宿り木
えーっと・・・?
「アルテシアさんて何歳だっけ?・・・」
『35だったはず』
「て事はルシェを産んだ時は18? 若いなぁ。」
『まさかこの年になって妹か弟が出来るとは思わなかったよ・・・。』
「まぁそうよね・・・。」
でも向こうでは稀にだけど自分の子よりも若い妹や弟が出来たって人も居たような?
それに35で出産も割とあるよね。
「いいんじゃない? 兄弟が増えるのはおめでたい事だし。」
『まあな。夫婦仲がいいって事なんだろうし・・・。いいんだけどさ。』
なんだろう?なんだか煮え切らないね?
「なにか問題でも?」
『いやタイミングがさ・・・なんと言うか・・・。』
「なに?なにかあった?」
『落ち着いて聞いてくれる?』
「うん。」
とルシェが話し始めた内容を聞いて私は盛大にむせた。
げほっげほっ ゴホゴホッ ぐぇほっ
『ロゼ大丈夫?・・』
背中をさすりながら心配してくれる。
「だいじょ・・ぶだけど ゴホッゴホッ 大丈夫 ゲホッ じゃない」ゼェハァ
ちょっとバルドさん 何やってくれちゃってるんですかね?
そりゃさ、そうゆう教育も大事だとは思うよ?
学校でも一応は習うくらいだし?
でもさ、まずは生命誕生のメカニズムとかから入ろうよ?
図解の手解き教本てそれもうエ〇本じゃないよ。
しかも間違えて上級者用使ってた? バルドさんも知らない内容だった?
上級者用ってなにさ! それもぉ子供用の教本じゃないよね?
なんでそんなの持ってるのさ! もお意味判んない!!
要するにあれですか、それ見て試したくなってハッスルした結果がご懐妊ですか?
うわぁぁぁぁぁぁ、そりゃルシェとしては煮え切らないと言うか複雑な気持ちになるわよ!
そんな話は聞きたくなかったぁ・・・。
あれ?待って?まさかとは思うけどさ・・・
「ルシェ、私の取り越し苦労だったらいいんだけどさ。」
『いやたぶんロゼが思ってる事は当たってる。』
「マジかぁ・・・・。」
『たぶんハイデアも・・・。さすがに初級でだと思うけど・・・。』
「ゴフッ・・・」
『屋敷内がなんとも言えない雰囲気になってたところにこの雪だったからさ。
俺にはこの雪が救いの雪に思えたよ・・・。』
「ラファとハイデアは大丈夫かな・・・。」
『たぶん・・・。』
心配にはなるけど、2人をここへ呼んだとしても微妙な空気になりそうだよね・・・。
本当になにしてくれてるんだか・・・。
『人間は大変だな・・・。』
『まったくだ。』
ディーヴァとクレハは同情したような呆れたような眼で見ている・・・。
『ロゼはその・・・』
「ルシェ、そうゆう事は聞くものじゃないよ・・・。」
『だよね・・・。ごめん。』
ルシェは真っ赤になってしまっている。
今度会ったらバルドさんに説教しておこう・・・。
ここは気持ちを切り替えよう・。うんそうしよう・・・。
「ルシェ、一回その事はきれいさっぱり忘れよう。
今はさ、明日の星祭りの事を考えよう!!」
ルシェに言いながら自分にも言い聞かせた。
「向こうにはさ、クリスマスって言う冬のイベントがあるのよ。
もぉさ、それも一緒にやっちゃおう!
ジンジャークッキーも明日作ろう! ケーキも作ろう!」
『クリスマスって?』
さてこれはどう説明しよう。
宗教的な話をしても解らないだろうし。聖人って言ってもなぁ・・・。
「平和な暮らしや健康を願って導いてくれる人が現れた事を祝い感謝するイベント?
