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試合―ルディランズとノノ―(4)

 ノノの詠唱が完了し、魔術が発動した。


「おお。新技!」


 ルディランズが、どんな魔術だと、思ったところで、効果はすぐに実感することになった。

 自分の指、というか、肘から先の感覚が消失した。

 見れば、動きはする。

 だが、動かした感触がなく、また魔力を集中できない。


「詠唱封じ! また珍しいものを」


 魔術師の詠唱を封じることができれば、それは魔術師の無力化を意味する。

 だが、この方法が使われることは滅多にない。

 それは、魔術の詠唱に使うことができる手段は多岐にわたるのに、詠唱封じで封じることができるのは、一手段しかないからだ。

 そして、この魔術の重ね掛けは、原則不可能である。

 加えて、効果が不安定で、本当に封じ切れるかはわからない。

 とはいえ、それはノノが発動した魔術である。


「でも、これであんたは腕を使った詠唱ができない」


 指に魔力を集め、その指で陣を描いたり、印を結んだりすることで魔術を詠唱することをメインとするルディランズは、腕を封じられると大半の詠唱を封じられる。

 だが、


「足がまだあるぞ?」


 たったかたったか、と小気味よくステップを踏んだ直後に、ルディランズの足元から水が溢れ、凍り付いて刃となってノノに向かう。


「切れ味が足りない!」


 それに対し、ノノは試合開始時と同じ、『貫く炎』の魔術を放って迎撃。

 さらに、同じ魔術を連続詠唱。

 間断なく、『貫く炎』の魔術がルディランズへと降り注ぐ。


「おー」


 ルディランズは、それをひょいひょいとかわしていく。

 腕は使えないが、足でステップを踏むことで、行動による詠唱はできる。

 手ほどに器用ではない分、使える魔術は限られるが、ルディランズは回避や防御系の魔術を、多く足捌きで発動できるように習得している。


「あたらんぞー?」


 へいへーい、と煽るルディランズ。

 いらっとしたノノにより、魔術の密度が増す。


「だったら、当たれ!」

「おっとっと」


 さらにひょいひょい、とかわし、それから幾本かは蹴り飛ばす。


「魔術を蹴るな!」

「これも魔術だっての」


 身体能力がある程度高くないと使えないが、手足や武器の先に魔法を弾く力を与え、飛んできた魔術を弾く、というのは、確かに魔術として存在する。

 大体は、前衛の戦士が持つ技術だが。


「ていうか、腕上げたなー」

「上から目線はムカツクのよ!!」


 攻撃を余裕を持って捌いておきながら、ルディランズはのんびりと口にした。



******



 一方で、攻め立てているはずのノノの方には、余裕がなかった。

 魔術が当たらない。

 詠唱を連続させ、魔術を連続で発動する分には、それほど負担はない。

 この程度をこなす魔力量は、余裕である。

 問題は、ルディランズが次にどうするかが読み切れないことだ。

 だから、次善の手を用意する。

 口は、ルディランズを攻めるための魔術を連続で詠唱し続けている。

 だから、手だ。

 ルディランズの周囲には、ノノが撃ち込み続ける『貫く炎』が弾ける余波で、炎に包まれている。

 そのため、ルディランズの姿は見えにくいし、ルディランズからこちらを見るのも難しいだろう。


 だから、その間に、手で印を組む。

 やるべきは『貫く炎』を活かす魔術。

 攻撃力は『貫く炎』で十分だから、それを当てるための魔術を組み上げる。


「くらえ」


 それは、風の魔術だ。

 ルディランズを取り囲む風を生み出し、『貫く炎』の火の威力を上げると共に、その軌道を修正する魔術だ。

 そして、それは完璧に発動した。



******



 ルディランズは、足さばきで魔術をかわす。

 蹴りで『貫く炎』をはじき、


「・・・・・・」


 舞い散る『貫く炎』の砕けた残骸で、ノノを直接見通すことはできない。

 だが、いる位置は分かっている。

 そして、仕込みはある。


「よ!」


 魔術を避け、あるいは蹴り飛ばしながら、ルディランズは一回転。

 足元に、陣が描かれた。

 そして、それを踏み抜く。


 ルディランズが足で描いた魔術を発動したことと、ノノの次の魔術が完成したのは、ほぼ同時だった。


 ノノの魔術により、ルディランズの周囲に風が渦巻き、ルディランズを檻に閉じ込めようと動く。

 風の檻が完成すれば、ルディランズは魔術を回避しきれなくなるだろうし、そもそも熱で蒸し焼きになるだろう。

 だが、ルディランズはその直前に動いた。


「ふん!」


 ぱん、と何かをはじくような音。

 そして、ルディランズは、ノノの目の前に移動していた。


「・・・・・・は?」


 ルディランズの背後で、風の檻が完成し、その内側が炎で焼き尽くされる。

 あのままあそこにいれば、ルディランズの負けは確定していただろう。

 そして、魔術の完成に会心の手応えを感じていたノノは、それをいきなり突破して、自分の目の前に立つルディランズの姿に、混乱した声を上げ、


「・・・・・・しっ!!」


 だん!! という強い踏み込み。

 そして、感覚のない左腕による正拳突き。


 その正拳突きは、ノノに当たりはしなかった。

 だが、ノノの眼前で寸止めされた衝撃は、そのままノノの軽い体を吹き飛ばした。


「きゃうっ?!」


 悲鳴を上げ、ノノは後ろ向きに吹き飛び、舞台から落ちるところころと転がって、壁に当たって止まる。


「あーうー・・・・・・」


 ごん、と壁に音を立てて当たったノノは、そのまま目を回して気絶した。

 その成り行きに、観戦客も立ち合いをしていたライアンも、思わずぽかん、としてしまう。


「しょぉーり!!」


 ぐ、と腕を突きあげ、ルディランズが勝利を宣言するとともに、はっとしたライアンが、ルディランズの勝利を宣言。

 これで、ルディランズとノノの試合は終了となった。

・詠唱封じ

対魔術師用の技術として開発されたものの、実用性に難があるため、あまり普及していない。

口述、印字、手印、文書、舞踊、陣などなど、魔術の詠唱方法は多岐にわたり、そのすべてを封じることなど実質不可能。

さらに、割と使い古された手段ではあるので、対抗手段がものすごく多いため、一か所は封じることができるにしても、複数個所を封じるように重ね掛けすることは非常に困難。

現代での魔術師に対する封印は、魔力そのものの動きを封じる魔道具を使うことが一般的。

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