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第23話 お話し合い

 翌朝、ダフネ様たちは私が手配した馬車に乗って街を出た。

 御者には、乗客の一人が妊婦であると告げ、遠回りになってもいいから安全運転で行け、とかなり多めの額を渡しておいた。

 オリーブは、昨晩から出発直前まで憂慮しているような表情だったが、ダフネ様たちを安心させるためか、彼女らの前では明るく振舞っていた。


 ……それと、やはりダフネ様には既に二人の妹がいることを確認した。

 二人とも、明るい笑顔を浮かべながらも、片方はダフネ様から距離を置いているようだった。

 ……恐らく、昨日の光景を見たのだろう。


 それ以上に、妹が二人いるという情報が重要だ。

 何度記憶を探っても、ダフネ様は作中で妹は二人(・・)いるとしか言っていない。

 という事は、この子は流れる可能性が高いのだろう。


 私と会っていなければ、だが。


 ダフネ様が悲しむような事態、私が引き起こすはずがない。

 ダフネ様の母上には、今回の旅が、昔、父がお世話になったコランバインへの恩返しだと伝えた。

 やはり、コランバインの影響力自体は知っているのか、若干の不安を顔に出しながらも、馬車に乗ってくれた。

 ……ダフネ様は、最後まで暗い表情を浮かべていた。


 そうして馬車は出発し、私は笑顔で見送った後、魔導書を読みながら、本来ならば衛兵がいる場所──少々金を掴ませた──に待機した。





 それから、何時間が経過しただろうか。

 太陽が少し傾き始めた頃、馬車が走る音が聞こえてきた。


 ……ハァ。

 ほとんど読み終わっていた魔導書を音を立てて閉じ、私は視線を平原の方へと向けた。


「止まれ、御者」


 大声で私が命令を出すと、慌てた様子で馬車は止まった。

 すぐさま私は馬車に近寄り、御者に話しかけた。


「中の者と話したい。ここで降ろして、後はこの場から離れろ」

「は、はあ。分かりました」


 かなり困惑した様子だったが、御者は馬車に向かって声をかけた。

 すると、すぐに扉が開く音がし、馬車はそのまま走り去っていった。

 ……ふぅ。


「お久しぶりです、父上」

「御託はいい。さっさと話せ」


 日差しのせいか、焦りのせいか。

 額に汗をかきつつ、私は苛ついた様子の父と対峙した。





 ……さて、どうしたものか。

 いざこの人と話すとなると、少し緊張してしまう。

 ……まあ、単刀直入に言うほうがいいだろう。

 父も察しているだろうし。


「これ、私も受け取りました」

「……そうか」


 懐から手紙を出すと、父はため息を吐いた。


「父上の事です。分かっているでしょうし、それ以上に、もう受け取っているのでしょう?」

「……まあな」

「……で、結論は?」

「セッシリフォリアに会った時に話す、では駄目か?」

「この場でお願いします」


 そう言うと、父は再びため息を吐いた。


「私は、この案に賛成だ。お前は?」

「大反対です」


 笑顔のまま、私はそう返した。


「そうだろうな。お前が最大の障壁となることは、私も奴も理解している」

「だから、今のうちに引き込もうとしたんでしょうね」

「だろうな。まあ、私なら、すべてが終わった後に話すがな」

「父上の性格なら、そうでしょうね。……私から殺されるリスクを考えていない」


 そう言いながら、私は一歩近づいた。


「ですが、奇妙な点が一つ。私に殺されることは考えないにしても、道中で襲われる可能性は考えなかったのですか? 護衛も無しにここまで来るだなんて」

「……途中まではいた。ここが見える前に別れたがな」

「セッシリフォリア侯爵の差し金ですか?」

「言うまでもなかろう」

「ですね」


 もう一歩、私は近づいた。


「父上」

「……なんだ?」

「父上もセッシリフォリア侯爵も、どちらも慎重なお方です。どうせ、何か奥の手を持っているのでしょう?」

「察しがいいな」

「あなたの息子ですから」


 そう言うと、父は胸にかけてあるアミュレットを見せつけた。


「この中には、セッシリフォリアと契約を結んだ悪魔を閉じ込めてある。私が合図を送れば、いつでも飛び出すという訳だ」

「試験運転は?」

「もうやった。向こうに、護衛団の死体がある。見てくるか?」

「……いえ、結構です」


 ……道中の護衛は切り捨てか。

 まあ、当然と言えば当然。

 作戦を知られている可能性もあるしな。


「さて、エリヌス。そろそろ、私からも話をさせてもらおうか」

「どうぞ。私から聞きたいことは、すべて聞きましたので」


 表面では余裕を装いつつ、心中で警戒心を固めながら、私は父の言葉を待った。



「私から、最後の説得だ。……そして、最期の警告だ。お前も、王家の暗殺に協力しろ!! そうすれば、確固たる地位を約束するぞ!!」

「死んでも嫌です。生憎、この国にはまだ利用価値があるので。あなた方では、その価値すらゼロになる」

「そうか。なら、心苦しくはあるが、この場で死ね」

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