その名で呼ばないで?(にっこり)
捕らえた貴族や奴隷商人たちを一か所に纏めるため、階段を降りてステージ付近に移動した。
「これだけの人たちが、関わっていたとわね」
「君のおかげで色々とこの国ゴミ掃除が捗るのは間違いないね」
清々しい程の笑顔で近寄って来る殿下に辟易しながら、ユリウス様の援護に回るかと思い移動しようとしたら、一階の奥に人影が駆けていくのが見えたのでそちらに向かう。
「奥にまだ何かあるのかしら」
一気にしかけたので、対応に遅れて掴まった者たちが殆どだが、別の出口などから逃亡している可能性もある。
人影が入っていったそこは商品として売られる予定だった様々な物が積まれた倉庫のようで、檻に入れられた魔物なども雑多に置かれていた。
「こんな物まで……」
『僅かにだが、魔力反応だ……注意しろ』
「分かったわ」
イグナリスの言葉に、喉を鳴らし箱などを盾にして身を低くして移動していくと、ローブを着た人物が物陰に隠れて、手に持った大きめのなにかしらの結晶を淡く光らせながら、奥の場所に意識を向けているようだった。
「魔力反応って……あれのこと?」
『うむ』
何に注視しているのかと、顔を少し出してみると、仮面を被ってローブを纏った人物と明らかに身なりの服を身に纏った中年男性がなにやら話していた。
「あの方は何と言っておられる?上手く流せば今よりも良い地位を約束するというから、融通してきたのだぞ!それも今日でおしまいになったがな!そちらに不手際があったのではないのか!?」
「おやおや、随分な言いようではないですか?襲われたのは貴方が用意した会場だというのに。こちらを疑うとは責任転嫁が過ぎますよ?おまけにネズミが入り込んでいるのに気づきもしていないとは」
仮面の男は腕を振り、炎を出現させ隠れていたローブの人物に向かって放つ。
察知されたローブの人物は、それを避けようともせず静かに何事か呟き、障壁を出現させ炎を防いだ。
「世話が焼けますね、全く」
「もっとしっかり持ってくれ!落ちるぅ!!」
炎の渦を弾き続けた後、視界が晴れると間に男たちは居なくなってしまっていた。
「逃げられちゃったけど……これなら大丈夫かな……試作型持って来てて良かった」
「え、その声……エレナ?」
「ひゃ!?びっくりした……ってアイナさんじゃないですか!」
今まで気づいていなかったのか、フードを下したエレナは目を限界まで見開いて驚いていた。
「なんでこんなところにいるのよ、ていうかなにしてたの?」
「え、えっと……その、色々……えへへ」
目を泳がせながらエレナは、後ずさっていく。
ため息をついて、魔術師協会に立ち寄った時の事を話した。
「ええ!?そ、そんな……まさかわざわざ挨拶に来てくれてたなんて……」
「やっぱり、エレナって凄い魔術師だったわけね……。その凄い魔術師様がこそこそ何かやってるってことは国の指令か何かを任されているってところかしら?」
「え、えっと……まあその……はい。あ、あのこの事は黙っていてください。あ、あと……黙っていてごめんなさい。騙すつもりとかは無かったんですけど……」
「気にしてないわ、それに国からの特別任務なんだもの、仕方ないわよ」
深々と頭を下げてきたエレナに近づいて頭を撫でる。
肩の力を抜いたエレナが顔を上げてほぉっと息を吐いて笑顔になった。
「そういえば任務であちこち移動してて話が広まってて知ったんですが、アイナさんも<救済の伯爵令嬢>なんてかっこいい名前が付くこの国の英雄になってるじゃないですか!凄いですね!」
エレナの肩に両手を乗せた。
「その名は呼ばないで、お願いエレナ?」
にっこりと笑いかけると首がもげそうな勢いでエレナは首を縦に振った。
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