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第49話 邪魔者ども

 それからは、パーティーは何の滞りもなく進んでいった。


 飲み物は美味い。

 食べ物も美味い。

 楽しくないわけがない。


 余興で呼んだ今話題の奇術師も、なかなかに面白い事をやっていた。

 魔力を使ったようにも見えなかったし、純粋な手品の類なのだろうが、種はまったくわからなかった。


 それに、久しぶりに会えた人も大勢いた。

 領地を治めている身として、そうホイホイと出歩くわけにもいかない。

 なので、他の貴族と少し仲良くなったりしても、疎遠となることが多いのだ。

 幸いというべきか否か、私と気の合うような人間はそう多くはいないが、それでも、少数はいる。

 なので、そう言った知人、友人と会える機会があるというのは、素晴らしいものだ。


「エリヌス伯爵ぅ。きょぅ、今日は、パーティーにお招きくらさり、本当にありがとおございまぁす」


 ……たまに、こういう泥酔した輩に絡まれるのは面倒だが。


「少々飲みすぎではないかな、子爵殿。水を飲んだ方がいい」

「あ、あいがとうございやす……。……ぅおえっ……」


 若干えずきつつ、子爵は近くの水差しの方へと歩いて行った。


 パーティーで浮かれるのは分かるが、あそこまで酔われるとな……。

 私が下戸でそもそも量を飲めないというのは、幸運だったかもしれない。


「エリヌス様」

「……どうした、オリーブ」


 自然な仕草で、しかし緊張した面持ちで、オリーブが近づいてきた。


「参加者の人数を確認したのですが、どうやら一人多いようです」

「どういうことだ?」


「何者かが、侵入しています」


 その瞬間に、幾つかの思考が巡る。


 可能性は三つ。

 一つは、セッシリフォリアの手先。

 だが、これは可能性としては低いだろう。

 セッシリフォリアは、指輪の件で私をある程度信用している。


 二つ目は、他の貴族の手先。

 こっちは可能性が高そうだ。

 私に悪感情を持っている貴族は少なからずいる。

 特に、あの国家転覆事件に関与した貴族とその関係者。

 爵位を剥奪された者や処刑された者もいるが、刑が軽く貴族の地位に留まれた者や、上手く証拠を隠して何食わぬ顔でふんぞり返っている者もいる。

 そういった輩は、計画を邪魔して甘い汁を吸う機会を奪った私を嫌っているのだ。


 三つ目は、その他勢力。

 私を殺してこの国に反旗を翻そうとする者がいてもおかしくない。

 それに──魔王軍の存在もある。

 奴らは、今のところ貴族連中に関わってきてはいないが、それでも、警戒すべき対象だ。


「オリーブ。今から、私が侵入者を探す」

「危険です」

「私なら、招待客の人数と顔を把握できている。一人一人、照合していけばいいだろう?」

「ですが……」

「大丈夫だ。危険な目に遭うようなへまはしない」

「……かしこまりました。では、こちらでも水面下での警戒態勢を敷いておきます。ダフネ殿一行にも、緊急事態を知らせておきます」

「頼む」


 その一言を聞き、オリーブは再び人々の中に消えていった。


 ……二十四歳になって、早々にこれか。

 明らかな死亡フラグだが、放置しておくわけにもいかない。


 悪いが、全力で叩き折らせてもらうぞ。





 ……現在のところ、怪しい人物はいない。

 恐らく、既に参加者の八割を見て回った。

 怪しまれないようにしないといけないから、かなり神経を使う。

 ……大変だな、これは。


「エリヌスさん……?」

「ん? ああ、マルバか。どうした?」

「オリーブさんから」


 その一言で、すべてを察した。


「じゃあ、このままパーティーを楽しんでくれ。ああ、それと。冒険者と貴族では、力が全然違うのでな。喧嘩などなく、安全に気を付けてくれ」

「……!! ……かしこまりました」


 察しが良くて助かるな。

 これで、パーティー客の安全はある程度確保されただろう。

 あとは、これをどうするかだな。


「エリヌス伯爵」

「はい、どうなさいました?」

「この後の舞踏会なのですが、ぜひうちの娘と──」


 くそっ、この大変な時に……!!


「ええ、考えさせていただきます。それよりも、お嬢さん。お食事は会いましたかな?」


 その問いに、貴族の娘は頷いた。


「では、引き続きパーティーを楽しんでください。私は……まだ用事がございますので」


 そう言って、私は足早にその場を立ち去った──


「エリヌス伯爵うぅ……」


 ──のだが、その数秒後には、また酔っ払いに絡まれた。


「今夜は、本当にお誕生日おめでとおござぁいます」

「ああ、ありがとう。だが、そう酔っていては、パーティーも楽しめないだろう? 水でも飲みなさい」


 この忙しい時に、本当にこいつらは!!

 そんな怒りを胸の中に収めつつ、私はその人を水差しのある机の方へ誘導した。

 その間も、周囲の招待客全員に目を光らせながら。

 そして──


 ──ザシュッ。


「……は?」

「お誕生日おめでとう、エリヌス伯爵。そして、さようなら」


 ──突然、その酔っ払いに腹を刺された。

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