1-0 普段通りの朝トイレ
こうして小説を執筆するのは初めてであります。菲才につき読みにくい箇所も多々あると思われますが、この連載を通じて日々精進しようと思いますので、応援よろしくお願い致します。
チャン、チャラチャラ、チャッチャッチャ〜♪…
まだ眠っていたいのに…。朝の目覚めに爽快感などない。こんなにも早く起床しなければならない自分に苛立ちながら、俺はスマホのアラームを止める。ふと時刻表示を見てみれば、いつも通りの5:30。この数字を見て絶望しなくなるために何日かかったことだろう。心に耐性はついたようだが、身体は御正直なようで、今にも目蓋が落ちそうだ。まだまだ身体の再起動は完了しそうにない。まるで麻酔銃に撃たれたように、力が抜けて布団に仰向けで倒れ込む。
あーあ、今日も学校か…。特に今日は変わった予定はないはず。うん、普段通りだな。今日は登校中に何をしようか。2時間もあるしな。ってか高校に通学するのに2時間かかるってやっぱ無理ゲーだろ。第一志望校に入れたのは良いものの、これを3年間とか耐えられるか俺?いや、俺の心は毎日必死に学校に向かおうとしている。ただ身体が言うことを聞かないだけなのだ!よし、俺は悪くない。寝るか!
葉島健次。15歳。男性。高校1年生。独身。交際経験なし。女子と喋ったこともほとんどない。友達も少ない。大した取り柄もなく、勉強も運動もそこそこである。趣味はゲームとアニメ鑑賞。どこにもいそうな、ごくありふれた高校生だ。高校生活という新たな環境に心を躍らせながらも、地獄の通学時間に頭を悩ましているという点では少しレアケースだけれども…。
「ケンちゃん、もう40分過ぎてるよー!さっさとご飯食べちゃってー!」
突如母の大声が耳を貫き、慌てて健次は飛び起きる。気付けば既に10分も経過していた。出発時間やそれまでの予定を考えると相当な痛手である。瞬間廊下を全力疾走し、母に気づかれないよう石鹸を使わずに手洗いを済ませ、食卓につく。朝食は普段通りバタートースト、ミニトマト×2、ココア一杯だ。朝は余り食欲がないため朝食は少なめである。まあ、それも当然。なにしろ今日は睡魔に負けたものの、普段は起床後5分で朝食を済ます。これは睡眠時間を稼ぐための時間の有効活用なのだ。
「ご馳走さまでした」
朝食を取り終わるとトイレに直行。これも毎日の日課だ。朝起きたらすぐに行く人も少なくないだろう。俺もついこの間まではそうだった。でも気づいたのだ。出そうなモノを頑張って踏ん張って出そうとするよりも、モノが出そうになるまでの時間を他に活用した方が効率が良い。これも睡眠時間を稼ぐための工夫だ。
現在進行形で用を足しているのだが、今後の動きを確認しよう。まずトイレを出たら学校の準備の確認をし、6:10まで二度寝。次に6:10から重たい目を開けながらゆったりと制服に着替えて、6:24に家を出る。バスは26分発だからぴったりだ。これを聞いて、二度寝する必要が無いのでは、二度寝する時間を起床前に持ってきた方が良いのではと思った人もいることだろう。だが、この二度寝は爽やかに一日を迎えるためには欠かせない時間なのだ。時間ギリギリまで寝て大慌てで準備するのと、早めに準備を済まして少し二度寝という休憩を取るのでは、明らかに後者の方が起きた時に気分が良い。二度寝をするかしないかはその日の意欲に直結するのだ。
ようやく用を足し終わった。右手側の壁にあるトイレットペーパーに腕を伸ばす。紙を巻き、程よい長さで手で切り取る。徹底的に拭き、この動作を繰り返す。そして綺麗になったら、立ち上がって服を整える。蓋を倒し、レバーを「大」に向かって引く。いつも通りの慣れた手順だ。天井を見上げて大きく伸びをする。モノを出し切った開放感に浸る。ああ、今日もまた長い一日が始まる。不安なこともあれば、楽しみにしていることもある。今日はどんなことを経験するのだろうか。まあ、未知を恐れても何も変わらないのだが。何はともあれ、新たな今日を存分に味わおう。さあ、新たな一日の始まりだ。これはただトイレを出るだけの動作だが、俺にとっては気合を入れるための大きな一歩である。
そう意気込んでドアを開けると….、そこには見たことのない街が広がっていたのだった。




