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「……國寺くん。今から帰るつもり、ない……よね?」
「わかってんなら何も言うなよ」
「…………」
ぼくは溜息をつく。それから右を向く。家塀にもたれて小さくなっている崇城さんがいる。ちょっと苦笑いすると、苦笑いを返してくる。
「いいから行くぞ」
ぼくは覚悟を決め、目の前の家を見上げた。
どこにでもあるような、平和そうな家。きっと中身も温かいのだろう。
玄関のチャイムを國寺くんは押す。
何気なく表札を見てみると、家族全員の名前が載っている。本当に温かい家庭なんだろうな。
「はい、どちら様でしょう?」
インターホンから女性の声が聞こえてくる。
「あのう、万永先輩はご在宅でしょうか?」
國寺くんが答える。
「……どちら様ですか?」
「昨日、万永先輩が階段から突き落とされたときに傍にいた者です。先輩が今日休んでいると聞いて、心配になってきたんです。どこも怪我していないと聞いてたんですが……やっぱり、どこか怪我でも?」
たたみ掛けるように國寺くんはそう告げる。
「あっ、昨日の……今、開けます」
インターホンが途切れる。しばらく沈黙のまま待っていると、ドアの鍵が開く音がした。
「……さあ、アンタ。出番だぞ」
小声で國寺くんは告げる。
「はい、わざわざ――」
玄関を開けて出てきたのは、万永先輩。出てきたときはじゃっかんの笑顔を見せていたが、出てきて間もなく、その表情は凍りついた。
「……万永先輩」
「……かえちゃん……どうして……」
居心地の悪い空気。わかっちゃいたけど、やはり無理。ぼくは國寺くんを見上げ、本当にこれで良かったのかとアイコンタクト。國寺くんはそれに気付かない。まあ、そんなことだろうと思うけどさ……。
「お怪我は、ありませんか?」
迷った挙句、というのだろう。崇城さんは苦笑いとも不快とも取れない顔で言う。万永さんはそれにぎこちなく頷いた。
「さて、先輩。なんでコイツを犯人に仕立て上げたんですか。コイツは、何も関与していないはずですよね」




