魔×迷宮探索+魔法講座
皆様お久しぶりです。
向こうでも書いていますが何回も消えて書き直してで……
とりあえず書き終えたので投稿します。
ちなみにここで書かれる空間については持論ですので……まだそこまで重要視する内容ではありませんが……
まあ、そのせいで5000字を超えてしまいましたが
それではどうぞ
「『聖剣』が抜かれた、か」
「──どうされましたか?」
王座に座る、身長が二メートル程もある男がぼそりと呟くと、近くに控えていたメイドが問いかける。
「いや、何でもない。そうだな……そろそろ良いかもしれん」
「と、申しますと?」
「ああ、我々も動き出すとしよう。──南大陸の制圧に向けて、な」
男がそう言うと、メイドは膝を着いて
「全ては『魔王』陛下の御心のままに」
と言った。
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──平原、所々に木が生い茂る階層に二人はいた。
「──で、途中から『転移結晶』自体が無く、上への階段すら無かったから下に下にってわけだ」
イリスに現状を説明しながら零刀は歩いているが、その途中で飛びかかってきた狼型の魔物を黒いナニカがが貫き、続いて黒い魔力が飲み込むと跡形もなく消える。
「ん、わかったけど……これなに?」
「何って……触手だろ?」
「あなた……変態?」
「ちげぇよ!誰が変態だ!しかも、この技能は『変態』じゃあなくて『変質異貌』って言う別の技能だ!」
イリスの変態扱いに、一度変態になりかけた零刀が物申す。
……これだけ聞くと零刀が危ないヤツみたいである。
「ハァ、ったく……誰が変態だ誰が」
「グォォォオオ!」
零刀がそうぼやいていると、近くの木の上から大きなゴリラ型の魔物が雄叫びを上げながら飛びかかってきた。
「声上げながら攻撃しに来たら奇襲の意味がねェだろ……『解析』」
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なし Lv123 Age58
種族:豪腕剛力羅
称号:
体力 140000/140000
魔力量 5000/5000
魔力 1000
筋力 150000
敏捷 45000
耐性 99000
魔耐性 67000
〈固有技能〉:剛力 身体強化 威嚇 咆哮
〈技能〉:体術Lv5
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「種族名カッケェな。……ハァ。まあ、【生体感知】で気づいてたから結果は変わらんがな。それに、実験には丁度いいか──『白剣』、【死】を」
左手の『白剣』が紫を纏い、ゴリラの拳を受け止める。
──否、この場合は『受け止める』という表現は正しくないのかもしれない。
何故なら、勢いよく振られていた拳が『白剣』に触れた瞬間に音もなく止められたのだから。
そしてそれは、勢いを、威力を衝撃を、殺した──【死】を与えたということである。
「──【纏わり付く死】」
「グォォォオオ!?」
ゴリラが引こうとした腕にその紫が、【死】が『白剣』を伝って纏わり付くと引くことは叶わずに、動かすことすらできない。
「実験はこんなもんでいいか。──『その紫氷の冷たさは熱を妨げ奪うのではなく、生命を妨げ、奪うものであった』【奪命紫氷】」
瞬間、【死】の、【紫氷】が『白剣』の触れていた所から広がり、豪腕剛力羅を包み込む。
そこにははっきりとした、明確な【死】が存在した。
「実験終了っと。……てかこれ硬そうだがこのまま喰えんのか?──【喰らう者】」
そう言うと零刀から黒と紫が溢れ出し、竜の顎をカタチ取り、実体化した。
そしてそのまま【紫氷】ごとかじり付き、噛み砕いて喰らった。
「……は?」
ひと通り喰らい尽くすと魔力と瘴気に戻り、零刀に還っていく。
「……『ステータス』は、更新されてるな」
「……なに、今の……?竜の、あたま?魔物……?」
『ステータス』を見て情報が更新されている事を確認する零刀に「わけがわからない」とイリスが戸惑う。
「まあ、アレだ。こうやって喰うと対象に届いていない『ステータス』をその分増やせるんだ。……まあ、今のはさすがに予想外だったがな」
「……あなた、人間?」