解り易くこっちの世界風に言えば精霊達に感謝をしましょうってイベントかな。」
『なるほど!それはいいね。 精霊達は甘い物も好きみたいだし!』
「星祭りの時に、恵みをもたらしてくれる精霊達にも感謝しましょうって住人に広めるのもいいかもね。
玄関に精霊用のクッキーを置いておくのもいいかも。」
『うん、いいね。言葉は解らなくてもきっと気持ちも伝わるだろうし。』
「じゃあ来年は牧場とか身近な人から伝えてみようか。」
『そうしよう。』
『うむ、きっと精霊達も喜ぶであろう。』
『楽しい事が増えるのは良いね。』
ディーヴァもクレハも乗り気だな。
確かに楽しい事が増えるのはいい事だよね。
星祭りと一緒にだったら住人にも受け入れやすいはずだし。うんうん。
『ロゼの世界ではクッキーやケーキ以外にクリスマスにはどんな事をするの?』
「そうだなぁ。星祭りは羊肉だけどクリスマスではチキンとかターキーだったり。
後はプレゼントを贈り合ったり、宿り木の伝説ってのもあったなぁ。」
『『『 宿り木の伝説とか?! 』』』
なにその食い付き方! なんだろう・・・本能で察知した?
しまったなぁ・・・、言わなきゃよかった・・・。
「えーっとね・・・。
クリスマスでは宿り木の下に立っている女の子にkissをしてもよいって風習があったり」
『『『 なんと!! 』』』
「宿り木の下でkissを交わした恋人達は永遠に別れないって言われてたりかなぁ。」
『永遠に別れない・・・』
『ふむ、クレハ。』
『解った、探してくればよいのだな?』
「ふぇっ?! 待ってクレ・・・ハ・・・・。」
遅かった・・・。
私 恋人達って言ったよね?言ったわよね?
まだ恋人じゃないでしょー! ん?まだって何さ・・・。
『気にするな。』
いや気にするわよ・・・。
まあクリスマス自体が無いし、大丈夫かな?
・・・。
気にする所そこ?!
クリスマスうんぬんよりkissを問題視しようよ私!!
kiss自体はいいの?! いいのかな?・・・ いいのかもしれない?
いやいやいや、私そんなのだったっけ?
一途だったよね? 二次元だけど・・・。
・・・・。
周りが美形だらけなのが悪いんだ・・・。
自分に変な言い訳をして現実逃避するように寝た。
勿論虎徹と翡翠と一緒に。
男3人で寝ればいいんだ!
『ロゼは寝たか?』
『ああ、ぐっすりと眠っているな。』
『クレハ例の物は?』
『見つけて来たぞ。』
『でもいいのかな?』
『正攻法でロゼがすんなり許すとでも?』
『そうだけどさ、バレたら怒られそうだよね。』
『バレなければよいのだ。』
『んむ。』
『心配ならルシェは来なくてもよいのだぞ?』
『2人だけってのは駄目だ。俺も行くよ。』
『ならば余計な心配はするでない。』
『男は度胸!』
『わ・・わかった。』
とコソコソ密談する3人の手には宿り木の枝があった。
音をさせないように、起こさないように 気を配りながらロゼの枕元に立つ。
1人ずつ宿り木を掲げ、ロゼの額に優しいkissを落として行く。
さすがに唇はマズイと思ったのであろう。
全員が終わらせると、来た時と同じようにそっと部屋から出ていった。
ずるい・・・
ロゼは目を覚ましていた。
正確には最後のKISSが終わった時に眼がさめたのだ。
やられた!と思いつつも照れ臭いような気もして布団に潜り込む。
私は寝ていた、寝ていた・・・気付かなかった・・・。これは夢だった
そう思い込もうとしても真っ赤になった顔が現実だと教えてくれる。
ああ、もういっそ朝まで気付かないでいたかったぁー。
なんとか平静を取り戻そうと試みても無理な物は無理で。
結局寝たんだか寝てないんだかわからない状態で朝を迎える事になるのであった。




