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戦闘開始-虹の飛島(2)

 ジェシカが走っていく。

 そのあとを、アガットが続く。


 ジェシカの走り方は特殊だ。

 ジェシカのまとう鎧は、肌が露出している箇所も多く、一見軽装に見える。

 だが、その素材と仕込まれた魔術により、着用者の魔力を使用して、任意の場所に障壁を張ることができる。

 通常なら、肌に沿うように自動で防御用の障壁が張られているが、ジェシカはそれを足元に展開することで、空中でも踏ん張れる足場として使うことができる。

 地面の状態に影響されず、身体強化を全開にして、空中を駆け抜けていく。

 空を飛ぶようなその走法は、まさしく疾風のようであった。


 それに対し、アガットの方は豪快だ。

 重装の鎧と大楯を持つアガットは、大楯を前に構え、鎧に仕込まれた魔術を駆動させる。

 それは、鎧の各部から光のような放出を行い、アガットの体を加速させた。

 大楯を使って、地上の障害物をまとめて跳ね飛ばしながら、アガットはジェシカの疾走に追随する。


 突撃してくる二人を見て、戦場に残ったキマイラの二体は、身構える。


「ジェシカ! わかっているな?! あいつらの近くでは、魔術は無効化される!!」

「わかってるわよ! もう『切り替え』た!!」


 二人が言葉を交わした瞬間、キマイラの一体が炎を吐き、もう一体が雷を放った。


「甘い甘い!!」


 その二つは、空中を疾走するジェシカを狙ったものだ。

 それを身軽にひらりとかわし、だん! と強く足元の障壁を踏みつけて、ジェシカは高く跳ぶ。


「アガット!!」

「任せろい!!」


 アガットは、キマイラたちの前へと乗り込んだ。

 鎧の各部から噴き出していた放出光が消え、その勢いに押されて軽く浮いていた体が着地する。


 ズンッ!!


 その一歩で、超重量の何かでも落ちたように、アガットの着地点を中心としてへこんだ。

 だが、それで、アガットの推進の勢いが止まる。

 その着地の瞬間を狙うように、キマイラの一体が、前肢を叩きつける。


 アガットは、大柄な男だ。

 だが、向かい合うキマイラは、アガットの頭より高いところに、キマイラの中心と思しき獅子の頭が存在する。

 体高だけでも、アガットの倍以上。

 大きさなど、比べるまでもない。

 当然、その体重差も相当なものとなるはずで、アガットがいかに重装の鎧をまとい、大楯を構えようとも、その前肢の一撃は決して軽いものではない。


 はずだった。


 キマイラの前肢が、アガットが構えた大楯にたたきつけられ、轟音が響く。

 そして、


「軽いなあ。猫が!」


 前肢をたたきつけられたアガットは、びくともしない。

 大楯に前肢を受け止めながらも、その姿勢には小動すらない。

 そのまま、片手にメイスを握る。

 それは、柄の長さがアガットの身長に匹敵する長さがあり、打撃部が巨大な重量級の打撃武器だった。


「おらあ!!!」


 その一撃を、アガットは、目の前にある獅子の顔へとたたきつける。

 ご! と鈍い打撃音が響き、キマイラの体が揺らいだ。


「まだまだ!」


 打撃したメイスを引き戻し、大楯を構えなおし、突貫。

 シールドバッシュによる一撃が、さらに大きくキマイラを揺らし、その体を後退させた。


 キマイラは、その一撃を受けて後退しながら、アガットをにらむ。

 いつの間にか、視線の高さが合うようになっている。

 キマイラと向かい合うアガットの体躯は、先ほどより大きくなっていた。

 だが、キマイラは、その違和感を頓着することなく、アガットへ炎を吐こうと口を開いた。


「上、警戒しろよ?」


 キマイラが炎を吐こうとしている、上空。

 跳び上がっていたジェシカは、空中に張った足場に止まる。

 鎧の張る障壁とは別に、燐光を放つ板状の何かが、その背から天へと突き立っている。

 それは、『竜の翼』に見えた。

 双剣を交差して構え、ジェシカは全身に力を入れる。


「ん!」


 空中に張った足場を踏み切ると同時、背に広がる翼が打ち下ろされ、ジェシカの体が加速する。

 眼下に見えるキマイラの背へと、一直線に落ち、いや、飛んでいく。


 その一撃は、雷鳴に似ていた。


 落ちた先は、炎を吐こうとしていたキマイラの背の上だ。

 交差して構えた剣を、外へと払うように切りながら、背の上へと着地。

 下方向への飛翔の勢いを乗せた双剣の交差斬撃は、獅子の首を半ばまで断ち、その首がぶらりと力を失いうなだれる。

 それと同時に、背の上へと着地した衝撃で、キマイラの四肢が沈みこんだ。


「させん!」


 自らの背の上で着地の衝撃に身動きを止めたジェシカへ、キマイラに生えた獣の部位の一つである山羊の首が向く。

 それは、雷撃を放つ首だ。

 だが、ぬう、と伸びたアガットの腕が、その山羊の首の角をつかみ、


「おら!」


 力任せにひねられて、ぼぎり、と鈍い音を立て、山羊の首が力を失う。


「力任せね!」

「言ってろ!!」


 ジェシカが再度跳び上がる。

 アガットは、手放したメイスを構えなおす。


 燐光を放つ翼を立てる竜人種。

 ひときわ大きな体躯と怪力を誇る巨人種。


 『虹の飛島』の前衛二人は、獣の首を二つ失いつつも、戦意を喪失しないキマイラに向き合った。

・竜人種

『力ある隣人たち』の一種である、竜の血を引く人種。

種族特性としては、牙、角、爪、鱗、翼、尾、玉などの竜の部位の顕現がある。

どの部位を顕現できるかは、種族特性をどこまで深く発現しているかによる。

竜の力を持つ各部位は、それぞれが極めて強力な武具になりうる。

また、その身に宿る力を放出することで、周辺を自分にとって都合のいい領域へと変化させていく力を持つ。

ただし、真正の竜ならばともかく、人間に流れる程度の竜の血では、明確にわかるほどの規模で環境を変えることはできない。

せいぜいで、行動する際に障害になるような影響を軽減する程度。




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評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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