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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
最終章 テラース最終戦争篇
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00103 最強の武神

 レーダー設備から攻撃して、相手の「目」を奪った上で、飛行場への攻撃を加えて、航空戦力を奪って上陸部隊を送り込み、地上戦にて敵を追い詰めて、降伏を促す。

 アイスベータ島攻略戦の骨格は、この通りである。後は、それが上手く行くかどうかである。こちらは制海権は握っているのだから、制空権はこれからである。

 ソウルブリザード戦闘機。惑星「テラース」に置ける最高峰の航空産業を持つメリスト連邦王国を象徴する傑作戦闘機。それに報告では、ダロス皇国の産み出した最強レシプロ戦闘機、ベルト・ダンク戦闘機もある。こちらは、何とか導入が間に合った最新鋭艦上戦闘機、F7F戦闘機があるが、それでもレイド・サム公国の九九式戦闘機よりも手強い連中だ。レイド・サム公国も、どうやらそろそろ九九式に代わる新型戦闘機を実戦配備に入ろうとしていると言う噂もある。

 F7Fは、分厚い装甲によりデカくなった図体を強力なエンジンでぐいぐい引っ張っていくパワフルな戦闘機だ。ケツに付かれたらエンジン全開で最高速度で逃げれば良い。1機の敵に対して複数機で応じて撃墜する各個撃破を基本とする空戦訓練を受けている。

 この最新鋭のF7F戦闘機に護衛されている爆撃機が降らせる空対地爆弾により、飛行場を破壊する。出来る。簡単にはいかないだろうが、最終的にはこちらの勝ちは揺るがない。ソメリト合衆国西海洋艦隊の司令部は、そう判断していた。


 水上戦姫部隊の嚮導戦姫が、重い無線機を背負いながら、攻撃隊第1陣をアイスベータ島に誘導していた。レーダー設備は、既に水上戦姫部隊により破壊されている、筈である。こちらが確認できているレーダー設備は全部破壊できたが、もしこちらが把握していないレーダーがあったら、戦闘機の迎撃が待ち構えている筈である。そうでなくても、レーダーへの破壊活動が行われたと言う事は、続いて大規模な航空攻撃が行われると言う事だ。


「……来た、来た、来た、うじゃうじゃしている。まるで蝗の大群みたいだ。あれを相手に戦うのか」

「爆撃機を送り返して、戦闘機を入れ替わりに補充しておいて正解だったな。あれでは、爆撃機を送り込んでも、艦隊に辿り着く前に直衛機に堕とされているか、あるいは対空砲火で撃ち落とされていただろう」

「よぉし、お前ら、覚悟は良いな。この島をタダで渡すつもりは無い事を教えてやれ」


「敵機確認、戦闘機です。報告通り、事前情報の2倍の数です」

「1度に全力投入か。それはそうだ、飛行場に並べておいたら、爆撃で吹き飛ばされるばかりだからな」

「戦闘機隊は、全力で爆撃機を守れ。新型戦闘機の性能チェックだ。ソメリト合衆国の合理主義が正しい事を教えてやれ」


 お互いに、大型戦闘機同士の対決であった。F7Fは艦上戦闘機の中では最大と言える巨軀である。だが、ベルト・ダンク戦闘機はよりデカい。ソウルブリザード戦闘機は、図体こそ「普通」と言えるサイズであるが、積み込んでいる水冷エンジンは、世界最高峰の性能である。

 つまり、性能についてはお互いに互角である。パイロットの質についても、国内に数万人いるという航空ライセンスを持っている、取り敢えず飛ばせる奴を集めて、専門訓練を積ませて前線に投入するソメリト合衆国に対して、0から教えなければならないメリスト連邦王国やダロス皇国に比べたら、替えが幾らでも用意できるソメリト合衆国の方が若干優位である。

 質が同じ程度となると、物を言うのは「数」だ。事前情報の2倍というのは、嘘では無かった。それに合わせて、こちらも戦闘機を多めに投入したのは間違いでは無かった。

 舞台は整った。後は、生き残る事だ。


 お互いの戦姫が、安全な空域から戦況を見守っていた。お互いに、意見は一致していた。

「同盟軍側は健闘している」

 メリスト連邦王国も、ダロス皇国も、かなり懐の深い態度で、最新鋭の戦闘機をパイロット付きで派遣してくれたのだ。代わりに爆撃機を本土に帰還させていたが、ただで返したわけでは無い。使い途は決まっている。こちらには制海権が無い。頑丈だが戦闘力が低い装甲空母が2隻あるだけだ。他に旧式戦艦が何隻かあるいが、この戦力差では「棺桶」にしかならない。

