10.骨折
10.骨折
ある日、兄とその友人が練兵場の広場で野球をして遊んでいて、
佳代子は付き添いとして見学していた。
兄がピッチャーとしてボールをキャッチャーに向け、投げていたが、
8回の裏、低めに入ったボールを、思いっきり打たれた。
「ちょうじ、回れ、2塁は固いぞ!」
敵方のベンチからそう叫ぶ者がおり、
1塁を回り、2塁へ向かう。
もう少しで2塁というところで、足がもつれ、転倒をした。
「おい、ちょうじ!何をしているんだ!」
ベンチから再びその様な声が届くが、
ちょうじと呼ばれたものは、一向に起き上がろうとしない。
その様子を見て、全員が集まってきた。
「おい、どうしたんだ。ちょうじ。大丈夫か?」
「あ、足が…。」
小さい声でちょうじが答える。
よく見ると足を思い切り抑えている。
「足が…、足が折れたかもしれない。」
小さい声で再びちょうじが答える。
「ちょうじを病院へ連れて行くぞ。
ここだったら、山田医院が近いかな。
俺がちょうじを背負って連れていく。」
ベンチで野次を飛ばしていた体の大きな少年は、仲間も手伝い、背中にちょうじを背負う。
「俺も、一緒に行く。もし背負うのがきつくなったら交代する。」
兄がそういう。
「分かった、じゃあ行こう。」
佳代子も一緒に行くことにした。
山田医院は、練兵場の広場から10分くらいのところにあった。
医院の規模は、個人医院のレベルであるが、看護婦が1人受付にいた。
ちょうじを背負った少年は、1度も交代する事無く、医院のドアを開いた。
受付にいた看護婦に対し、その少年は、
「仲間が骨折した様なんだ、助けてくれ。」
看護婦はストレッチャーを用意し、少年を乗せた。
そのまま、診療室にここまで担いできた少年とともに入る。
同じチームの者数人と兄、そして私は、待合室で待つことにした。
5分くらいすると、ここまで担いできた少年が診察室の外に出てくる。
「ちょうじは問題ない、やはり骨折をしているようだ。
俺はこれから両親を連れてくる。ここから10分くらいのところに、
ちょうじの家があるからな。」
少年は医院を飛び出した。
そして20分後、医院に1人の女性を連れて戻ってくる。
「ちょうじの母だ。」
ちょうじの母は待合室にいた面々に医院へ連れてきたことに対し、お礼を言う。
「いえ、俺たちはついてきただけで。義男が1人で担いで連れてきたんだ。」
兄が説明をする。
「それでも、長治のことを心配して来てくれたことに対しも、私はお礼を言っているのよ。」
と、長治の母親が言う。
母親は義男と一緒に診察室に入っていった。
それから、10分後、足に包帯と添え木をされた長治と、
その母親、義男が診察室から出てきた。
長治は医院に借りた車いすに乗せられていた。
「今日はありがとうな。じゃあ。」
長治はそういい、母親と医院を出、自宅に帰っていった。
結局、長治が骨折をしたことによって、野球は中止となった。
この野球の続きは長治の骨折が直ってからということになった。




