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聖なる剣(1)

 帝国、という土地は、力ある隣人たちの中でも、神族、魔族の影響が強い。

 これは、かつてまだ彼らがこの世界にいた時に、自分たちの領域を確保するために行っていた、戦争の名残だ。

 現在でも、この世界には、かつて彼らが持っていた領域の名残がある。

 彼らが施した、領域と領域を隔てる、境界壁がそれだ。


 この境界壁は、当時は別の種族の侵攻を抑えるための、防御壁だった。

 そして現在では、隣人たちの世界からの影響を留める、干渉壁となっている。


 帝国近辺は、かつては神族と魔族の領域だった。

 結果として、帝国近辺では、神族や魔族の影響が強く、この辺りで主な種族、というと、彼らが創造した神人種や魔人種となる。

 人間が、その種族が多いなら、獣もそうだ。

 神族が作った神獣や、魔族が作った魔獣が、野生の獣として山や森などに生息している。


 かつて神族、そして魔族が支配していたこの領域は、『王権領域』とそう呼ばれている。



*****



「キマイラ、か」


 アビロアの冒険者協会支部。

 その最上階となる、支部長室。

 そこで、一人の男が腕を組んで、唸っていた。


 巨漢の男だ。


「ふむ」


 手を伸ばし、男は机の上のスイッチを押す。


「・・・・・・失礼します」


 しばらくして、扉が開き、別の男が入ってきた。

 細身に眼鏡をかけた男である。


「デニット。すまんが、教会の方に使いを出してくれ」

「使い、ですか?」

「うむ。先ほど、『紅炎遊撃隊』から、数日前に派遣したキマイラ討伐部隊が、全滅したとの報告が上がった」

「なんと・・・・・・」


 眼鏡のツルを押し上げ、デニットはうめいた。


「彼らが全滅するほどの相手、となると、単純な魔獣ではない可能性が高い」

「モンスターでしょうか」

「そうなら、既に『紅炎遊撃隊』によって討たれている。そして、依頼達成の報告だけが来るだろう。あそこのギルドマスターは、そういう男だ」

「・・・・・・ですな」


 だから、む、と支部長は、考える。


「その彼が、わざわざ未討伐個体の情報を、協会に上げてきた。これを、どうとらえるべきと思う?」

「・・・・・・・・・・・・」


 支部長の問いに、デニットはしばらく考えて、


「現状では、まだモンスターなのか、そうでないかの区別はついていません。・・・・・・ですが、記録によれば、あの地にいたキマイラは、『魔獣』だったはず」

「だが、魔獣なら、専門家である『紅炎遊撃隊』所属の冒険者が、情報も残さずに全滅、というのが、説明がつかん」


 モンスターであったとしても、それは同様のはずだった。

 チームで挑んで、一人も逃がすことができない、というのは、少々腑に落ちない。


「なるほど、それで教会に」

「うむ。場合によっては、『勇者』の出陣を願う必要があるかもしれん」

「了解しました」


 一礼し、デニットは退室した。


「さて・・・・・・」


 支部長は、額のしわを深くして、じっと報告書を見つめるのだった。



*****



 教会。

 神と魔を奉る、天地教会。


 かつては、神族と魔族に仕えていたこの地の人類は、神殿を作り、神と魔の両方を奉っていた。

 神族と魔族は、同種でありながら、相争う中でもあった。

 だが、人間からしてみると、どちらも大差ない存在である。


 願えば加護をくれるし、祈れば応えをくれる。逆らえば罰が下されることもあった。

 ともあれ、人間からしてみれば、どちらも同じ。

 どっちもすごいんだから、適当に崇めて、できるだけ平和に過ごさせてもらおう、というのが、人間のスタンスである。


 だが、人間は、神族や魔族に眷属として作り出されている以上、全く無視するわけには行かず、時に託宣を受けて、彼らのために行動しなければならなかった。

 その際に必要とされたのが、神族や魔族と人間との間を仲介する役、すなわち、教会である。


 『力ある者たち』が、それぞれの世界へと移住し、『力ある隣人たち』となって以降は、そのあり方も変化している。

 かつては、仲介役であった彼らは、現在では、通常の人間では対処の難しい災厄に対する、専門機関となっている。


 その代表となるのが、『勇者』だ。


「お話は分かりました」


 アビロアの教会。

 それは、アビロアという都市の北西の外縁部に、巨大な建物として存在する。

 敷地の中に墓地を有することもあって、訪れるものは多い。


 その教会の奥の一室。

 そこで、教会の代表者である、ゲオルグ・マインドリは、冒険者協会から使者として来た職員に対し、鷹揚に頷いた。


「そちらの調査結果を待ちますが、小生個人の見解としては、『勇者』が必要でしょう。急ぎ、招聘します」

「お願いします」


 協会職員は、礼をして、退出した。


 それを見届けて、ゲオルグは、ある道具を取り出した。

 ベルに似た形のそれは、教会の本部と連絡を取るための魔道具である。


「・・・・・・聖剣に、空きがあればいいのですが」


 ゲオルグは独り言ちながら、ベルを振った。

・教会

かつては、神族魔族と人間との橋渡し、仲介役であった組織。

現在では、通常の手段では対処不能な事態に対する、専門機関となっている。

代表的なのは、『聖剣』を使う『勇者』の派遣。

他には、独自の回復術を持つ『聖女』の育成や、冥界の影響によるさまよえる『不能死者』への対処ができる『葬送者』の管理などを行っている。

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