 同盟軍の防衛ラインを抜けた爆撃機は、かなりの数があった。F7F戦闘機は、よく頑張っている。いや、むしろ事前の評価通りの素晴らしい戦績である。もしF5Fであったら、損失過多で爆撃隊を引き換えさせたに違いない。12.7㎜機銃6挺の火力に、分厚い装甲と重たい機体を高速で飛ばすパワーのあるエンジンで、各個撃破を行われたら、同盟軍の戦闘機は勇戦出来ても、せいぜい勇戦できたと言う結果しか得られなかった。

 しかし。あれは第1陣だ。第2陣、第3陣と、次々と物量で押し潰そうとしたら、アイスベータ島航空隊は壊滅する。


 ジュリア・アキリキは、この戦況を眺めながら、この戦争の行く末を正しく見据えていた。

 この戦争、どう足掻いても同盟軍は勝てない。合理主義が物量や技術力と合体した場合、無敵の武神が誕生する。もしその事実を祖国の軍務省が承知していなければ、いや、政府が分かっていたとすれば、この島を奪われた時点で白旗をあげるだろう。それが出来なければ、悲惨な本土決戦へと状況は雪崩れ込む事になるだろう。

 負けた場合の事を、政府は考えてくれているのだろうか。もし本土が焦土と化しても戦い抜く覚悟であるとすれば、一体何処の誰が復興事業を取り仕切るのか。まさか、ソメリト合衆国に再建してもらうつもりなのか。そうなったら、ヴィクター大陸のあらゆる産業は「メイド・イン・ソメリト」で圧倒されてしまう。

 それでは、この戦争は全くの「無駄」であったという結論になる。戦前より、経済成長著しい合衆国に対して、自国の産業が経営面で勝てそうに無いと言われていた中で、戦争により決着をつけようという事になって、反ソメリト合衆国同盟、通称同盟軍を組織して戦ったのだ。

 「合理主義」・「物量」・「技術力」、この3つが、今後の惑星「テラース」で生き延びる上で必要になる思想になる。そして、もう1つ確かなのは、これが惑星「テラース」にて行われる、最後の世界規模の戦争になると言う事だ。ソメリト合衆国は、これを機に世界中の要衝に自国の軍隊を駐留させるだろう。国防省も、名前を変えて紛争省にでもして、暦も「合衆国暦」にでもするかもしれない。

 この戦争、「テラース最終戦争」とでも呼べる戦いが終わったら、自分はどうしようか。ソメリト合衆国の属国となった祖国にて、矢張り戦姫として軍籍に残るのだろうか。だとしても、他に食う手段が無い以上、王室に忠誠を誓い、軍籍に残るしか無い。


 ソメリト合衆国西海洋艦隊の攻撃は、執拗に行われた。その日だけで、3陣の攻撃隊が投入されて、大量の鉄と油と血と涙が極寒の海に落ちていった。飛行場の滑走路にも次々と爆撃による孔が開けられていき、僅か1日で、アイスベータ航空隊はその戦力の半分を失っていた。

 無論、ソメリト合衆国西海洋艦隊もタダですんだわけでは無い。投入した航空機の内、3割を失い、残った内の1割は修理不能として海に捨てられていた。

 艦隊司令部は、この損失に難色を示していた。このままでは、西海洋艦隊の空母の格納港が空っぽになってしまう。矢張り、航空戦力「だけ」でアイスベータ島を攻略するのは困難である。制海権はこちらにあるのだから、そして旧式戦艦を用いたとすれば、やれる筈だ。

 戦艦の艦砲射撃による地上基地への攻撃。やるしかない。空母の格納庫が空になる前にやらなければ、冷たい海にて愛機と共に撃墜されて凍死していくパイロットをこれ以上増やす前に、別のやり方を取らなければ駄目だ。


メリー姉さんことメリー・マテウスは、疲労困憊で控え室にて待機しているパイロット達をカメラで撮影しながら、彼らの口から様々な情報を引き出していた。

「同盟軍の戦闘機も、パイロットも、どちらも優秀だ。こちらと引けを取らない」

「物量にて磨り潰すのは良いのだが、その為に自分が使い潰されるのは面白くない」

「早く家に帰って、家業を継いで家族を養わないと。こんな寒い海で死にたくはない」

 色々と聞く内に、メリー姉さんは1つの質問をぶつけたくなってきていたので、我慢しきれずに言ってしまう。

「この戦争、勝てますか」

 それを聞いて、過酷な空戦を生き延びたパイロット達は答える。

「勝っても負けても、こんな所で死ぬのなんてまっぴら御免だね」



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