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あの時の君は  作者:
3/13

-3-

 俺が教室に入るのと同時にヒソヒソと囁かれるように充満していた声がピタリと止んだ。

 って事は、その囁き声で交わされた言葉の内容は俺のことっていうわけか。

 なんて分かりやすいんだろうな君達は。


「ホラ、かわいそ~。恋人を寝取られちゃって」


「でも、それが本来の姿じゃない?」


「そーそー。可愛くもない平凡に、ヨウ様の恋人は務まらなかったんだよ」


「マナト様とヨウ様。お似合いの恋人同士だよね!」


 きゃいきゃいはしゃぐチワワ男子を尻目に自分の席に着いた俺は、通学路では感じなかった重たい“何か”に、胃と背中が圧迫される感覚に陥った。


 ……気が付かなかったけど、俺……ヒョウに結構助けられてた……のか?


 振られた時から俺を振り回すヒョウ。

 たった一時間くらいの対話しかしていないのに、どうにも頭を占めていたのがあの不良様だったからな。


 ……俺を慰めようとして、わざと変な電波を口にしていたんじゃっ……?


 いや、それは考え過ぎか。

 ネガティブになりたくなくて、必死にポジティブ思考に切り替えようとしていたらこのザマだ。

 いかんいかん。

 鬱屈と考え込みそうになっていた俺の耳に教室の戸が開く音が聞こえてきたかと思うと、その後に続いた黄土色の声に吐き気を催す。


 ……うげっ、絶対あの二人だ。


 もう他人なんだから視界に入れなきゃ良いと思ってはいても、チラリと目をそっちにやってしまった俺は馬鹿なんだろう。

 いや、馬鹿だ。

 見れば、可愛らしい兄上様の複雑ながらも優越に満ちた笑顔が……。

「きゃー!見て、あの天使の微笑みっ……マナト様にはかなわないなぁ」


「襲いてぇ!」


「いるだけで教室が華やかになるよね!」


 おーい、見ろ。よっく見ろ!

 あの顔のどこに天使を見たよ!俺には悪魔を通り越して触手とか生えたモンスターにしか見えないぞぉ。

 甘い罠を張って獲物が引っかかるのをじとっと待つ的な。

 だっはぁ、と溜息を吐き出したくなった俺の目はそこから流れるように隣の元恋人様なヨウ様へと。


「チッ、見てんじゃねぇよ!」


 うおぉっと。

 暴言を頂いてしまった。


 ……つい、この前まで恋人だった俺に対して、それはなくね?


 本当に、泣いて良いですか?

 あ、いや待った。

 エンディングまでは、泣くんじゃない……か?コレ………。

 つらつらとそんなことを考えながら、俺は机に突っ伏した。

 これで良い。

 嫌なものは見ないに限る。

 臭いものには蓋をしろ………的な。

 クスクスとまだ聞こえてくる嘲りの笑い声に俺の内蔵は燃えるんじゃないかと思うくらいに熱くなっていた。


 ……うぐ、苛々する……ストレスたまる……こいつら全員ブチのめすっ……!


 だけど、どうしてだろ。

 本当に腑に落ちないけど………何故だか。


 ヒョウにとても会いたくなった。


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