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第11話: 魔王城フォーマルハウト

 

 エストハウスの朝は、ゆっくりだ。…一部の大人が、ゆっくりだ。


 朝食の準備に、酒場の清掃に、子供たちの朝は、普通に忙しい。

 孤児院付きの先生達も忙しい。小さい子供の着替えに食事、年長組を公共学校に送り出すまでバタバタだ。


 なのに、気怠い空気が目立つのは、やっぱり酒場関係の大人達のせいだろうか。


 エストハウスの孤児院にも厨房があり、二人の女性が小さい子供たちの朝食準備に余念がない。若い男性も居て、ベットの並ぶ大部屋で小さい子を着替えさせていく。乳飲み子はいないが、幼い子供の世話は決して楽ではない。


「本当に助かるわ、一人産休に入るから、こんなに早く来てもらえて大助かり。」


「ちょうど、教会の方で移動がありまして。時間調整みたいなもんですかね、暫くは予備役で体が空きますから。」


 初老の女性が、手早くスープの味を見ながら、司祭服の娘は、スクランブルな卵料理を大きな浅鍋で軽々作り続けながら話しをしていた。


「マリーと呼んでおくれ、産休に入るのが妹の末の娘でね。まだ産まれるのは先だけど、つわりが酷くてね。ここの子供の相手は体力をつかうから、お腹が大きくなる前に間に合えば、と思ってたけど、ほんとに助かるよ。」


「バゴです。アルカディアのスター教会に居たんですけど、司祭の課程で何年間か巡回奉仕に出るんです。もっと先だと思ってたんだけど、先輩方がごっそり何かで召集されましてね。位階上げるために巡回が早くなったらしいです。」


「司祭ってことは、精霊様なんだろ。ここのオーナーも精霊だけど、ハグレてるからね。役所の仕事ができないから、暫くでも居てくれると皆助かるよ。」


「助祭までは、どっちでもやれますけどね。司祭になると量子クラウドの登録と認証があるんで、人間だと厳しいですかね。あ、一応、ニューヨークのリンクも、ひと通りの窓口は開いてますから、何でも言って下さい。あと、残りのテーブルやりますから、ビートさんの方に行ってもらっても大丈夫ですよ。」


 白に銀の縁取りで短いフードケープだけの司祭服は、一般の窓口業務をする受付嬢のクラスだ。つまり、地区に一人居てくれれば、普通に助かる。精霊は大抵整った容姿だが、バゴは真珠の目をした彫刻のような美人だ。人間っぽくない端正さを小麦色のたっぷりの髪が縁取って、何とか親しみやすくしている。


 ********


 ショーは、学校組の子供と酒場を掃除した後、幼年組に混じっていた。幼年組では目立たないが、さすがに学校組では、7歳と比べてもまだ小さかった。3歳児らしいし。


 今日は朝から新しい司祭の先生が来た。ビートさんの奥さんのケティさんが、しばらくお休みするそうだ。昨日も時々調子が悪そうだった。


 かわりの先生は、別の大陸にあるアルカディア国の司祭だという。スター教会では、進級する時など修行の旅に出て、各地でお手伝いをする決まりがあるそうだ。白い服の美人のお姉さんは、みんなを一人ずつ抱きあげては挨拶したが、ショーにだけは、頬ずりするように髪を上げて尖った耳をちょっぴり見せた。エルフだよな、美人だし。


 その瞬間、例の接続と解析がスパークした。ロキの時と同じだ。互いに表面上のリソースが確認できた。つまり、このエルフは、エイリアスだ。


 ロキと同じく味方判定の識別があり、オープンに個体IDも開示している。

 オリジンはアストライアー、強襲制圧艦 スピカ。…。なんか危ない単語の艦種が見えた。


 ********


 その夜、人目を偲んでボクの部屋のドアがきしんだ。予想していたロキは、バゴを待ち構えていたようだ。ボクが目を覚ました時、二人はベット脇の床で相対していた。


「問題ない…、不要…」

「問題です。必要!」


 なんか、おんなじ事を繰り返してる。


「公式に保護すると、公団は察知する…。当然…無視できない…」

「スワン襲撃の実行役は、カラー以外あり得ない。だから、必要です。」


 ロキは表情がなくて分かりにくいが、迷ってるようだ。


「ニューヨークを更地にするつもり?…。フォーマルハウトが、ブチ切れる……」


「魔王城はデルタターミナルです。もともとは実験施設、荒事にむいていない。」


「そのターミナルの向こうの次元に…魔王と魔王妃が居る。…オリジンがエッダの私としては、…フォーマルハウトはともかく…お二人を召喚して煩わせたくない」


「その前にアドミラルとポーラスターが揃うのでは?シリウスは離脱できますか?」


 ロキはベットで目を開いているボクに気がついたようだ。

 二人とも気づかないフリだけかもしれない。ロキがベットでボクに腕を回した。


「会話の儀式はこれくらいで…、デネブにも言ったけど、ルド様は私のだからね」


 バゴ、と言うよりスピカは、たっぷりの髪を振り払って尖った耳を露わにすると、端正な顔に猛獣の笑みを浮かべた。美人の精霊はこんなのばっかだろうか。儀式めいた物言いで続けた。


「今日からこの部屋でルド様に添います。私はアマゾンを勝ち抜いた正当な候補です。その資格によってルド様を支持します。如何ですか、帝冠精霊の御使よ。」


 相変わらず無表情なロキが、承認なのか、発言を求めるように片手を上げ、…薬指を開いて、いわゆるバルカン式に挨拶した。 ドゴッ! 瞬間、空気が揺れてスピカのキックがロキの顔面を捉えていた、…動きが、まるで見えなかった。

 ほっそりしたブーツ、素敵だけどロキの顔面にめり込んでないか…。


 それにしても、…地球を離れて何百年か知らないけど、バルカンサリュートわかるんだ。精霊すげー。地球のデカルチャもっとスゲー。


 ******


(訂正のご案内)

 ニューヨーク国:水源クレーター中央丘:魔王城 最奥:シティブレインの間

 調整者フォーマルハウト


 「でばんがなかった!!」


 ********


 探査艦母艦デネブ内郭:6次元量子電脳キグナスα:キャラクターコア


「泥棒猫がまた増えた!もう、これと言うのも魔王城の根性なしが、出遅れるから。ルド様、ただ今デネブが参ります。船体動かさんけど情報接続フルパワーァ」

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