魔王対策ブリーフィング(1)
その日、アビロアの冒険者協会支部にある会議室に、十数人からなる人間がいた。
発見された、魔王のキマイラに対する、対策会議に集められた面々だ。
場所を用意したした協会の代表として、支部長のライアン・ウィーヴァー。
教会から、ゲオルグ・マインドリ。
さらに、都市アビロアを領地とする領主の代理として、書記官が二名。
領主からは、対策は協会に一任する、と委任状が来ている。
それから、魔王の発見者となる『紅炎遊撃隊』から、ギルドマスターであるジェイソン・ブラックモーアと、今回出陣する戦闘部隊を率いる二人の隊長。
『虹の飛島』のジェシカ・リランとルディランズ・マラハイト。
そして、聖遣三番隊のパーティーメンバー。
『勇者』ベイナス・フライアウト。
『聖女』ユリア・シュトライゼック。
魔術師、ノノ・マイン。
重騎士、ヴォー・ダング。
斥候、ゼット・ポーム。
銃士、ソウタ・サイオン。
『紅炎遊撃隊』は、他にも数名、参加者がいるが、こちらは壁際に下がって会議を見る構えだ。
おそらくは、魔王キマイラにやられたパーティーの敵討ちを狙う者たちだろう。
その目は、鋭く、敵意に燃えている。
「では、ここは、協会が進行を務めさせていただく」
ライアンの宣言により、ブリーフィングは始まった。
*****
「まず、現状得ている情報について」
最初に口火を切ったのは、教会から来た、ゲオルグだ。
「我々教会では、先日『啓示』を確認した。『魔王の出現』を保証する」
その発言を聞き、会議室には、うーむ、とそんな呻きが流れる。
「出現地点は、ここアビロアより、南方に三〇〇キロ地点」
「あのあたりは、森がある。かつて異界が発生した時期に発生した森だ」
ライアンが、情報を補足する。
「異界は既に攻略されているが、異界によって発生した森はそのまま残った。また、内部にいたモンスターなども残ったため、危険地帯となっている」
ただし、森の中には希少な薬草などもあり、異界ではなくなっても利用価値が高く冒険者もよく訪れるため、それを当てにした村もある。
そこからは、ジェイソンが発言する。
「我々『紅炎遊撃隊』が受けた依頼は、その森の周囲にある村落で、牧畜の被害が出ているため、その対応だ」
派遣された『紅炎遊撃隊』の調査員は、牧畜の被害状況と残されていた痕跡から、オオカミ系の魔獣かモンスターに類するものが犯人である、と推定した。
その調査結果を受け、パーティーがクエストを受諾、派遣された。
「派遣したパーティーは、四等級。三等級も三人含んでおり、十分に一線級のパーティーと言える」
だが、そのパーティーは全滅した。
「全滅が確定してから、偵察の準備を進めていたが、教会から『啓示』の情報を得て、取りやめた」
「・・・・・・『遊撃隊』なら、派遣したパーティーには、記録用の魔道具を持たせているはずだよな?」
ルディランズが挙手をしてした発言に、ジェイソンは頷いた。
「その通りだ。そこで、メンバーを派遣して、魔道具を回収した。記録の解析は行っているが、キマイラが相手であることははっきりしている」
「他に情報は?」
「確認される限り、獅子、蛇、山羊、蝙蝠、猿の五種が混じったキマイラだ」
「発見されてからの日数と、魔獣であることを考えると、混ざり具合が上がっている可能性は高いな」
キマイラに限らないが、魔王の出現は、周囲の都市にしてみると大問題だ。
魔王が作る群れが移動すれば、その移動の経路にある集落は甚大な被害を受ける。
たとえアビロアほどの都市といえど、決して軽くない被害を受けることになる。
「逆に、こちらの戦力についてだが」
主戦力は、聖剣を持つ、『勇者』だ。
魔王が率いる群れの対応には、『紅炎遊撃隊』があたる。
『虹の飛島』は、聖遣隊の後詰と補助だ。
「教会の方では、『啓示』の情報をもとに、結界を展開した。あと三日、魔王を出現地点に閉じ込めておける」
余裕がある、ということを受け、ジェシカがルディランズに耳打ちをする。
「あんたは、準備大丈夫なの?」
「武装はもう間に合ってる。ただ、ブレアを参加させるかどうかは、ちょっと迷うな。時間までに、いろいろと準備が済むかどうか」
ルディランズとしては、十分に行ける気もするが、無理をして命を失ってもまずい。
だから、ルディランズは分析のため、挙手をした。
「とりあえず、魔道具に記録された情報を共有してもらいたい」
ルディランズの発現に、ジェイソンは頷いた。
・魔道具
魔術を発動できる道具。
バッテリーとなる魔石などを利用することで、組み込まれた魔術を発動する。
発動できる魔術は、道具一つにつき一種類のみ。
魔術の素養がない人間でも魔術を使えるため、需要は大きいが製作の難易度は高い。




