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聖なる剣(4)

 それは、パーティーとモンスターの群れの戦闘だった。


 戦闘の最前線に立つのは、明るい金髪の剣士だ。

 きらびやかな鎧を身にまとい、美しい剣を振るっている。

 剣が閃き、斬撃が放たれる。

 その剣は、飛びかかってきていた、トラに似たモンスターをその切れ味で両断した。

 剣を振り終わった直後の体勢の整わない剣士に、別のモンスターが飛びかかるが、


「させねえってのよ」


 ストトン、と軽い音を立て、飛びかかってきたモンスターの目に、小さな刃が突き立つ。

 投げたのは、細身に軽装をまとった軽薄な雰囲気の男だ。

 身軽さを優先しているのか、皮鎧の一つもつけていないが、モンスターの群れの中を攻撃をひょいひょいとかわしながら翻弄している。

 ぎゃん、と鳴いて、落ちたモンスターに、剣を突き立てトドメを刺した。


「下がって!」


 後衛から響く声に、大きく飛び退る。

 魔術師らしい背丈ほどの長さの杖を備えた、女魔術師だ。

 黒のローブにつばの広い三角帽子をかぶった、赤毛の魔女である。


「炎よ! 焼き尽くせ!!」


 魔術師の掲げた杖の先端から、業火が猛然と噴き出し、向かって来ていたモンスターの群れを焼き尽くす。


「まだ、残ってるわ!!」

「分かっているとも!!」


 剣士の目が向いた先には、大きな盾と重厚な鎧を身にまとい、メイスを手に持った巨漢がいる。

 フルフェイスのヘルムをかぶっているため顔は分からないが、鈍色に光る鎧は、頑丈そうで、実に頼もしい。

 巨漢は、その背に後衛のパーティーメンバーをかばいながら、メイスを振るい、次々とモンスターを叩き伏せている。

 だが、メイスが届く距離は短い。

 実際、メイスを逃れ、遠くへと離れたモンスターがいて、


「・・・・・・」


 だーん! という爆発音とともに、それが吹き飛んだ。


「当たり」


 淡々と言ったのは、まだ少年と言っていい年ごろの黒髪の男だ。

 先端から煙を上げる筒を持ち、狙いを定め、引き金を引けば、また爆発音がして、モンスターが吹き飛ぶ。


「よし! もう一息だ! 押し込むぞ!!」


 剣士の叫びに合わせ、パーティーはモンスターの群れを殲滅にかかった。



*****



「ふう。数だけは多かったな」


 剣士が、剣に付いた血を払い落とし、鞘に剣を納めた。


「被害は?」

「いつも通り、問題なしって感じよな」


 はっはっは、と軽い笑い声をあげるのは、軽装の男。

 パーティーでは、主に斥候と遊撃を務める戦士である。


「問題なしではありませんよ」


 そこに、女性が声をかけた。

 灰色のローブを身にまとい、茶髪に近い色の金髪の女性だ。

 女性は、鎧を着ていた巨漢の腕に手をかざしている。


「ヴォー。大丈夫かい?」

「問題ない」


 剣士の問いかけに、巨漢はフルフェイスのヘルムのおかげでくぐもった声で言葉少なに答えた。


「軽視しないでください。盾で攻撃を受け続けて、軽い炎症を起こしています」

「それが役目だ」

「もう・・・・・・」


 巨漢の言葉に、女性は不服を視線に乗せて睨みつける。


「ベイナス! 貴方からも言ってください! 栄えある勇者パーティーの盾役というのに、自分の怪我を軽視するな、と」

「言っても仕方ないさ。ユリア。おかげで助かっている私としては、あまり強くは言えないな」

「勇者なのだから! もっと仲間を労わるべきでしょう!」

「それを言うなら、このパーティーのリーダーは、私ではなく聖女である君じゃないか」

「この人! わたくしの言うことなどまるで聞かないのですよ」

「貴女を守るのが、吾輩の役目であるが故」

「またそんなことばかり言って・・・・・・」

「はいはい」


 言い合いが始まりそうな二人を、ぱんぱん、と手を叩いて、女魔術師が自分に注意を向けさせる。


「ノノ。何か言いたいことでも?」

「ユリア。治療に集中しなさいよ。いくら聖女だからって、気もそぞろに治せるものでもないんでしょう?」

「・・・・・・もう終わりましたよ」


 ユリアがかざしていた手をどけ立ち上がると、それに従ってヴォーも立ち上がる。

 その様子を見て、ノノは笑うと、ベイナスへと目を向けた。

 

「そ。なら、出発しましょう? ベイナス」

「そうだね。のんびりして、モンスターが来ても困るからね」


 そして、ベイナスは、残りの二人へと目を向ける。


「ゼット、ソウタ。そちらは大丈夫かい?」


 ゼット、と呼ばれた軽装の男は、肩をすくめた。


「おう。ワイは、投げモンも回収してきた。いつでも行ける」


 それに対し、黒髪の少年は、腰のポーチをぽん、と叩いた。


「俺も平気。弾の補給も済んだし」

「そうか」


 うん、とベイナスが頷いたところで、ユリアが首を傾げた。


「あら?」


 そして、懐から筒を取り出した。

 その瞬間、パーティー全体に軽く緊張が走った。


「ユリア?」


 ベイナスが問いかける先、ユリアが筒の蓋を開き、軽く振る。

 すると、中から丸められた書簡が出てきた。

 それを受け取り開いて、ユリアは目を通した。


「教会からでしょ? なんて?」


 ノノの問いかけに、ユリアは書簡をベイナスへと見せる。


「今回は、貴方向けの指令ですよ」

「へえ? つまり、相手は・・・・・・」

「ええ。『魔王』です。・・・・・・まあ、可能性、という但し書き付きですが」


 その言葉に、ベイナスは腰の剣の柄に、触れる。


「そうか。久しぶりの出番だね」

「・・・・・・行き先は?」


 ソウタが問えば、ユリアは頷いた。


「アビロアです」

・聖遣隊

教会が組織する実働部隊。

勇者や聖女などをリーダーとし、その役割を全うするため、世界各地を旅している。

リーダーには伝書筒が渡されており、教会からの聖遣隊への指令が魔術で送られてくる。

ユリアの部隊は三番隊。

聖女ユリアの各地の巡行の護衛として普段は活動しているが、魔王が出現した際には、勇者ベイナスの仲間として活動する。

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