「さぁな……まあ、それは置いておいて、だ。やっぱり『変質異貌』で変えられるものも俺が喰らってきたものか……そうなるとやっぱこの差異分の『ステータス』の増加は俺に無い要素または因子を喰らって自分のものにしてるってのが当たりっぽいな」
(だとするとやっぱりアレは、あの空間は──)
「……?どうか、したの?」
「いや、わりぃ。物思いにふけってた。──っと、また魔物か」
【生体感知】にかかった方を見ると、背中にいくつも大きなトゲを生やした黒く大きな亀がいた。
「なんかすげぇ硬そうだな……『解析』」
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なし Lv128 Age58
種族:アダマンタートル
称号:
体力 150000/150000
魔力量 4500/4500
魔力 500
筋力 90000
敏捷 48000
耐性 125000
魔耐性 70000
〈固有技能〉:金剛 身体強化 物理攻撃耐性
〈技能〉:魔攻撃耐性Lv8
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「……なんだこの防御特化な上に攻撃力も高ぇバカみてぇなヤツは……まあ、いくらでもやりようは──ん?」
袖を引かれ、そちらを見るとイリスが一歩前に出る。
「私に、やらせて欲しい」
「……大丈夫か?」
「大丈夫、私に、やらせて。このまま、任せっきりはいや、だから──」
魔力がドクンと、まるで鼓動のように脈動する。
そして、ニタリとしか表現できないような笑みを浮かべて
「──殺してあげる!」
瞬間、金と紫の魔力が溢れ出る。
「──『解析』」
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魔力
使用者:イリス
所有性質:『魔』『王』【魔王】
【備考】
あらゆる属性を持つ。
他者を害する『魔』という性質が所有者の眼に留まることにより『魔眼』を開眼する。
『魔』の名の通り惑わすという意味もある。
『王』の本質は自を、他を統べることにあり、支配することにあり、それを強化していくことにある。
『魔』と『王』が合わさることによって【魔王】の性質が現れる。
その本質は二つを掛け合わせた物になる。
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「うわぁ、なんか凄いことになってんな……この感じだとあれか、紫色の魔力が『魔』で金色の魔力が『王』だろうな。んで、それが混ざりあった紫金とでも言えるような魔力が派生した【魔王】ってかんじか」
それにしても、と零刀は続ける。
「二つのチカラの掛け合わせ、か。『王』の自他支配は言ってしまえば自他への干渉。それに『魔』の乱す惑わせると言った性質が掛け合わさり、自分に干渉するなら──」
「あははは!」
「──ああなるのか」
イリスの笑い声が聞こえ、続いてその眼前に【魔法陣】が浮かび上がる。
「──さらに統べる、支配するって感覚が、それによる優越感が心の均衡を乱し、その感情の昂りが自身を支配してるってのもあるかもしれねぇが……」
【魔法陣】が縦に並ぶと放出されていた魔力が収束し、細い光線を放つ。
その光は寸分の狂いなくアダマンタートルの頭部を吹き飛ばす。
「おー、頭飛んだな。俺とお揃い……なんか亀とお揃いってのもヤなもんだな」
「あはははは……」
少しの間、笑い声が響いたかと思うと突然、笑い声が途切れその場に倒れ込む。
「──あ?どうした?」
「大丈夫!──大丈夫、だから」
歩み寄る零刀をイリスが必死に留めて無理矢理身体を起こそうとするが、力が入らないのか途中で崩れる。
「いや、さすがにその状態でそんなことを言っても説得力のカケラもねぇぞ……」
「大丈夫、だから」
(ハァ、ったく世話が焼けるな)
「……てめぇがどう言う事情で意地張ってんのかは知らねぇが、ココには俺とイリス……つまりお前しかいねぇ。この状況でどう言う状態なのかを教えてくれねぇと俺だって対応できねぇし、もしかしたら俺が対応できる問題かもしれねぇ。だから、とりあえずダメ元でもいいから言ってみろ」
「……本当に?怒らない?」
「ああ……つーか何も言わねぇでうだうだしてんと喰っちまうぞ」
「お腹が、空いた」
そんな零刀にイリスはそう答えた。
