金鎧VS剣の子
アラン・レビエナスは、冒険者ではある。
ただ、冒険者としての等級は、まだ四等級である。
実力と等級は見合っていないが、三等級への昇格条件を満たしていないためだ。
ただ、それでも、彼は帝都では有名であり、ゆえに、非公式ながら二つ名がついている。
それが『剣の子』だ。
『剣聖』の血を継いでいる、ということもある。
だが、それ以上に、彼の力の使い方こそが、その二つ名を意味する。
「では、胸をお借りします」
「ははは。胸というより、金を借りているけどね」
『天意の旅団』のギルドホーム地下にある訓練場で、ジャン=ルイとアランは向き合っている。
周囲には、見学のギルド員などが集っている。
向かい合う二人のうち、ジャン=ルイは、模擬剣を持っている。
ただ、アランは、剣を持っていない。
「さて、少なくとも・・・・・・」
ジャン=ルイが、観戦しているアルノーの方へと視線を向ける。
アルノーの近くに、丸められた借用書が置いてある。
「あの借用書が、余へのダメージは防いでくれる。全力できたまえ」
「はい」
アランは、一応腰に剣を佩いている。
剣は、質のいい鋼鉄でできているし、いい鍛冶師によって作られているが、『剣聖』が普段使っているような剣に比べれば、それほど非凡なものではない。
ただ、アランはその剣には手を触れず、利き手である右手を前へ出す。
「ほうほう。そういう感じかね」
アランが意識を集中し、右手を握りこんだ瞬間、そこに火が集中して剣が形作られる。
「魔術剣。・・・・・・生成速度はなかなかだな」
名前の通り、魔術で剣を形作る技術だ。
本来なら、魔術師が近接で戦わないといけなくなった場合の、緊急避難的な立ち位置の技術だが、一端の剣士が使えば、それは化ける。
「行きます」
「ふむ。よし来い!」
構えた模擬剣に、ジャン=ルイの魂現により光が集う。
金貨の照り返しのような輝きだ。
ふ、と息を吐いたアランが、切り込む。
「様子見かね?」
軽い調子で、模擬剣によって弾かれた。
「次、行きます!」
アランは、次々と切りかかっていく。
*****
「ふむ・・・・・・」
ジャン=ルイは、感嘆した。
さすがに、『剣の子』と呼ばれるだけのことはある。
今、アランの周囲で、様々な属性の魔術剣が宙を舞っている。
右手で握るものに比べれば、刃渡りなどせいぜいで短剣サイズのものだ。
だが、アランがその柄を握った瞬間に、それは十分な刃渡りを持つ長剣へと変化し、ジャン=ルイに向けられる。
制御能力は大したものだ。
だが、強度が足りない。
ジャン=ルイの魂現によって強化された剣と打ち合う都度、アランの魔術剣は砕けていく。
「その壊し方は、わざとかな?」
剣の振るい方自体は、さすが、と言わざるを得ない。
簡単に砕かれているとはいえ、その剣の一撃一撃は、大岩でも軽く切断するだろう。
それだけの勢いと鋭さはある。
ジャン=ルイの魂現によって強化されていなければ、いまごろ構えている模擬剣ごと斬られているだろう。
だが、ジャン=ルイの模擬剣にあたると、すぐさま壊れてしまう。
「・・・・・・密度を、上げます!」
そして、砕けなくなった。
おそらくは、魔術剣に込めていた魔力量を上げた結果、剣自体の密度が上がって、強度が上がったのだろう。
「だが、足りんなあ」
受け太刀一方だったジャン=ルイが、模擬剣を振って迎撃を始める。
それだけで、アランは防戦一方になった。
「く・・・・・・!」
「そらそら。どうしたかね?!」
ジャン=ルイの魂現は、剣の威力を上げるだけではない。
体にまとえば、防御力、そして、身体能力自体も向上させていく。
膂力や強靭さ、動作の精度だって上げられる。
金の力による強化は、ありとあらゆるものを万能的に強化する。
単純に、強く、速く、鋭い連撃が、アランを襲う。
「斬ります」
だが、アランが告げた、次の瞬間だった。
鋭い剣の一撃が、模擬剣を切り落とす。
「ほう・・・・・・」
「もう一撃」
「いや、さすがに食らわんよ?」
その一撃をするりとかわし、ジャン=ルイの拳が、アランに突き刺さる。
どん、と衝撃の音が鳴った。
そして、アランの体が吹き飛んだ。
「お。よく飛ぶなあ」
アルノーが、はっはっは、と笑いながら、のんきな声を上げた。
「いや、笑いごとですか? 結構な勢いが・・・・・・」
「問題ないだろう」
「え?」
ちら、とアルノーが視線を落とすと、借用書が燃え落ちていた。
「うむ。一矢くらいは報いたね」
*****
大したものだな、と拳を下ろしながら、ジャン=ルイは笑む。
受けたのは、宙を舞っていたいくつかの魔術剣だ。
ジャン=ルイの模擬剣を斬った一撃の時、その剣に重ねるようにして一撃の威力が底上げされていた。
振りぬかれる直前のブーストだったために、ジャン=ルイとしても目測を誤った。
一撃の剣が、見切るよりも長く伸び、ジャン=ルイを斬ったのだ。
「ほうほう」
「まあ、その前までの連撃でも、結構減っていたと思うが」
ともあれ、
「まあ、評判倒れ、ということはない、とわかったよ」
「それはそうだろう。小生の血も入っているのだぞ?」
「はは。そうであった」
・魔術剣
魔術で剣を作る技術。
ほとんどの場合、魔力を属性を持たせて剣の形に固めるだけ。
だから、緊急時に魔術師がとっさに出せる近接攻撃手段、程度の認識。
自分の手で振らないと威力が出ないし、投げつけても射程はたかが知れている。
魔術を留める要領で自分の周囲に滞空させることはできるが、それも大して使い道はない。
ただ、剣の心得がある者が使うならば、好きな時にいくらでも剣を生成できる技術となる。
今回、アランは無手で剣を生成しているが、何かしらの実体剣を芯にして発動させた方が、強度は大きく上がる。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




