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國寺くんのあまりにも当たり前な発言に、ぼくと崇城さんはふたたび困り顔を見合わせる。
「あのう、國寺くん。さっきから、きみが何を言いたいのか、全くわからないんだけど……」
あまりにもミステリアスすぎて、ついていけそうにない。
「そうだな。じゃあ、謝っておく。オレは無駄な情報や無駄な質問をしすぎた。オマエらを混乱させすぎたよ」
――……國寺くんが、謝った?
三度ぼくと崇城さんは顔を見合わせる。
「……えーと、そのう、無駄な情報や質問って、何?」
「たとえば、なんで上履きであんなところにいたんだってやつ。あれは単に、犯人であるはずのオマエが校舎内に残っていたことが不思議で聞いてみただけだ」
「だからワタシは犯人じゃない!」
崇城さんが強気に怒鳴る。國寺くんはスルーする。
「それから二階の下駄箱にいた理由。あんなのに意味はない。しいて言うならアンタの話が矛盾しないかどうかってところだが、伏線にしては弱いだろう」
――……じゃあ、國寺くんは、無闇に話しを掻き回しただけ、ということなのだろうか?
怖くて聞けはしなかった。代わりに白けてみせた。
「…………」
「…………」
「白けるな。それに、ちゃんとオレの中で答えはもう出てる。オレに探偵役は向かないってこともな」
もうやらないぞ。やる機会はないだろうけどさ――
溜息をつく國寺くん。
「答えは出てるって?」
「あとは丸付けだけだ。ところでアンタ、先輩の家に行って、それで先輩には会えたのか」
一向に國寺くんばかり合点して話しを進める。毎度のことだが、崇城さんはぼくを見て呆れてみせる。ぼくは苦笑いするしかない。
「会えなかったわ。インターホンを鳴らしても、誰も出ないの」
「そうか。アンタだったから出なかったのかもな。じゃあ、アンタは隠れながら行くか」
「行くって?」
「先輩の家に決まってるだろう」