「……お腹が、空いた──?ああ、空腹か。そうだな、もうそろそろいい時間か」
零刀が周りを見回す。
「魔物もいねぇみてぇだし……飯にするか。【食料庫】」
零刀がそう言うと【空間】が割れ、そこに腕を入れて食べ物を出す。
「……いい、の?」
「ああ、たんと食え」
そう言い食べ始めた零刀を見てイリスはおそるおそる食べ始めた。
「ん、おいし──」
そしてそのまま倒れた。
「……あれ?どうした……って、やべっ、『瘴気』抜くの忘れてた」
そう言うと左眼の眼帯を外してイリスに手を乗せて『瘴気』を除去していった。
「死ぬかと思った」
除去が終わるとイリスはガバリと起き上がりそういった。
「わ、わりぃ。今のマジで悪かった。いつもそのまま食べてたもんだから……つい」
と言うと残りの食べ物から『瘴気』を除去してから渡す。
「……死ねと?」
「違うわ!『瘴気』除去したから食えっつってんだよ!てか、お前は【鑑定眼】やら【魔素眼】とかでわかんだろうが!」
「……ん、本当だ。問題ない」
そう言って食べ始めたイリスを見てため息をひとつ吐くと零刀も続きを食べ始める。
「……本当に『瘴気』塗れのものを食べてる」
「ああ、まあ俺にはこの眼があるからな」
そう言って左眼を指す。
「……そう言えば、それは『魔眼』じゃあないの?」
「ああ、残念なことだがそうなんだ」
「ほんとに残念。もし『魔眼』ならコピーできたのに」
「今初めて『魔眼』って括りに入ってなかったことに感謝したわ」
「それと質問。なに、あれ?」
そう言って指さすのはひび割れ砕け、黒く暗いモノが見える場所。
「ああ、【食料庫】か?『アイテムボックス』みてぇに物を入れられるんだが……まあ、食料以外に入れるものは無いから【食料庫】って言ってるだけなんだけれどな」
「……ん、あれ『アイテムボックス』と違う」
零刀の説明を聞いた上で否定する。
「?どういう事だ」
「原理そのものが、違う」
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「……という訳で、イリスの魔法講座、はーじまーるよー」
「……唐突だな」
いきなりの謎展開ではあるが、零刀も気になるのか、深く突っ込むことはしない。
「まず、『アイテムボックス』の仕組みから。これは『技能』で、使用者が存在する【空間】、それに被さるようにして隣接し、存在する【亜空間】というものにに干渉することでものを出し入れする『技能』」
「ここまで、わかる?」と挟んで進行する。
「続いて、【空間魔法】の【倉庫】について。これは使用者の存在する【空間】の隣に隣接する【亜空間】を【魔法】で擬似的に作り出すことによってそこにものを出し入れする【魔法】」
「へぇー、本ではそこまで書かれていなかったな……」
そう言って素直に関心する。
「次に、『魔法鞄』について。これは最初の『アイテムボックス』に近くて、カバンの中の【空間】を隣接した【亜空間】に繋げ、その隣接した【亜空間】を区切ることによってカバンの中の【空間】が拡張されるってわけ。で、問題は、あなたの【食料庫】」
「おう」
「あなたの場合、隣接する【空間】そのものを作り出して、そこを隔てる【空間の壁】と言えるものを【破壊】して繋げている」
「はぁ、で、どういう事だ?」
「簡単に、言うと私たちが存在する世界を一軒家と考えると、その中のひとつの部屋が自分の【空間】。で、その部屋にある広い押し入れが【亜空間】で、『アイテムボックス』。
『魔法鞄』の場合はこの押し入れとの境界のない部屋になっててそれが手元にある感じ」
「おお、わかりやすいな」
「ん、ありがと。で、【倉庫】が、隣に部屋を作ってそこに扉を付けてものを出し入れする感じで……あなたの【食料庫】が、家の中のあなたの部屋の外隣に、小屋を建てて壁をぶっ壊してものを出し入れする感じ」
「ふぅ、疲れた」と言ってイリスは残りのものを食べ始める。
「……え、なに?それって俺が小屋……つまり小さな世界を作って【食料庫】にしてるってことか?」
「そういうこと。でも、生命が暮らせるほどの大きさも環境も無いから、生命は存在しないけれど、ね」
「……まあ、アレだ。『生産職』だし、ちょっとした【空間】を『錬成』しちゃうことだってあるよな」
そんな感じで、イリスの魔法講座は終わっていった。




