表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/197

金鎧VS剣の子

 アラン・レビエナスは、冒険者ではある。

 ただ、冒険者としての等級は、まだ四等級である。

 実力と等級は見合っていないが、三等級への昇格条件を満たしていないためだ。


 ただ、それでも、彼は帝都では有名であり、ゆえに、非公式ながら二つ名がついている。


 それが『剣の子』だ。


 『剣聖』の血を継いでいる、ということもある。


 だが、それ以上に、彼の力の使い方こそが、その二つ名を意味する。


「では、胸をお借りします」

「ははは。胸というより、金を借りているけどね」


 『天意の旅団』のギルドホーム地下にある訓練場で、ジャン=ルイとアランは向き合っている。

 周囲には、見学のギルド員などが集っている。


 向かい合う二人のうち、ジャン=ルイは、模擬剣を持っている。

 ただ、アランは、剣を持っていない。


「さて、少なくとも・・・・・・」


 ジャン=ルイが、観戦しているアルノーの方へと視線を向ける。

 アルノーの近くに、丸められた借用書が置いてある。


「あの借用書が、余へのダメージは防いでくれる。全力できたまえ」

「はい」


 アランは、一応腰に剣を佩いている。

 剣は、質のいい鋼鉄でできているし、いい鍛冶師によって作られているが、『剣聖』が普段使っているような剣に比べれば、それほど非凡なものではない。

 ただ、アランはその剣には手を触れず、利き手である右手を前へ出す。


「ほうほう。そういう感じかね」


 アランが意識を集中し、右手を握りこんだ瞬間、そこに火が集中して剣が形作られる。


「魔術剣。・・・・・・生成速度はなかなかだな」


 名前の通り、魔術で剣を形作る技術だ。

 本来なら、魔術師が近接で戦わないといけなくなった場合の、緊急避難的な立ち位置の技術だが、一端の剣士が使えば、それは化ける。


「行きます」

「ふむ。よし来い!」


 構えた模擬剣に、ジャン=ルイの魂現により光が集う。

 金貨の照り返しのような輝きだ。


 ふ、と息を吐いたアランが、切り込む。


「様子見かね?」


 軽い調子で、模擬剣によって弾かれた。


「次、行きます!」


 アランは、次々と切りかかっていく。



*****



「ふむ・・・・・・」


 ジャン=ルイは、感嘆した。

 さすがに、『剣の子』と呼ばれるだけのことはある。


 今、アランの周囲で、様々な属性の魔術剣が宙を舞っている。

 右手で握るものに比べれば、刃渡りなどせいぜいで短剣サイズのものだ。

 だが、アランがその柄を握った瞬間に、それは十分な刃渡りを持つ長剣へと変化し、ジャン=ルイに向けられる。

 制御能力は大したものだ。


 だが、強度が足りない。


 ジャン=ルイの魂現によって強化された剣と打ち合う都度、アランの魔術剣は砕けていく。


「その壊し方は、わざとかな?」


 剣の振るい方自体は、さすが、と言わざるを得ない。

 簡単に砕かれているとはいえ、その剣の一撃一撃は、大岩でも軽く切断するだろう。

 それだけの勢いと鋭さはある。

 ジャン=ルイの魂現によって強化されていなければ、いまごろ構えている模擬剣ごと斬られているだろう。

 だが、ジャン=ルイの模擬剣にあたると、すぐさま壊れてしまう。


「・・・・・・密度を、上げます!」


 そして、砕けなくなった。

 おそらくは、魔術剣に込めていた魔力量を上げた結果、剣自体の密度が上がって、強度が上がったのだろう。


「だが、足りんなあ」


 受け太刀一方だったジャン=ルイが、模擬剣を振って迎撃を始める。

 それだけで、アランは防戦一方になった。


「く・・・・・・!」

「そらそら。どうしたかね?!」


 ジャン=ルイの魂現は、剣の威力を上げるだけではない。

 体にまとえば、防御力、そして、身体能力自体も向上させていく。

 膂力や強靭さ、動作の精度だって上げられる。

 金の力による強化は、ありとあらゆるものを万能的に強化する。


 単純に、強く、速く、鋭い連撃が、アランを襲う。


「斬ります」


 だが、アランが告げた、次の瞬間だった。

 鋭い剣の一撃が、模擬剣を切り落とす。


「ほう・・・・・・」

「もう一撃」

「いや、さすがに食らわんよ?」


 その一撃をするりとかわし、ジャン=ルイの拳が、アランに突き刺さる。


 どん、と衝撃の音が鳴った。


 そして、アランの体が吹き飛んだ。


「お。よく飛ぶなあ」


 アルノーが、はっはっは、と笑いながら、のんきな声を上げた。


「いや、笑いごとですか? 結構な勢いが・・・・・・」

「問題ないだろう」

「え?」


 ちら、とアルノーが視線を落とすと、借用書が燃え落ちていた。


「うむ。一矢くらいは報いたね」



*****



 大したものだな、と拳を下ろしながら、ジャン=ルイは笑む。

 受けたのは、宙を舞っていたいくつかの魔術剣だ。

 ジャン=ルイの模擬剣を斬った一撃の時、その剣に重ねるようにして一撃の威力が底上げされていた。

 振りぬかれる直前のブーストだったために、ジャン=ルイとしても目測を誤った。


 一撃の剣が、見切るよりも長く伸び、ジャン=ルイを斬ったのだ。


「ほうほう」

「まあ、その前までの連撃でも、結構減っていたと思うが」


 ともあれ、


「まあ、評判倒れ、ということはない、とわかったよ」

「それはそうだろう。小生の血も入っているのだぞ?」

「はは。そうであった」

・魔術剣

魔術で剣を作る技術。

ほとんどの場合、魔力を属性を持たせて剣の形に固めるだけ。

だから、緊急時に魔術師がとっさに出せる近接攻撃手段、程度の認識。

自分の手で振らないと威力が出ないし、投げつけても射程はたかが知れている。

魔術を留める要領で自分の周囲に滞空させることはできるが、それも大して使い道はない。

ただ、剣の心得がある者が使うならば、好きな時にいくらでも剣を生成できる技術となる。

今回、アランは無手で剣を生成しているが、何かしらの実体剣を芯にして発動させた方が、強度は大きく上がる。




------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