エピローグ
「嘘でしょ……。ここの民芸うどん屋、閉店してる……」
翌日も晴天で、私は姪を誘って、昼食を取ろうとしたのだが。よく訪れていたチェーン店のうどん屋が閉まっていた。正確には知らないが、感覚としては何十年も前からあった店だ。ちなみに言うまでもないが、私たちは普段着である。喪服なんてものはコスプレ衣装と同じで、たまに着るから情事が盛り上がったりするのであった。
「張り紙があるね、別のお店と統合するんだって。一種のリストラでしょ。仕方ないよ、この店、前から値段が割高だったし」
「時代に合わなくなった。そういうことかしらねぇ……」
きっと時代に合わなくなった制度は、廃れていくのだろう。結婚制度もそうだ。同性婚も認めて制度を拡張すれば良いのである。ひたすら政府が、出産だけを求めてくるから上手くいかないのだと私は思うのだが。元夫との結婚で無駄に失われた、時間やエネルギーを返してもらいたいものだ。
「駅ビルに行こうよ。あそこの最上階に、確かファミレスが新しく入ったから。古い別の店が潰れたみたいでね。私としては、いい変化だと思うな」
てきぱきと姪が、アプリでタクシーを呼ぶ。私は自分と同世代の、知り合いの女性を思った。熱中症で亡くなった者や自殺した者もいる。きっと彼女たちは、時代の変化に適応できなかったのだろう。私だってアプリでタクシーを呼ぶことなどできないのだが。
「ほら、来たよ。伯母さん、乗って乗って」
押し込まれるように、姪が呼んだタクシーに乗り込む。車は走り出して、望もうと望むまいと時代は前へと進んでいく。大切なのは、生き延びることだ。離婚は大変だったが、おかげで今はつつましく姪とセックスをして私は暮らしている。どうか皆さまも生き延びてもらいたい。
私の人生も半ばを過ぎた。季節で言えば秋で、今日も外では残暑が続く。しかし車内は涼しくて、隣から手を握ってくる姪の指からは、密かな熱が感じられて。秋の陽気は、まだまだ続きそうで、目を閉じたあと私は薄く笑った。




