第9話「秘密会議、開始。」
イチゴが口を開く。
『最近の人間たちはどう?』
『何か変わったことはあったかしら?』
二郎は小さく息をついた。
『じゃあ』
『まずは俺からだ』
『千紘は、SNSで見つけた流行り物にすぐハマる。何かに夢中になると止まらないんだ』
『そして、最初はスクイーズだ』
『毎日むにむにしていたと思えば』 『次はスライム』
『最終的には、自分で作り始めたし』
『気持ちよさそうだったから、俺も少し触ってみた』
『そしたら――』
『「こらぁー!」って怒られた』
『納得いかない』
『俺だって触りたかっただけなのに』
イチゴが笑う。
『ふふふっ』
『それは怒られるわ』
『人間って、喜怒哀楽が激しい』
『しかも最近は毎晩、俺を抱き枕みたいに使ってくる』
『重いって言ってるのに、離してくれない』
『俺は抱き枕じゃないのに……』
『でも、離れると探されるから、結局戻るんだ』
『千紘らしいでちゅ』
『甘えん坊さんでちゅ』
今度はイチゴが話し出した。
『次は私ね』
『理人は、マカロンに取り憑かれてたの』
『失敗しては作って、失敗しては作って……』
『気づけば、キッチンがマカロンだらけだったわ』
『料理だって、こだわり過ぎて、夕ご飯が翌朝になることもあるわ』
『効率悪すぎるのよ』
最後に三郎が口を開いた。
『次は僕でちゅ!』
『楽は「あれ、なんだっけ?」が多いでちゅ』
『僕に聞けば一秒で調べられるのに、「自分で思い出したい」って言うでちゅ』
『八時間後くらいに「あっ、思い出した!」って笑ってたでちゅ』
『「時間を無駄にしただけだから問題ない」って開き直るでちゅ』
『一秒で終わる話だったでちゅ』
『それから、昆虫図鑑や虫の動画をいっぱい見せてくるでちゅ』
『「虫も自然の役に立ってるんだぞ」って、何回も説明してくるでちゅ』
『そんなこと知ってるでちゅ』
『でも苦手なものは苦手でちゅ!』
『でも、最近はなで方が優しくなったでちゅ』
『……だから許してあげるでちゅ』
三匹の笑い声が重なった。
『人間って、本当にめんどくさいことが好きよね』
『そうだな』
『……いや、あいつらが変わってるだけかもしれない』
『そうでちゅ』
『変な人間たちでちゅ』
少しの沈黙。
『……でも』
『最近は、人間たちも少し優しくなったわね』
『俺もそう思う』
『僕もでちゅ』
人間たちの知らない夜は、今日も静かに続いていく。
その時。
「あれ? 二郎? どこ?」
千紘が目を覚まし、いつも隣にいる二郎を探し始めた。
『やばい、起きてきた』
『二人とも、またな』
『わかったわ』
『またでちゅ』
三匹は慌てて通信を切った。




