階層主(フロアボス)2―1
不定期中です。
なぜだ!なぜ【戦いたい!!】を投稿しているのにこっちの方がブクマが増えているんだ!
全然嬉しいです有難うございます!
それでは、どうぞ!
そこには赤い、強靭な鱗を持ち、力強く空を飛ぶための翼を持ち、火を吹く─
「さすがにコレは【理不尽】極まりねェだろ」
ソレは、天空の覇者とも呼ばれ、怒りの象徴ともされ、知らぬ者などいない──
「──『解析』」
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なし Lv102 Age 2538
種族:炎竜[魔物]
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──竜であった。
「Lv100超えとか始めて見たぞ…」
(硬い鱗で全身が覆われて──いや、腹に鱗はねェがぶ厚い皮膚があるのか。喉元に逆鱗があって、その奥に魔力を変換するための器官があるのか)
『解析』という技能は本来、『ステータス』を見るという技能ではない。
対象の特徴などを『解析』することによって『ステータス』がわかるというだけなのである。
だからこそ、零刀は『ステータス』よりも炎竜の特徴や弱点などを『解析』していく。
「グオオォォ!」
すると、観察するかのような視線に腹が立ったのか、炎竜が炎の吐息を吐いた。
零刀は『解析』している中で、喉元の器官に魔力が集中してきているのに気がついていたので【土壁】で防ごうとするが
「ウソだろ!?」
炎竜の吐いた吐息が【土壁】を溶かし始めた。
「クッ、マズっ───」
辺りを覆う炎が消えた時には、溶けた【土壁】の残骸のみしか残っていなかった。
「グルァア!?」
が、突然炎竜は飛び立った。
炎竜が先ほどまでいた場所には
「チッ!気づかれたか」
【黒炎】を纏った剣を振り切った体勢の零刀の姿があった。
零刀は【土壁】が溶かされる寸前、【落とし穴】を使って地中に回避していたのだ。
そしてそのまま『錬成』で地面を掘り進めて炎竜の真下から出てきたというわけだ。
「ッ!かすっただけでコレかよ…」
零刀は左腕は炭化し、ところどころ火傷もしている。
(炭化してはいるが『生体魔素』として残っているから修復は容易にできるな。ったく、これだけのダメージのわりに合わねェが、まあ──)
「グルルウゥゥ!」
炎竜の腹から血が噴き出し、零刀を赤く染める。
口の周りに付いていた血を舐め取り、ニタリと口角を上げて
「まずは、一撃ってなァ」
と言った。
「だがまァ、そこまで深くはいかなかったか。しかもこの感じ、『再生系統』の『技能』持ちかよ」
傷口を見ると、徐々にではあるが治っていくのがわかる。
「『黒き炎は刃を成し、我が敵を切り裂くが為に天を駆ける』【破黒飛炎斬】!」
黒炎の刃を飛ばすが、普通に躱され、そのまま【火球】を放ってくる。
「…まァ、躱せるよな。アッチの攻撃は届くクセにコッチの攻撃は当たンねェ……めんどくせェなァ」
迫り来る【火球】を『瞬動』も使いながら躱していく。
(このままだとヤベェかもな…向こうの魔力切れでも狙うか?……いや、たぶんコッチが先に尽きるな。かと言って攻撃が当たるわけでもねェしな──っと、『解析』が終わったか。血を取り込んだから『解析』の効率はだいぶ良くなってるハズなんだがな…)
「『ステータス』の解析結界を開示」
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なし Lv102 Age 2538
種族:炎竜[魔物]
称号 炎の支配者
体力 50000/50000
魔力量 46000/48000
魔力 32000
筋力 60000
敏捷 10000
耐性 50000
魔耐性 12000
〈固有技能〉:炎熱耐性 炎支配 竜鱗
〈技能〉:火属性魔法Lv10 自己修復Lv3
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そこには明確なまでに、それこそ【理不尽】と言える差があった。
(クソッ!どうすればいい!?)
零刀が『瞬動』を使えば地面を【火球】が溶かす。
(相手の攻撃は当たりどころが悪けりゃ一撃死も有り得る)
なかなか当たらないことに不満を持った炎竜は自ら接近し、至近距離で炎の吐息を放つ。
それを『瞬動』で前に出ることで躱す。
「【破黒炎纏】!ハッ!」
黒剣で斬りつけるが金属同士をぶつけたような音をだして弾かれる。
ビキリ、という音とともに鱗にヒビが入った。
(それどころかコッチの攻撃は鱗一枚にヒビを入れるので精一杯──)
すれ違いざまに炎竜の尾に薙ぎ払われ、吹き飛ばされる。
(──どう、すれば──、っ!マズイ!)
炎竜は鱗を砕かれたことに怒り、零刀が今まで見たことが無いレベルの魔力を喉元に集め【火属性】に変換していく。
それは炎竜の全力での攻撃である。
「『我が眼前にあるは護るべきものを護るための、脅かすものを否定する堅牢なる壁』、『錬成』【堅牢なる城壁】」
零刀の目の前に巨大な、それこそ【城壁】のような壁が現れる。
しかし、炎竜の全力での吐息を防げるかと言われれば
(まだ、たりねェ!なら──)
再び、紡ぐ。
「『我が眼前の城壁は土色でもなく、鈍色や銀色の輝きを放つわけでもない。それはただただ、黒の耀きを放っていた』──『変異』【黒耀石】──」
「グオオオオ!」
炎竜が炎の吐息を放つと同時に
「──『変異錬成』!【黒耀の城壁】!!」
城壁が黒い輝きを放つ。
それと同時に、炎竜の吐息がぶつかる。
(コレなら大丈夫だな。黒耀石に『変異』できるかは不安だったが……案外上手く行くもんだな。黒耀石を『解析』しておいて良かったぜ)
黒耀石の城壁は吐息の魔力を【吸収】し、自らを強化している。
それはまるで──
「──俺みたいだって思わねェか?」
そんなことを言って口角を上げる。
(まあ、防御はこれでいいが、攻撃がなァ……ちまちまやったところで回復されるし、何より魔力が持たねェだろうしなァ)
そして左手を持ち上げ──
「仕方ねェ、不確定要素が多すぎるが、死ぬよりは、何より【理不尽】に屈するよりはマシだ」
──左眼の眼帯を取り払った。
「さァて【理不尽】、文字通り死力を尽くしてテメェを【否定】してやる」
紅と紫の瞳が獰猛な耀きを放った。




