまり良くわからないかな?」
 極論をいえば、その場を通り過ぎただけでもその場を探索したということもできる。
 それだけでも目立つものは発見することが出来るが、目立たないように隠れているものは、発見することは難しい。
 それらを含めてすべての探索を終えたかどうかは、『精霊の宿屋』では把握することが出来ない。
 残念ながらどこどこの範囲で探索が百パーセント完了したというようには、表示されないのである。

 もともとそんなことは期待していなかったフィロメナは、当たり前だという顔をして頷いた。
「そうか。それは、人で探索しても同じだからあまり気にすることはない。それよりも、問題はどの程度の探索で切りあげるかだな」
「そうね。いつまでもここにいるわけにはいかないのだから、期限はあらかじめ決めておかないとね」
 フィロメナに続いてマリーナがそう言うと、他の面々も頷いた。
 目的のものが見つかったときはそれでいいのだが、見つからなかったときの為に期限を決めておくことは、絶対に必要なことだ。

 実際に探索を行っているのは、シゲルの契約精霊である。
 そのため、フィロメナたちの視線がシゲルに集まったのは、当然のことだ。
 それらの視線を受けて、シゲルは少しだけ首をひねりながら答えた。
「うーん……。まずは三日、この場所で探索を続けてみようか。それで駄目なら場所を移してまた三日、という感じで」
 三日あれば、一定の範囲内はある程度のことは把握できる。
「なるほど。少し短いような気もするが、シゲルがそう言うのであればそれでいいだろう。――駄目だったとしてもまた来ればいいことだしな」
 フィロメナが最後にそう付け加えると、一同は先ほどと同じように頷いていた。

 魔族の領域では、容易に食料を手に入れることが出来ない。
 勿論、粗食を覚悟するのであれば長期間滞在することもできるが、折角アマテラス号という高速で移動できる足があるのに、わざわざそんなことをする必要はないのだ。
 ちなみに、この世界での魔族は、姿形に大幅な違いがあるというわけではなく、肌の色に違いがあるだけだ。

 
 今後の方針が決まったところで、今回の話し合いは終わった。
 といっても、真面目な話が終わったというだけで、シゲルたちはその後も適当な会話をし続けていたのだが。
 結局この日は、精霊たちは特に変わった何かを見つけるでもなく、ごく普通に採取を行って戻ってきたのであった。
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