表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/197

試合―ルディランズとノノ―(2)

「・・・・・・なんでこうなった?」

「あんだけ煽っといて何をいまさら」


 ふむ、と首を傾げたルディランズに、ジェシカが呆れたツッコミを入れる。


「沸点が低いのは相変わらずか」

「・・・・・・ていうか、よくよく考えたら、あんたらの因縁って、十歳にもなってないガキの喧嘩よね・・・・・・」

「失敬な。一応真面目な魔術合戦の結果だぞ」


 師に言われたままに相手をした。

 とはいえ、大人げなかった、と思わなくもない。


「ろくに実戦経験のない幼児相手だっていうのに、当時の俺は若かったなあ」

「・・・・・・」


 からからと笑っているルディランズに、はあ、と一つため息を吐いた。


 二人は今、協会の地下に設置された訓練場に来ていた。

 実技試験などで使われることもある場所だ。

 広さがあり、天井も高い。

 また、四面敷かれた二十五メートル四方の舞台は、内部で起こったダメージを無効化する魔道具が設置されており、安全に力試しができる。


 その舞台の一つを借りて、ルディランズとノノが向き合っていた。

 それぞれ、セコンドとして、ルディランズにはジェシカが、ノノにはゼットがついていた。

 他の聖遣隊のメンバーや、会議に参加していた面々は、もう観客と化している。

 さらには、訓練場を使っていた一般の冒険者や、職員の一部が観客として集まりつつある。


「・・・・・・あー」


 立会人を任されたライアンが、しかめっつらをしつつも、中央に立つ。

 立会人に、協会の支部長、すなわち、アビロアの冒険者協会のトップが立っている、ということで、この試合の注目度が高くなっているところもある。


「では、ルディランズ・マラハイトとノノ・マインの試合を始める」

「・・・・・・いやあ、面倒だなあ!」

「顔がめっちゃ楽しそうね・・・・・・」


 テンション高く、腕をぐるぐる回しながら、笑顔でルディランズは前へと進んだ。

 魔術バカらしく、魔術を競い合う、というのが楽しくて仕方ないらしい。


 一方で、対面に進み出たノノは、分かりやすく興奮している。

 というか、ちょっとキレていた。


「ぶっ殺す!」

「・・・・・・ちょっと、かしらね?」


 殺伐とした宣言を聞いて、ジェシカは首を傾げた。


「ほんと、何やったのよ?」

「模擬戦やって、ぶっ飛ばした。言葉にすると、マジでそんだけなんだが・・・・・・」


 ルディランズの対面で、ノノはセコンドについたゼットになだめられている。

 ただ、あれは勢いを落としているように見えて、明らかに煽っている。


「・・・・・・まあ、十年ぶりくらいだし」

「ちなみに、戦績は?」

「一年くらい毎日やったし、日に二回三回やった時もあったから・・・・・・、五〇〇戦くらいやって、俺の全勝?」

「・・・・・・なるほど」


 ぶっちゃけてしまうと、危なげなく全勝だった。


「さてさて、それでも、聖遣隊に入ってるくらいだし、期待できるよなー」


 へっへっへ、とルディランズは笑っている。


 聖遣隊に所属している、となると、冒険者の等級は、三等級以上。

 レベルは、一〇〇近いはずだ。


「よし、しっかり見るぞ」

「はいはい。怪我しないでね」

「まかせな」



******



 ノノは、自分の杖を握りしめる。

 ルディランズの師の元を訪ねた後、師からもらった杖だ。

 でき、というか、素材がよくて、今のところこれ以上の杖に出会えていない。

 もっとも、ルディランズが持ち出してきた杖も、あの時ルディランズが持っていた杖と素材は同じに見える。


「・・・・・・なんだかんだで、やっぱり杖の素材はあそこが最上級、か」

「うん?」


 ぽつり、とつぶやいた声を聞きつけ、ゼットが首を傾げたが、なんでもない、と手を振って遠ざける。


「やるわ」

「がんばれー」


 気のない応援を置いて、ゼットは舞台から降りていった。

 それを見送って、集中力を高める。

 杖とそして帽子に魔力を込めて、


「やったるわ!」

「おう。見してみ?」


 ルディランズが、こいこい、と手招きをしている。


「では・・・・・・はじめ!!」


 ライアンの合図に合わせて、先に動いたのはノノだった。

 杖から魔術を詠唱する。


「一に【ヒ】、二に【飾り】、三に【労い】、四に【本】」


 杖から炎が噴き上がる。

 噴き上がった炎が収束し、槍の形を取った。


「貫く炎―ピアシングフレア―」


 その槍の数は三つ。

 それぞれに、異なる軌道を持って、ルディランズを狙う。


 それに対して、ルディランズは、杖を立てた。

 腕を振るい、魔力を集められた指先が発光し、その動かした後に軌跡が残る。

 その軌跡が一定の図形を描いた直後、魔術が発動した。


 それは、同じ炎の魔術だ。


 だが、ルディランズが発動したのは、槍ではなく、壁だった。

 それが、回転し、渦を作り、その流れにノノが放った槍が巻き込まれ、動きを失う。

 そして、ルディランズが作り上げた渦の勢いが増した。

 ルディランズが、トン、と杖の石突で床を突くと、そうして燃え上がっていた炎が、今度は逆向きに収束した。

 そして、ノノが作ったような炎の槍が、今度は、七本、出来上がるのだった。

・杖

魔術に使われる杖は、自然物であるほどいい。

加工が入るとそれだけ性能が劣化する。

金属製品は特に悪い。

理想的なのは、できうる限り樹齢の高い樹木の枝などだが、自然に杖に使える形の枝は珍しいので、ある程度削ったりして加工は必要になる。

ただの枝であるため、物理的な性能は、推して知るべし

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