戦闘-虹の飛島(3)
『虹の飛島』で、主力でパーティーを固めると、それは古参の六人になる。
初期メンバーである、ジェシカ、アガット、ルディランズ。
それから、竜の番の討伐戦ののち、『虹の飛島』に加わった、バルガハル、リナス、ミリディア。
この六人だ。
『虹の飛島』が名を挙げたのは、竜の番の討伐戦。
だが、そののちの躍進は、あとの三人が加わったことが、主な要因となっている。
人数が増えたこともそうだが、冒険者歴の長いバルガハルの経験や、リナスの器用さ、ミリディアが回復職として入ったことによる継戦能力の向上。
そういったことは、『虹の飛島』というパーティー全体の能力の向上につながったからだ。
「ふん」
その三人は、やはり上手い冒険者だ。
バルガハルは、虎系の獣人種だ。
大柄な体躯を持ちながらも獣系の俊敏な動作を行い、両腕にはめた盾のような篭手を使っての格闘で、敵のヘイトを集めるアタッカーだ。
リナスは、亜妖精種と、体に鱗ににた甲殻を持つ甲人種のハーフである。
手先の器用さと、素早い動き。細身な体に反した甲殻の硬さを利用した受け流しで、前衛ができる。
なにより、亜妖精種の精霊術も使えるため、術師としても相応の能力を持つ万能型だ。
ミリディアは、魔術による治癒を行うヒーラーである。
できることは治癒魔術だけだが、杖術による自衛、動き回りながらも乱れない詠唱能力、パーティー全体を俯瞰できる視野の広さ。
それらが合わさった結果、パーティーメンバー全体の治癒回復を個別に維持しながら、動きまわって自分の安全を維持できる、という機動型のヒーラーになっている。
何が言いたいか、というと、三人は、たとえ単独でもそれ相応の働きができる、ということだ。
リナスは、残りの『虹の飛島』メンバーを指揮するビアンに追随し、サポートに当たっている。
ミリディアは、本陣に残り、運ばれてくる負傷者の治療に当たっている。
バルガハルは、
「ふむ。強く速い、が、所詮は獣だな」
ジェシカとアガットが相手にしているのとは、別のキマイラを相手にしていた。
その行動は、老練、あるいは、熟達、という表現がふさわしい。
キマイラは大きく、その体から放たれる攻撃は激烈だ。
どれも、一撃でも食らえば戦闘不能になること必至である。
だが、バルガハルはそれを静かにいなす。
いなし、さらに前へと踏み込んで、
「ふん!!」
一撃。
それは、どん、と深い音を立て、キマイラを吹き飛ばした。
キマイラの巨大な体を、バルガハルの一撃が押し返す。
その体重差を、バルガハルはものともしない。
ただ、鍛え上げた肉体と技量をもって、巨体をいなし、動きを押しとどめる。
「む」
そのバルガハルを援護するように、矢が飛んできて、キマイラの獣の頭の目をつぶす。
「リナスか」
ビアンのサポートに、他のメンバーの援護をしながら、広い視野でバルガハルの援護までしている。
その援護にキマイラが気を取られている間に、バルガハルは距離を取る。
と、その体に、治療魔術が届く。
ミリディアだ。
バルガハルが両腕に装備する盾のような篭手。
その裏側に張られた札が、ミリディアとパスでつながっているため、そこから魔術が届いている。
とはいえ、魔術殺しの効力があるのか、その治癒は弱い。
だが、バルガハルはそれで十分だ、と前へ出た。
また、キマイラの攻撃が来る。
それをいなし、かわし、受け流す。
*****
『虹の飛島』は、基本的にアタッカーが多い。
ジェシカは言うまでもないが、アガットもまたアタッカーだ。
巨人種としての巨体と怪力を用いて、敵に十分な一撃を叩き込むことで、ヘイトを稼ぐ。
また、ルディランズもそうだ。
パーティー戦闘での魔術師、というのは、基本的にダメージディーラーである。
バルガハルが、キマイラの注意を引き付けている一方で、ジェシカとアガットは、着実にキマイラを追いつめていた。
ジェシカが鋭い攻撃を叩き込み、十分な攻撃を叩き込む。
それにキマイラが反応しようとすれば、正面に立つアガットが、その巨体の威圧と怪力による攻撃によって、キマイラの注意をひきつける。
ジェシカは、といえば、そのアガットの巨体を隠れ蓑として、一度キマイラから隠れると、次は速度を上げてキマイラの懐へと飛び込んで、斬撃を見舞う。
キマイラとしても、この相手はやりづらいだろう。
キマイラは、混合獣であり、多頭獣だ。
それぞれの頭は、それぞれに敵を警戒している。
それだけに、本来キマイラという魔獣は、視野が極めて広い。
それを、アガットの巨体とキマイラ自身の巨体を隠れ蓑にして、視線から逃れながら、ジェシカはキマイラをおそう。
本来、敵の攻撃を引き付けるべきがタンクだが、『虹の飛島』において、ジェシカとアガットが組んで戦闘を行うと、ダメージを稼ぐことにより、両者の間でヘイトを稼ぎ合う、というやり方になる。
そうして、敵が攻撃するべき相手を絞れないでいる間に、二人でしとめきる、というのが、大体の流れである。
キマイラが、咆えた。
それとともに、細かい傷のいくつかが治る。
「あら」
「強いな」
自己再生能力までもっているのか、とジェシカは内心辟易する。
長期戦になりそうだ。
そう思ったところで、
「AaaaaOooooooooooN!!!!」
本陣方向から、狼の遠吠えに似た声が響いた。
「・・・・・・ルディランズが動いたかな?」
「バフが来た。・・・・・・さっさとケリつけんぞ」
「言われなくても!!」
ジェシカとアガットの戦闘は加速する。
・タンクとヘイト管理
いつの間にか、パーティー戦闘、という中で生まれた概念。
要は、敵の注意を引き付け、他のメンバーが攻撃や自分の役割に集中できるようにする役割。
『虹の飛島』ならアガットやバルガハル。聖遣隊ならヴォーの役割。
聖遣隊の場合、ヴォーが敵の注意を引き付け、ベイナスやゼットなどがちょっかいをかけることで、ヴォーにかかる負担を軽減。トドメはノノやソウタが行う、というのが基本。
『虹の飛島』の場合は、ジェシカやルディランズの攻撃が強力すぎるため、タンクの役目、というのは、敵の攻撃から盾になることはそうだが、ヘイト管理は敵のターゲットをむしろ一人に集中させすぎないようにすることで、パーティー全体での攻撃力を上げる方式を取っている。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




