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魔王対策ブリーフィング(3)

 会議室の空気は、重かった。

 『紅炎遊撃隊』が残した魔道具による記録。

 その内容を確認し、それぞれで考え込んでいる。


「・・・・・・ともあれ、この記録を見る限りは、なるほど間違いなく敵は魔王だな」

「根拠は?」

「キマイラは、群れない魔獣だ。何せ、キマイラにとっては、周囲にいる魔獣なりモンスターなり、なんてのは餌だからな」


 ルディランズは、ふむ、と考える。

 キマイラは、基本的には、ただの魔獣である。

 獣の部位の数だけ、それぞれに応じた能力を持つ、という特性はあるものの、縄張りを持ち、進入してくる敵を迎撃する、という性質は変わらない。

 それだけならともかく、キマイラは生殖能力を持たず、多数の獣の部位を分割して二個体になる、という形で増殖する。

 その性質上、群れを作ることがない。

 何せ、その二個体ですら、ずっと同じ場所にいれば互いに食らい合うからだ。


 そして、他の魔獣もキマイラの傍には近づかない。

 魔獣の中には、他の強い魔獣の傍に近づき、その世話をすることで守ってもらう生態の魔獣もいる。

 だが、キマイラの傍にはどんな魔獣も近寄らない。

 下手に近くにいると、食われるからだ。


 だが、それが魔王となると変わってくる。


「さっきの記録だと、キマイラがパーティーを引き付けている間に、後ろから魔獣に襲わせていたな」

「・・・・・・そういう作戦を立ててた?」


 ジェシカは、ルディランズのつぶやきにそう答える。

 ルディランズはそれに頷いて、


「ジェイソンさん」

「む?」

「キマイラの討伐経験だったら、そっちが一番多いだろう? 実際、キマイラってどのくらい頭いい?」

「かなり、だな」


 ジェイソンは、即答した。

 顎に手を当て、少し考え、


「キマイラとの勝負は、力よりもむしろ知恵比べの方が比率が大きい。キマイラを狩る時は、やつのホームではなく、外へ引っ張り出す必要がある」

「奇襲は無理か」

「むしろ、奇襲されるとも」


 おお、とジェイソンは大げさに嘆く。


「やつらは、頭が複数ある。それぞれが、それぞれに警戒をする上、眠りにつく時間もばらばらだ。おかげで奇襲の成功率は極めて低く、それでいて潜む時にはあの巨体でどうやっているのか、と思うほど自然に潜む。・・・・・・やつらの縄張りの中で、先手を取るのはかなり困難だ」

「といっても、相手は単独だろう? 勝てないってことはあるのか?」

「キマイラは知能が高い。・・・・・・時には、縄張りの周囲からモンスターや魔獣を追い立てて、冒険者を襲わせることもある」

「・・・・・・マジで? 元々群れを率いる可能性あり、ってこと?」


 ジェシカが、信じられない、と目を見開くが、ジェイソンは首を振った。


「違う。追い立てが終わって生き残ったモンスターなり魔獣なりがいれば、それはキマイラが喰ってしまう」

「無駄のないことね」


 キマイラにとっては、楽に敵対者を屠れる上に、食料まで確保できる、効率のいい手段ということだろう。


「じゃあ、討伐の時はどうしている?」

「囮を使って引きつけ、縄張りの外まで引きずり出す」

「・・・・・・やっぱそれか」


 そこで、ベイナスが手を挙げた。


「『勇者』として、魔王討伐の経験者として意見させてもらうが、通常の魔王討伐は、支配下にある群れと魔王を分断することが大前提だ。その間に、『勇者』パーティーが魔王を討伐する」


 ベイナスのその意見を受けて、うむ、とライアンが頷いた。

 それから、ジェイソンが口を開く。


「今回の作戦も、大筋はそこになぞる。我々『紅炎遊撃隊」が群れと魔王を分断後、群れの方の相手をする」

「他のギルドからは、増援はないのか?」

「『アドベンチャラーズ』からは、支援をもらえることになっている。とはいえ、あそこで、キマイラクラスが率いる群れに対抗できる上位冒険者で、今回出せるのは一チーム程度だそうだ。これは、我々の指揮下に入ってもらうことで合意が取れている」

「もう一つは?」

「あそこは、今主力が遠征中で、あと十日は戻らん。『金鎧』が残っていたなら、むしろ前線を任せたいくらいだが、アレもいなくなってはな。今回は都市の防衛に専念する、だそうだ」

「あの、ジェイソンさん。一ついい?」


 ルディランズとジェイソンが言い合っているところに、ジェシカがおずおずと手を挙げた。


「どうした?」

「その、そもそも、今回、私たちをここに呼んだのはどうして? 最初の話だと、私たちは偵察を任されると思ってたし、それなら呼ばれるのも、まあ分かるんだけど・・・・・・」


 言葉の途中で、ちら、とルディランズを見ながら、ジェシカは言った。


「私たちは、まだ新興のクランでしかない。レギオンクラスのクエストなら、規模が足りないわ」


 それに対し、ジェイソンはふん、と頷いた。


「謙遜はいらん。貴様らの実力なら、一群を受け持つぐらいわけないだろう」

「無茶言うわー」

「無茶でも何でもない。・・・・・・とはいえ、今回貴様らにやってもらいたいことはきちんとあるぞ」

「何するの?」


 そうだな、とジェイソンがライアンを見ると、ライアンは頷いて返した。


「では、今回の作戦を説明する」


 ジェイソンは、そう告げるのだった。

・魔王討伐

基本的に、魔王を討伐する際には、魔王と魔王が率いる群れをどのように分断するかが重要。

大体の場合は、群れに対抗できる軍勢を用意し、魔王本体には勇者が当たることで対応する。

他には、魔王だけを結界で隔離する、広域魔術を用いて魔王と群れをまとめて攻撃し群れを焼き払う、などの方法もある。

いずれの場合にしても、魔王と勇者の闘いに邪魔を入れないようにすることが重要である。

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